繊維の街・岐阜県岐阜市で生まれ育った高橋徹さん。アパレルブランドの販売員を経験後、株式会社GOOD VIBES ONLY(GVO)でチーフディレクターとしてアパレル業界におけるサプライチェーンの変革を目指されています。GVOが取り組むアパレルDXについて、そして高橋さんが考えるアパレル業界での働き方についてお話を伺いました。
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デジタルでアパレル業界をより良くしたい
――株式会社 GOOD VIBES ONLY(GVO) について教えてください。
弊社はアパレルDX事業を展開しており、CGとAIを活用する事により、アパレル業界におけるサプライチェーンの変革を目指すアパレルDXカンパニーです。「衣類破棄0%」をヴィジョンに、「デジタルファッションの世界を当たり前に」をミッションに掲げています。
――GVOがリリースしているアパレル DX プラットフォーム「Prock」とは?
従来のアパレルのサプライチェーンである、計画、デザイン、パターン、サンプル、製造、撮影、販売を1つのプラットフォーム上で管理できるサービスです。3Dデジタルサンプル依頼、計画から生産までの複雑なフローを一元化し、ブランド運営において最小リスクで運営が出来る仕組みを作っています。今後、機能追加や連携サービスを通じ、アパレルにおける各種サービスを当プラットフォーム上で提供していく予定です。その中で、現在会社として推進しているサービスは2種類。
1つ目は、「3Dデータで完結する服作り」。3DCG×AIを組み合わせたサービスは生産リードタイムの短縮だけでなく、アパレル市場における在庫課題を解決させ、企画から生産、販売までの大部分をデジタル化させることを可能にします。MD-System※1での商品計画からデジタルファッションへのシームレスな制作が可能になります。
2つ目は商品計画をDX※2化、新しい分析データを提供するSaas。商品の計画〜仕入れ分析まで、デジタル一元管理が可能なプラットフォームで、バラバラに管理されていた各種数値をProck内にまとめることで、新たな商品分析が行えるようになるサービスです。アパレル業界では在庫の大量廃棄が従来より社会問題となっており、サステナビリティへの対応が求められています。GVOは設立当初からアパレル業界における在庫課題を解決すべく、企画から販売までのデジタル化を促進してきました。
※1…マーチャンダイジングシステム。マーチャンダイジングとは、消費者の欲求・要求を満たす商品を適切な価格と数量、タイミングで提供するための企業活動を指し、マーチャンダイジングシステムはそれらを支援するシステムのこと。
※2…デジタルトランスフォーメーション。デジタル技術を活用し、業務、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、デジタル時代にも十分に勝ち残れるよう企業の競争力を高めること。
繊維の街・岐阜に生まれて
――前職もアパレル業界だったのでしょうか。
元々、アパレルの販売員を3~4年ほどやっていました。地元の岐阜県岐阜市が繊維の街として栄えていて、アパレル業界が非常に身近にある環境で育ったこと、そして自分に関わる人を笑顔にしたいと考えていたことから、アパレル業界の中でも販売の仕事を選びました。岐阜県岐阜市はアパレルのブランドが多くあり、よく友人と洋服の買い物にでかけていたのですが、その時に友人のコーディネートを組んであげた結果、後日「◯◯ちゃんとのデートでコーディネート褒められた!」と喜ぶ友人の笑顔を忘れられなかったんです。町中にはおしゃれなファッショニスタがたくさんいて、雑誌のスナップに頻繁に取り上げられていました。彼らは当然モテていて、自分もそうなりたい!と憧れたというのもありますね(笑)。そもそも僕は高校生の時に生徒会長や応援団長をやっていて、人前に立って発信するということに興味があったんです。地元のファッショニスタの方たちはオピニオンリーダー的な存在でもあったので、作る側よりも発信する側の販売員になりたいと思ったんです。
――それだけやりたかった販売員の仕事を辞め、今の会社に入社したきっかけを教えてください。
弊社代表野田の「ファッション業界のサプライチェーンを変えるぞ」というビジョンと熱意に完全にやられました(笑)。そして、そのビジョンを自分だったら実現できる推進力があると思いジョインしました。さらに僕が入社をした頃はコロナ禍で色々な店舗が閉まっている中で、まだEC化率が高くないアパレルブランドがとても苦戦していた状態。そんな状況を打破するためにオンライン接客を普及させてほしいと言われ、自分の販売員としての経験を生かせると思ったんです。どういう風に伝えれば画面越しでも服の魅力が伝わるか、購入意欲を刺激できるかなど、オンライン接客による良質なユーザー体験を構築するプロジェクトを0からスタートさせました。
本当の意味でのサステナブルとは
――GVOの取り組みはサステナブルとしても注目度が高いですよね。
僕たちはまず大前提として、サステナブルというものは「ブランドの売り上げを向上させていくものであるべきだ」という根本的な考えがあります。生地が土に還るとかそういったことだけではなく、サステナブルに取り組むことによって売り上げが上がる仕組みを作ることに重きを置いています。環境に良いことは素晴らしいことですが、やはり売り上げに直結させたい。そんな時にオンライン接客などが必要なんです。アパレル業界はまだまだ年功序列で、社内の他チームが何をやっているかを知らない縦割り社会の古い体制が残っています。だから僕たちは全メンバーが横断的に様々なプロジェクトに関わることでそれぞれがスキルアップし、会社全体の事業の理解度を深めている。点ではなくて、全部が線で戻ってくるというこの循環をデジタル完結させていく、効率化させることをDXだと考えています。
――DXにはいわゆるマルチタスクが求められる?
そうですね。マルチタスクが苦手だ、という方もいらっしゃると思うんですが、たとえば自分がマルチタスクとしては30点しか成果を出せない、という場合でも、チームだから全員で100点を出せばいいんです。全体の中では30点しか出せていないけど、自分の中での80点、ないしは100点を出せたらいいよね、という。一人で抱え込むのではなく、良い意味で周囲を頼って動かしていくという考えを持っていれば一歩前に進めると思います。
――前職での経験はどんな風に生きていますか?
「Prock」などのシステムはIT系出身の方がやっているので、IT目線での改善策、経営者レイヤーの人に対してのソリューションになることが多いのですが、僕は販売員出身ということもあって、現場を体験しているからこそどういうところに不満があったのかなどを本部の営業の方たちが汲み取り切れないところを言語化して、サービスに反映できているのかなと思います。僕は今でも現場で売り上げを作っている販売員の方たちを一番尊敬していて、販売員の方の意見こそすごく大切にしていますね。
――今はチーフディレクターとしてどんなお仕事を?
統括ディレクターとして、現場体験者目線で意見を吸い上げ、意思決定していく立場にあります。ディレクターという肩書ではありますが、いちプレイヤーとしてサービスの改善やクライアント営業を行ったり、サプライチェーンの中の「販売して売り切る」部分のPRも行っています。ディレクターとして大きな絵を描きながら、その解像度を上げながら現場へ落としているイメージですね。
やりがいは自分で決める
――どんな時にやりがいを感じますか。
アパレル業界の中でもとても特殊な立ち位置で、ある意味今後のアパレル業界の変革になりうるゲームチェンジャーとして、その事業を推進しているということがやりがいです。ただ、僕はやりがいはどこにいても自分で決めるので、これまでの仕事でもやりがいを感じなかったことがないんですよね。僕の座右の銘は「やるか、やるか」なので、やらないという選択肢はない。でもどうしても「できないこと」は出てきてしまう。できないことをできるようにするには努力の母数を上げるしかないと思っています。できるようになるために必要なものを洗い出して、リスト化して、やれないことを認識すること、1個ずつ潰していくことで進捗率がわかる。一歩一歩進んでいくことでやれることが増えていることを実感し、未来に近づいていけるんじゃないかなと。
――今後の展望を教えてください。
個人としてはやりたいことが2つあって、1つは地域創生。年に1回、地元の岐阜県に帰るのですが、どんどん衰退して、ファッションの街だったのに繊維の卸業者やショップも減ってきている状況。自分の原点の場所だからこそ、今後盛り上げていきたいなと思っています。もう1つがセカンドキャリアのサポートです。僕自身販売員からスタートして、今は人からIT業界で働いているんですか?と聞かれるくらい色々なスキルセットを身に着けながら働いています。これって通常ではなかなかないキャリアアップのルートだと思うんですよね。「こういうこともできるんだよ」と自分が発信していくことで、販売員の人の未来の選択肢を広げていきたいと思っています。
高橋 徹 たかはし・とおる
岐阜県岐阜市出身。
アパレルブランドの販売員を経験後、
株式会社GOOD VIBES ONLYでチーフディレクターとしてアパレル業界におけるサプライチェーンの変革を目指す。
株式会社GOOD VIBES ONLYの主なサービスとして従来のアパレルのサプライチェーンを1つのプラットフォーム上で管理できるサービス「Prock」がある。
https://goodvibesonly.jp/
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