化粧品をメインにしたセレクトショップ「キャンミー(canme)」を全国で6店舗展開しECビジネスも行っていたテックアット(本社:福岡市)が9月5日に東京地裁に自己破産を申請し、同日破産手続きの開始決定を受けていた。「キャンミー」(以前のショップ名は「new me」)は破産時6店体制。2021年9月オープンの第1号店である福岡天神店、新宿マルイ店、有楽町マルイ店、渋谷モディ店、イオンモール大阪ドームシティ店、イオンモール茨木店と有力ショッピングセンターに売り場を展開していた。
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ワンブランドでこうした有力店に売り場を持つことは難しいが、ブランドの複合であるセレクトショップ型はテナントとして入りやすい。もちろんネットでの販売とのオムニチャンネル体制も万全。また製品やサービスを体験させることに目的を置いたRaaS(Retail as a Service)型の店舗であることがショッピングセンターやブランド側の強い関心を呼んだようだ。
テックアットは2019年10月2日の設立だがあっという間に業界の注目企業になった。有名タレントを起用し、インスタやTikTokを使って派手に話題作りも行っていた。最近では人気タレントを使った「NEXT TREND FES. TOKYO」を東京国際フォーラムで6月3、4日に開催し1万人を動員。さらに7月14日には話題の「シーイン(SHEIN)」と「キャンミー」のコラボレーションショップが福岡天神店で実現。7月21日には西武池袋本店で「キャンミー」の期間限定ポップアップストアを設置して人気の韓国コスメなど国内外のブランドが大集合した。
さらにこのブランド側が注目したのが破格の取引条件だった。ある化粧品ブランドとの販売委託契約は、「販売契約金1000万円をテックアットに支払う。売り上げの20%はテックアットに支払う。売れ残りはテックアットが買い取る。また年間の売上高が2500万円に達しない場合は販売契約金のほとんどにあたるコンサル料を返金する」という夢のような条件だった。また中国でのEC販売にも強いというフレコミだったが、販売の実績はあまりなかったという。
事態が急変したのは7月末。延山勇貴社長をのぞくすべての取締役が同時退社。8月1日に本社を福岡市中央区から東京都新宿区へ移転。その後8月30日に新宿マルイ店に「閉店のお知らせ」が掲示され、同日全店が閉店。投資家や顧客企業から問い合わせが殺到した。弁護士に事後処理を一任した延山勇貴社長とは連絡がいまだに取れないという。
同社は、EC関連企業のほか地元福岡の不動産会社などから度重なる資金調達を行い、成長が見込まれるベンチャー企業として注目されてきた。2019年の設立当初はECサイト運営やホテルなどの内装設計を展開していたが、新型コロナ禍で業績が低迷。2021年9月から、韓国の化粧品をメインにした体験型セレクトショップ&ECに転換していた。
最新のベンチャー企業の失敗という捉え方がなされる一方、当初から販売契約金を狙った詐欺で、一時的に販売ができているように装うなど顧客を信用させ、8月末に一気に手仕舞いするという手際の良さから、計画倒産ではないかという指摘が出ている。
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