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「ファッションの多様性はどこへ?」という記事を書かせていただいた後、いろんな方から反響があった。ファッション編集者として大先輩であるgumi-gumi代表の軍地彩弓さんからは「パリファッションウィークの23−24SSのコレクションでも画一的な体型に対して警鐘を鳴らす記事が上がっていた」という情報を教えていただき意見交換をさせてもらった。ファッションの中心であるパリでも同じことが起きており、私のように疑問を持った記事が上がっているようだ。コロナパンデミックにより世界的に不安定な状況だとお互い手を取り合って理解し合うような動きになるが、経済が戻ってくると、自然に社会的強者と弱者をはっきりと分断してしまう資本主義の力が働いてしまうのだろうか。その記事では「プラスサイズモデルは全体で0.6%、ボディポジティブからの後退」と確かな数字と根拠が書いてある。ビジネスが盛んになると人権は一過性のトレンドとなりインクルーシブ社会とはかけ離れていく。そんな現状にモヤモヤと頭を巡らせていると、ファッションデザイナーであり教授もされている津村耕佑さんからこんな話も聞いた。すでに私の記事を読んでくださっており、共感するように頷きながらも
「ファッションは浮世なんだ」
私の考えを理解した上で「浮世」という言葉の選択。ファンタジーやロマンと捉えられるが、浮かれている様を皮肉的にいうと「ファッションは良くも悪くも社会に無責任」なもの。「たかがファッション」と言ってもいい。ファッションは浮世という言葉には頷けるところがある。
例えば、社会がどうなろうと、自分の半径2m以内は「社会的役割から外れて、私は無関係・無責任でありたい」と考えたことないだろうか?他人に邪魔されたくない自分の領域。社会の外側にいる感覚。身勝手・無責任だからこそ自由で「自分らしく」を手に入れるためにファッションがある。だから私はその「無責任」に魅力を感じ「自由」を求めてファッションに飛び込んだのだと納得ができた。大事なことは「良くも悪くも」という点だ。
ファッションと浮世。頭の中でこの言葉がぐるぐるしたファッションウィーク4日目。1日ショーを観終わった帰りの電車の中。STOFのデジタルショーを見て「これ正解なんじゃないか!?」と一本取られた。
タイトルは「vooorpket」オランダ語でパーティ前のワクワク感。日本民謡「会津磐梯山」の歌にのせてモデルが踊り回る。日本民謡とは全く関連がない中国の獅子舞も登場しカオスな状況。だけど「いいじゃんそれで」という無責任さがかえって心地よい。それは例えばトップスとパンツの相性が悪いと指摘したら「好きなもの着てるだけだからいいじゃんほっといて」と返す刀で切られそうな感覚。そこからの返答は歌詞に出てくる「最もだ〜最もだ」としか言いようがない。
電車の中でファッションと社会について頭を抱えている私に「そんなことよりちょっとこっち来ない?」と言われているよう。まさに浮世。ただ、陽気に踊り狂う描写に持ってかれ肝心のコレクションが印象に残りづらい感は否めないが、祭りの如く、とりあえず楽しもうという童心に戻ったような無邪気さと無責任で、STOFの20周年を祝いたいと思う。ひとつ希望があるならば、デジタルではなくフィジカルで体感したかった。真夏にファッションウィークがあるという意味でも夏の風物詩として正解案なんじゃないか
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世界の目標SDGsによりファッションデザイナーに求められることは増え、10年前よりも様々な社会的責任をクリアしなければならない。無論正しいが、それによってファッションの表現が窮屈になったともいえる。全てのブランドが全ての責任を負うことは厳しいので、社会においてどこの責任を負い、どこを手放し無責任なスタンスでいくか、両面のバランスが必要だと思う。
ただ、ファッションは人ありきの文化なので、人権をもっと考えて議論してほしい。一過性のトレンドで流されてしまった人がいることを忘れてはいけない。
今回の執筆により「多様性おじさん」という言葉を頂戴してしまいそうだと私の立ち位置を想像し一旦引受けつつも、ファッションに求める「責任」と「無責任」の"はざまから見える景色"を観察しながら「たかがファッション・されどファッション」の信念のもとジャーナルしていきたい。
津村さんと別れる最後、こんな質問を投げかけた。
ー資本主義と社会が掲げる多様性とは相性が悪いですよね?
「1周回って相性がいいとも考えれるけどね」
ーそれはユニクロが成功しているという意味ですか?
「そういうこと」
ーなるほど。。。ファッションの「浮世・無責任」は納得できました。
けど。。。なんか嫌です(笑)
「そうだよね(笑)エッセンシャルデザインとしての衣服は責任重大」
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