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デニムに愛と自由を込めたTANAKA。その裏で

IMAGE by: FASHIONSNAP(Koji Hirano)

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デニムに愛と自由を込めたTANAKA。その裏で

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ジャーナリスト
徳永啓太

 11日の朝、目覚めてSNSを開くと「アカデミー賞2024でビリー・アイリッシュらがガザでの停戦を訴えるバッチを着用し、レッドカーペットを歩いた」との記事が飛び込んできた。表に立つ人間として他国の事情とはいえ何もしないことはできなかったのだろう。アカデミー賞という人の目が集まる場所でアクションを起こすアーティストたちのスタンスに私の心は動いた。

 その後、ショー会場へ向かう電車の中でデザイナー・タナカサヨリ氏がアメリカで行われている「ウッドストック・フェスティバル」に触れている記事を読んだ。1969年、長く続くベトナム戦争に疲弊する中アメリカ全土で活発に行われた反戦の意を表した愛と平和の祭典「ファッションでも同じことができるのではないか」とコメントしており、とても興味が湧いた。

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 TANAKAのアイコンでもあるデニムは自由の象徴だというデザイナーのお二人。デニムはアメリカの労働者のための衣服であったが、歴史を紐解いてみたら1960年代に反戦運動や社会運動などからヒッピームーブメントがアメリカで起きる。当時のウッドストック・フェスティバルに参加するミュージシャンや、「LOVE&PEACE」を主張したアーティストのボブ・ディランがデニムを愛用したことから、ヒッピーファッションの象徴へとなっていく。つまりは戦争からの「自由・反抗」のアイコン的存在とも言える。

 現在も各地で侵略、戦争が起こっており悲惨な情報が入ってくる日々に疲弊する中、SNSで見たアカデミー賞で停戦を訴えるバッチとベトナム戦争が行われた裏でヒッピーたちが愛用したデニムにつながるところがあるのではないかと解釈をした。

 またパンクファッションや最近ではラグジュアリーブランドも愛用したりと、カウンターカルチャーからメインストリームまで多様な人に愛されるという意味でも自由の象徴であることに納得がいく。

 今期のTANAKAはデニムのシャツにチューブトップドレスを合わせたり、クシュッと皺を寄せてドレープを効かせたトップス、ワンピースドレスからコルセットまであらゆるアイテムにデニム生地を使用。多様な人に愛されてきたデニムの歴史を踏まえつつ、アイテムの表現に広がりを感じ、愛と自由が込められたコレクションだ。

Imaged by FASHIONSNAP(Koji Hirano)

 そしてショーの囲み取材では、不穏が続く社会情勢に対して「世の中には不自由な環境に陥っている人がいる。デザイナーとして何もしないわけにはいかない」とコメント。デニムでドレスアップを魅せながら、メッセージは「LOVE IS NOT DEAD」「FREEDOM IS OURS」。ファッションショーでウッドストック・フェスティバルを再現したかったのだと感じ取った。現代日本でこのようなメッセージを発信するブランドは珍しい。私も停戦デモに参加する身としてとても共感した。

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愛や自由がテーマなのであれば・・・

 世界情勢に疑問を持って発信することはとても重要だが、それと同じように身近な人が不平等になっていないかと考えることも重要だと思っている。

 なぜなら今回私に少し残念なことが起きたからだ。私はTANAKAのショーの開始時間30分前には会場についていたにも関わらず、車椅子への対応が遅れ、ショー開始に間に合わなかったのだ。細かく説明すると、会場である代々木第二体育館には車椅子スペースがある。しかし、ショーの演出上、観客は体育館下のフロアまで降りて観る形式になっていたため、体育館側が用意している車椅子スペースだと遠すぎて肝心の服が見えない。そのため運営の方に「遠回りしてでもいいので下に降りて服が見れるところで見せてほしい」と伝えたが、下のフロアまで行く同線の確認が取れず、結果、車椅子を案内するのに40分以上かかってしまったわけだ。

 今回を機にぜひ知っていただきたいのは、社会的マイノリティは「仕方がない」という言葉で済まされてしまい、当事者の希望や、皆と同じ平等な扱いを蔑ろにされてしまうことが起きてしまうことだ。これは日常茶飯事で今回のショーに限ったことではない。しかし「身体的マイノリティ”だから「特別扱い」してほしい”」と訴えたいのでは決してなく「身体的マイノリティ”なので皆と平等に近づける「配慮」がほしい”」ということだ。私以外に性別や人種などマイノリティの中にも同じように考えている人もいるのではないだろうか。

Imaged by FASHIONSNAP(Koji Hirano)

 ショー終わりに「自由をテーマにするのであれば、社会的マイノリティを特別扱いするのではなく、皆と平等に近づけるよう『配慮』がほしい」という私の考えをデザイナーに伝えた。今期はたまたま当ブランドが、たまたま車椅子を誘導するのに不便な代々木第二体育館で行い、想定外のことが起きてしまったわけで、特定の誰かを責めたいわけではなく不運が続いたのだと捉えている。いずれ同じようなことが他のブランドで起こっているだろう。TANAKAが標的となってしまったことは大変申し訳ないが、平等な社会に少しでも近づくためマイノリティとして声を上げさせてもらった。そして私も「想定していない誰か」に配慮が足りない対応をしていないかを改めて考え直したいと思っている。

 なお、この執筆を終えたころ、ショーの運営会社から個別にお詫びの連絡をいただいた。「再発防止に取り組む」というとても丁寧な対応に感謝している。わざわざ連絡をいただいたので感謝の言葉とジャーナリストとして声を上げたい旨をお伝えし、事前にこちらの記事を確認してもらい投稿している。

 令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化。一方的に配慮を求めるのではなく、社会の動きに合わせて当事者と企業が歩み寄って、一緒に考えていきたい。

 「人によって感じ方が異なるし平等は難しい」

 「配慮って言われてもどうすればいいか」

 決まった答えがないためとても難しい問題だと執筆している私も感じている。ただこれを機に考えるきっかけになってくれたら平等な社会に近づくのではないかと思う。

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