Image by: FASHIONSNAP(Koji Hirano)
コロナ禍が世界を覆っていた2020,2021年、世界でも日本でもファッションの発信の方法は変更を余儀なくされた。リアルなショーができなかった代わりに、ファッションというビジネスを継続するために、ファッションウィークでは、オンライン配信が主流になった。デザイナーのメッセージを伝える場にしたメゾンもあれば、街を舞台に、屋外でのファッションショーをフィルムに収め、映画のような形で配信したところもあり、代替の方法というより、これはこれで、ファッションの想像力を進化させたと私は考えている。パリコレの会場周辺でのおしゃれスナップはなかったけれど、お手本を探して真似をするというスタイルがなくなり、代わりに独自性が追求されて、ファッションのなんでもあり精神がむくむくと出てきたのではないだろうか。
今は、リアルなショーはもちろんできるし、主流と言えるが、オンライン配信だからできることも少なくない。映像を使うことで、都市の広い会場ではできないショーを配信するブランドも少なくない。
対照的に、リアルなショーなのに、あえて規模を小さくして、コレクションの意図を明確に伝えようとするブランドも目につき、これは、案外日本独特の現象かもしれないと思ったりする。
コレクション3日目の午前に、ヒカリエのホールBで行われたTWEO(トゥー)もそんなショーだった。台湾出身でBFGUを経て、イッセイミヤケで経験を積み、独立した譚芸斯(タン ウンシ)の初めてのショー。展示会には行ったことがあり、独自のイラストを使ったりしたカラフルな作品がどうショーにまとめられるのか見てみたかった。TWEOというのは、古代の英語で、「曖昧」を表す言葉だそうだ。会場は、まさにtweoな雰囲気で、暗い会場には、あちこちに大きな石が配置され、観客は石を取り囲むように座り、まるで洞窟の中のショーのようだ。テーマなどは明かされていないが、今シーズンタンが追求する布の捻りや重なり、ふと見える内部、などがペールトーンの繊細な色で展開されて美しかった。ハンドドローイング(と思われる)の花柄も、いいアクセントになっている。そして、ショーを引き締めていたのは、聞きなれない音楽だ。ここでよくあるポピュラーな曲やノリのいいだけの曲が流れると台無しなので、特筆したい。音楽を制作したのは、イギリス人のJack Bennett。
もう一つ取り上げるのは、MITSURU OKAZAKI。昨年、見逃していて、見てみたかった。
これはなんとも「変な」ショーだった。最初に鎖を帽子のヘリや服に垂らした“黒服の男“が登場するのだが、彼は、ウォーキングの途中、客席の一つに座り込んでそのまま動かなくなる。しばらく時間を経て、会場に不穏な空気が流れ始めたあたりで、2人目が登場。今度は止まることなく歩き続けるのだけど、表情はもぬけの殻というか、夢遊病者のようで、そんなモデルたちが、ゆっくりと1人ずつ現れる。服の刺繍から「不思議の国のアリス」がテーマか?と思わせるが、いや、そこに騙されてはいけない、と思ってしまう。登場する服の体数は全部で17。数が少ないながら、1点1点の服は、どれも、配色もスタイリングもよく吟味されている。色をずらしたデザイン、切り刻まれたようなスリット、ポップで甘い色使い、細かい刺繍、オーガンジーのパンツから透けるスポーツソックスなど、葬列のような異常さとは裏腹に、そそられる。コレクションが出揃ったところで、椅子に座り込んでいた黒服の男も立ち上がって、ランウェイを歩き、謎のショーは終わる。
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