デザイナーの田中文江が手掛ける「フミエタナカ(FUMIE=TANAKA)」が、2024年春夏コレクションを発表するランウェイショーを恵比寿ガーデンホールで開催した。ショーとともに、歌手UAのライブパフォーマンスが行われることが事前に発表され、会場には一般客を含む約1500人が来場。オールスタンディングで観衆たちがショーを待つ空間は熱気を帯びた。
暗転した会場に、ハイヒールの靴音が響き渡りショーはスタート。ステージの暗幕の中から登場したモデルたちは、人混みをかき分けるように敷かれた細く曲がりくねったランウェイを歩く。2024年春夏コレクションのテーマは「islanders(島民、島の子)」。「民族」という言葉の持つ固定概念を振り払い、架空の島で暮らす民族や生き物の「不気味だが愛がある姿」を表現。自身のイラストで絵本のような物語を作り上げ、そのイメージを落とし込むようにコレクションを構築したという。「架空の自由な世界には、ヒールを履いている民族がいたっていい」という思いから、時折響くハイヒールの音を演出に加えた。自分たちが考えていることが全てではない、という想いを裏テーマに添える。
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コレクションには、硬さや色合いにこだわってオリジナルで制作したコード糸で作られたコード刺繍のアイテムや、手描きでデザインされた柄のテキスタイルを使用したドレスやセットアップなどが登場。ワンピースは、展示会で人気が高いという。
モデルたちがステージの暗幕の裏に帰っていくと同時に幕が開きUAのライブがスタート。「情熱」をはじめとする人気曲を数曲披露した。UAが着用した、ケイトウの花のようなゴールドのニットパーツを組み合わせたドレスは全てオリジナル。細いラメ糸を31玉を田中自身が1人で編み上げた。「架空の島の姫」をイメージしながらも、単純な可愛らしいデザインになってしまわないように度重なる調整が重ねられ、ショー直前の5日間眠らずに編み上げたという。
Video by FASHIONSNAP
UAの楽曲を専門学生時代によく聞いていたという田中。長年ブランドがミューズとして掲げる「媚びず、かっこいい、芯のある自然な女性像」にマッチするのはUAだけだと考えていた中で、久々にUAのライブを観た田中は、その楽曲を聴いていた時代の自分の努力や苦労の日々を鮮明に思い出し、音や香りに付随して古い記憶を思い出す瞬間の感動を様々な人と共有したいと考えたと話す。UAを若い頃に聴いていたような田中の同世代には懐かしく、この機会に初めて聴く若い世代は、またどこかで思い出してほしいという想いから、大ボリュームのライブは無料で開放された。親子連れの観客は優先的に前列に案内し、文化服装学院の学生たちをスタッフに起用。田中は、学生や子どもたちにとって思い出に残る機会の創出を目指すことに加え、舞台を支える裏方の存在や、リアルクローズではない「衣装」という領域など、ファッションやカルチャーに関わる中でも様々な将来の道があることを提示したかったという。コンサートを終え田中は「新しい可能性に気がつくきっかけになったら嬉しい。ファッションだけが全てじゃないということが伝えたかったんです」と振り返った。
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