2023年9月20日(水)〜12月11日(月)に、国立新美術館で開催されるイヴ・サンローランの展覧会。モードの帝王と呼ばれたイヴ・サンローランの没後、日本で初となる大回顧展として開催される本展では、日本初公開となるドレスなど約300点が一挙公開されます。スモーキングジャケットにサファリ・ルックといった革新的なスタイルを発表し、マスキュリンな女性像を構築したイヴ・サンローランが残したスタイルは現在も脈々と受け継がれ、後進のデザイナーたちにも大きな影響を残しているのはご存じの通り。そんなイヴ・サンローランが生み出した豪華絢爛な美の世界を間近で体感できるまたとない機会となる本展について詳しくご紹介します。
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イヴ・サンローラン美術館パリの全面協力により実現
2022年、パリの6美術館で同時開催されたイヴ・サンローランの展覧会の記憶も新しいなか、イヴ・サンローラン美術館パリの協力を得て日本でも大回顧展が実現します。1958年にクリスチャン・ディオールの急死を受け21歳の若さで衝撃的なデビューを果たし、デビューコレクションとなった「トラペーズ・ライン」は喝采の的に。以降、1962年からは自身のブランド「イヴ・サンローラン」を発表し、それ以来2002年の引退まで約半世紀にわたり世界のモードシーンを牽引してきました。“女性に力を与えた服”とも称されるイヴ・サンローランのクリエーションをオートクチュールのルック110体に加え、アクセサリーやドローイング、写真、映像といった貴重な資料を含む約300点により、12章構成で余すところなく紹介する今回の大回顧展。これらの作品や資料をもとに、イヴ・サンローランのデザイナーとしての人生と創造の全貌に迫る内容となっています。
イヴ・サンローランがモードにもたらしたイノベーション
イヴ・サンローランはファッション界に多くの革新的なアイデアをもたらしましたが、とりわけ印象深いのは1966年に発表された「ル・スモーキング(Le Smoking)」と呼ばれる女性のためのタキシードスタイルではないでしょうか。1960年代当時パンツは男性のアイテムであるという認識が根強かったなか、女性のパンツスタイルを積極的に取り入れ、衣服が持つジェンダーのイメージを軽やかに超越。これにより時代が求める新たな女性らしさやエレガンスを生み出しました。その後もピーコートやパンツスーツ、トレンチコートにタキシードなどの紳士服を女性向けに改良し、従来の女性らしさにマスキュリンという価値を付加することに成功。現代では女性のワードローブとして定着したサンローランの普遍的なスタイルを、多数のルックにより紹介しています。
アートから着想を得たスタイルの確立
色鮮やかな抽象画作品で知られるオランダ出身の画家、ピート・モンドリアン。縦横の直線と赤や黄、青の色使いが印象深いモンドリアンの代表作「コンポジション」をモチーフにしたカクテル・ドレスは、イヴ・サンローランの名を世界的に高めた1枚です。イヴ・サンローランは1965年に発表されたモンドリアン・ルックをはじめ、美術作品とファッションを融合することで伝統的なオートクチュールモードの世界に新風を吹き込みました。同時に演劇やバレエといった舞台芸術や映画の衣装制作など幅広い芸術分野との協働に意欲的に取り組み、アートとファッションを結びつけたのです。
本展では前述したピート・モンドリアンへのオマージュであるカクテル・ドレスをはじめ、フィンセント・ファン・ゴッホへのオマージュであるイヴニング・アンサンブルのジャケット「アイリス」(1988年春夏オートクチュールコレクション)などの展示により、イヴ・サンローランがアートとモードを融合することで作り上げたスタイルを紐解いていきます。
目で見て、耳で聴いて楽しめる展覧会
日本初公開を含む圧倒的な数の作品はどれも、イヴ・サンローランの美学を隅々まで凝縮したエレガントかつ貴重なものばかり。それらの作品や貴重な資料を間近で堪能するのはもちろん、より作品についての知識が深まる音声ガイドを利用するのもおすすめです。本展の音声ガイド/ナビゲーターは俳優や声優としても活躍し、映画監督に作品プロデュースなど多彩な活動を行う津田健次郎氏。落ち着いた低音ボイスによるガイドを聴きながら作品を見ることで、いっそう作品を深く知ることができるでしょう。(音声ガイド当日貸出650円/1人1台)
マスキュリンスタイルの確立にアートとファッションの融合と、イブ・サンローランが約半世紀の間にモード界に与えた影響の大きさは計り知ることができません。それらに加え、まだ人種やジェンダーに対して閉鎖的だった1980年代に有色人種のモデルをランウェイに起用したり、プレタポルテの普及に貢献したことも知られています。現代でこそ当たり前となったモード界のさまざまな第一歩を切り拓いたのもまた、イヴ・サンローランその人なのです。本展ではファッションのみならず、そのクリエイティビティーの真髄に迫れる絶好の機会。ぜひお見逃しなく。
TEXT:横田愛子
【INFORMATION】
『イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル』
会場:国立新美術館
会期:2023年9月20日(水)〜12月11日(月)
時間:10:00〜18:00、金土曜日は20:00まで。最終入場は閉館の30分前まで
公式サイト:https://ysl2023.jp
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