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200年の伝統を未来に繋いでいくための「変わり続ける」経営と伝統工芸への想い

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新潟県燕市に伝わる「燕鎚起銅器(つばめついきどうき)」。1816年創業の「玉川堂」は、燕鎚起銅器の老舗のひとつだ。玉川堂の鎚起銅器の技術は、文化庁「選択無形文化財」、新潟県より「無形文化財」に指定されているほか、玉川堂燕本店は、国の登録有形文化財(建造物)にも登録されている。しかし一方で日本の伝統工芸は、売り方、継承においても転機を迎えており、高い技術を持ちながらも経営的に苦戦している工房も多い。そんななか匠の技を継承しながら、革新的な取り組みによって新しい挑戦を続ける玉川堂代表取締役の玉川氏に話を伺った。

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玉川 基行さん/株式会社玉川堂 代表取締役 7代目
1970年生まれ。新潟県燕市出身。1995年玉川堂に入社。2003年には玉川堂代表取締役・玉川堂第7代目に就任する。日本国内だけでなく、海外販路開拓にも力を入れ、LVMHグループの老舗シャンパーニュメゾン「KRUG(クリュッグ)」とコラボしたワインクーラーは、世界中の高級レストランで使用されている。革新的な取り組みへの評価は高く、第2回「三井ゴールデン匠賞」、「モストポピュラー賞」を受賞。

伝統の老舗が、経営難の危機に陥る

― 大学をご卒業されてすぐに、お父様が6代目を務められていた「玉川堂」に入社されていますが、迷いはありませんでしたか。

大学卒業後は商社に入りたいと思っていたのですが、父からはすぐに玉川堂に入ってくれ、と言われて。というのもその頃の玉川堂は、社員を解雇しなければならないほど経営が厳しく、多額の借金も抱えていました。父としては伝統を絶やすことなく、何とか会社を立て直してほしいという思いを強く感じたのです。

大学時代から、父には会社状況をさまざまな面からヒアリングしていて、私なりに立て直すためのアイディアは持っていたのです。そうしたアイディアに父は賭けたのでしょうね。

― どのようなアイディアだったのでしょう。

日本の伝統工芸は唯一無二の技術を持っています。玉川堂は200年にわたって受け継がれてきた燕鎚起銅器の老舗で、技術は本当に素晴らしい。でもなぜ経営が厳しくなっているかというと、売り方がよくないのです。

― 具体的に、何がよくないと考えたのですか。

流通です。当時は商品を作ったらまず地元の問屋へ卸して売る流通が当たり前でした。バブルの時期までは、企業の記念品などに玉川堂の製品をご注文いただくケースが多かったのですが、それもすべて問屋へ卸しています。たくさんのお客様に使っていただいているのに、直販ではないから、玉川堂の製品を手に取ってくださったお客様の声は聞こえてきませんし、誰にどう使っていただいているのかも作り手側に伝わってこないのです。ですからまずは流通を根本から変えようと思い、問屋へ卸すことをやめました。

― それはお父様の代にはできなかったことなのでしょうか。

地場産業はどこでもそうですが、地域で作ったものは地域の問屋へ卸して百貨店などで販売される、という商流が確立されています。当然ながら、問屋も地場産業の仲間で長年に渡って一緒に商売をやってきたわけですから、父が問屋へ卸さない、というのは商売道徳上、できないのです。でも、私が入社した時点で問屋へ卸さないという新しい流通にしなければ、玉川堂は倒産してしまうような状況でした。これは、地域にしがらみのない若造だったからこそ可能にした流通改革であると思っています。

― 問屋へ卸さない、というまったく新しい流通に着手されてからは、実際にどうやって商品を売っていかれたのですか。

当時は直営店がなく、直販はできなかったので、東京の有名百貨店にアポなしで売り込みにいきました。直接バイヤーの方にお会いして商品の説明をして。もちろんすぐにはいい返事はもらえません。それでも実験的に実演販売を行い、売上がよければ取引をしてもらうやり方を地道に続けていきました。最初、東京の老舗百貨店に行ったのはそうした有名店で実績を積めば、系列の地方百貨店でも販売できると考えたからです。そうして信頼を得ながら、少しずつ置いていただける百貨店が増えていきました。

― その後直営店を出したのですね。

2014年に東京・青山に直営店を出店した時、百貨店との取引をやめました。10~15年前は売上の70%が百貨店売上でしたが、今、売上のほとんどは直営店が占めています。 

ブランディングを行うために、やはり百貨店ではなく直営店で販売すべきだと考えたからです。百貨店で購入すると、百貨店の包装紙に玉川堂の商品が包まれることになるでしょう。そうすると玉川堂の信頼ではなく、百貨店の信頼によって購入されます。玉川堂ブランドではなく、百貨店のブランドイメージがぬぐいきれません。

ブランディングとは流通経路の短縮だと思っています。直営店なら、お客様との親和性を高めることができます。ルイ・ヴィトンもエルメスも、海外の有名ブランドはすべて、自社製品を自社店舗で販売しています。日本の伝統工芸業界も、直販を行わないと衰退の一途を辿ると思うのです。伝統技術に裏打ちされたすばらしい商品なのに、ブランディングしないなんてもったいないですよ。

2017年にはGINZA SIX4階に「玉川堂銀座店」をオープン。社長含め全ての職人が一枚一枚鎚目を打った銅板を全ての内装に使用し、玉川堂の新たな世界観を店舗全体で表現している。

海外見本市への参加は、社員教育の一環

― さらに、海外へも進出され、海外のグローバルブランドとコラボもされています。

日本の市場だけでは限界があると思い、海外にも進出することを決断し、2003年からは海外見本市に出展するようになりました。海外の見本市では、世界中のバイヤーからダイレクトに商品の反応を聞くことができ、その国の文化や生活習慣の違いから、今までに発想しなかった使い方や、商品開発の提案もありました。スタッフにとってもものすごく勉強になるんですね。これは、日本にいるだけではぜったいに経験することはできません。

さらに海外に行けば現地文化や食に触れる機会もあり、感性を養うことにもなります。玉川堂では現在、ワインやコーヒーなどの器具も開発していますが、海外のお客様のニーズを掴むには、実際に海外へ行き、現地で文化を体験することが大切だと考えています。なぜならそうした経験が、求められる商品開発へのヒントにつながるからです。新しいものを作るには、趣味や見識を広げていくことが大事。言い換えれば遊び心が大事だと考えています。

― 日本にいて、ひとつのことを見るのではなく、視野を広げて、遊び心を持ってやることが、新たな感性を生み、次の仕事につながっていくのですね。

ブランドには絶対的品質が求められます。精神性や技術力などは日本が得意とする分野ですが、一方で、もう一つの要素である趣味や遊び心が問われる感性品質は日本に欠けている点です。だからこそ感性を磨くことが、日本の伝統工芸をより強くすると思うのです。玉川堂の柱は職人です。職人自らさまざまな世界を観て、体験することが大切で、イベントなどには極力職人も同行するようにして、お客様と直接会話できるようにしています。

― 改革による現場の変化をどのように感じていらっしゃいますか。

趣味の延長がものづくりであると考えており、職人はお客様や専門家などから使い勝手の感想などをお聞きすることで、いろいろな刺激を受けながら日々勉強し、視野を広げています。例えば、コーヒー器具の担当者はコーヒーが趣味だったり、茶器担当者は日本茶を探究していたりするんですよ。そうすることで、商品そのものに開発する人の創意工夫やモノづくりの想いが込められます。

たとえば一杯のコーヒーを飲んでも、淹れる器具の形状の工夫によってより酸味が立つと感じるなど、気づきが違ってくるんです。気づきを増やすことの積み重ねがブランドに活かされます。職人が楽しみながら作ることが、お客様の感動にもつながっていくんですね。職人と営業の垣根を無くし、お客様とのコミュニケーションを通して新しい商品をつくり、お客様の満足度を高めていくことが玉川堂のブランディングと言えます。

老舗シャンパーニュメゾン「KRUG(クリュッグ)」とコラボしたワインクーラー

茶器、酒器、コーヒー器具など、開発担当者が好きだからこその想いが商品に込められている

伝承と伝統。これからは海外に出るのではなく、来てもらう時代に

― 先ほど流通経路の短縮についてお話いただきました。玉川堂さんは思い切った改革をされましたが、伝統工芸全体の流通の現状というのはどうなっているのでしょう。

ほとんどの工房は問屋へ卸していると思います。流通の構造を根本から変えていくことが、今の伝統工芸に求められている課題であると思います。行動に移すことは勇気がいりますし、リスクもありますが、誰かがやらないと改革は始まりません。

新商品を開発したら、まずはその新商品から直販でチャレンジしてみるなど、できることから始めることが大切です。自分たちで開発した製品を、自分たちの想いを込めてお客様へ直接説明できれば、伝統工芸の世界は、必ず進化していくと思います。今までのやり方を伝承するだけではなく、革新をプラスしながら伝統につなげていくことがこれからの日本の伝統工芸業界に必要なことです。

― 伝承と伝統の違いについて、玉川さんのお考えを改めて教えていただけますか。

昔と同じことを繰り返すことが「伝承」で、日々革新をしていくことが「伝統」だと考えています。しかし、多くの伝統工芸は「伝承工芸」になっていると感じています。これは流通に関して特に言えることです。そもそも「伝統」という言葉は責任を伴う言葉であり、軽々しくは言えない言葉です。玉川堂も伝統と言えるような企業を作っていかなければなりません。

― 実演販売には職人さんも同行してもらうというお話をされていましたが、玉川堂の工房を訪ねるお客様も増えているそうですね。

海外からのお客様がとくに増えています。そのための社員教育にも力を入れていて、英語できちんと玉川堂の商品を説明できるよう、英会話の勉強も行っています。そのほか、書道教室、デッサン教室もそれぞれ月2回行っています。書道やデッサンは、字や絵がうまくなるという目的よりも、造形認識能力を養う、つまり、造形につながる感性を身につける能力につなげてほしいと思い、スタートしました。こうした能力によって気づきが増えると、たとえば美術館に行っても見方が違ってくるでしょうし、レストランでも、盛り付けに意識が向くようになります。

― 造形につながる能力を開花したり、言葉できちんと商品のことをお客様に伝えられるのは、素晴らしいことですね。

燕鎚起銅器は、空布巾を掛けることが大切で、長年ご使用いただくことで、色合いが深まり、製品としての価値が高まります。新品をお渡ししたときは、例えれば赤ちゃんをお渡ししたのと同様で、それをお客様に愛着を持って育てていただく。育て方が悪いと変色の原因にもなりますから、そうしたこともしっかりと伝えていくことが欠かせないのです。玉川堂のコーポレートメッセージは「打つ。時を打つ」なのですが、その想いを職人も伝えてこそ、お客様にも愛着を持って、ご購入いただいた商品に命を吹き込んでいただきたい。ものを大切にする文化を養うことも、私たちの使命だと考えています。 

これまでの固定概念に囚われることなく、常に新しいことを挑戦し続けることで革新を生み出し伝統を進化させていくと語る玉川氏。

伝統工芸を軸に、地域を活性化

― これからの日本の伝統工芸を活性化させていくことについては、どのような取り組みをされたいですか。

地域との連携です。かつてはニューヨークやパリに出店したいという夢を抱いていましたが、そうではなく、製造現場へ世界中の方々からお越しいただく。将来的には、製造現場でもある燕本店で売上100%を作ることを目標としています。そのためには地域の連携が必須で、玉川堂の工房だけでなく、他の工房も見学して購入できるよう、世界中の方々から燕三条へお越しいただくための仕組みづくりを行っています。

地場産業を発展するためには、実際にお客様から作業現場を見ていただくことが重要です。工場の匂い、音、熱、職人の息づかいなど、五感で感じていただくことが、購入後の商品の愛着も違ってくると思うのです。これからは、生産者はものづくりの想いを直接お客様へ伝える「表現者」でなければなりません。職人こそが最高の営業マンなのです。 

燕三条は先手を切って街ぐるみで産業観光に尽力していますが、是非、全国の地場産業でも産業観光の事業に取り組んでほしいと思います。燕三条の取り組みを参考にしたいという問い合わせも増えていますので、こうした取り組みを全国に広げていきたいですね。

玉川堂では、同じ想いをお持ちの企業様との積極的なコラボレーションを考えています。200年の歴史を誇る燕鎚起銅器と一緒に新しい価値を創出できる企業様からの応募をお待ちしています。ご興味がある方はこちらから詳細をご覧ください。

文:伊藤郁世

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