Image by: FASHIONSNAP(Koji Hirano)
「シンヤコヅカ(SHINYAKOZUKA)」のリアルなショーを見たのは、実は今回が初めてだ。今までは、オンラインのショーを観て、毎回異なるショーの構成や、テーマや音楽やジェンダーに対する姿勢に関心を持ってきた。展示会にも何度か行っている。しかし、リアルなショーは格別だった。今回の「wonderful wander」と名付けられたショーが放つなんとも言えないロマンをどう形容すればいいのだろう。ショーのスタートは、20時。場所は、千駄ヶ谷の東京体育館の敷地内。どうしてこの時間に?夜だと少しは涼しいからかな、と思って席に座り、しばらく経つと、夜空に煌々と満月に近い月が輝いているではないか。ショーが始まり、エレカシの「月夜の散歩」が流れる。そうか、このショーは仕組まれた月夜の散歩なのかも。
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SHINYAKOZUKAのロゴも手書きに変わり、今回は、小塚の絵心満載のコレクションとなった。手書きの文字で埋め尽くされたTシャツやレギンス、ジャケットは、既成のフォントを構成して作った柄とは一味も二味も違うし、イラストの風景も、素材を透ける素材(パワーネットなど)にすることで、ハンドメイドの重さを消している。加えて、この月夜というロケーションが、見えるような見えないような、おもしろい(あいまいな)効果を生んでいる。
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ロンドンのセントマーチン卒の小塚信哉だけど、欧米の潮流や、外国から日本的なものとして期待されるアニメなどどこ吹く風で、独自のクリエイションを組み立てる胆力が感じられる。ロンドンに行く前、大阪に住んでいた頃、終電に乗って京都や神戸に行き、帰りは何時間もかけて夜の散歩を楽しんだという独自の、呆れてしまうまでの日常愛が、情報のリサーチからは生まれないクリエイティブを生み出すのだと思う。
会場の背景のブロック塀には、人が並んでいる景色が落書きのように投影されていたのだが、それも今回発表した36体全てを一つずつ小塚がイラストで描きあげたものであった。
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