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名作映画の衣装からファッションを読み解く書籍「Fashion in Film」を解説

名作映画の衣装からファッションを読み解く書籍「Fashion in Film」を解説

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2023年9月、株式会社ボーンデジタルから刊行された書籍『Fashion in Film』。ファッションデザイナーたちが手掛けた映画衣装に着目し、49のブランドが映画の世界で携わってきた歴史を貴重な資料と共に紹介されています。本記事では『Fashion in Film』の概要と見どころ、そして、紹介されているハイブランドの中から4つのビッグネームをピックアップし、映画の世界とどのような関わりを持ってきたかについて解説します。

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戦前から現代まで、映画衣装とファッションが紡いだ歴史をたどる

『アニー・ホール』でダイアン・キートンが着用した「マスキュリンスタイル」、『ティファニーで朝食を』でのオードリー・ヘプバーンの「リトルブラックドレス」など、スクリーンを彩る華やかな映画衣装は、ファッション界の一流デザイナーたちによって制作され、それぞれの時代のトレンドにも影響を与えてきました。ファッション専門ライターであるクリストファー・ラヴァーティの著作『Fashion in Film』では、戦前から現代に至るまで、それぞれの時代のトレンドやカルチャーを楽しめる作品を取り上げ、衣装を手掛けた有名デザイナーたちのキャリア、バックグラウンド、功績などを紹介。デザインスケッチや映画スターの着用写真と併せてまとめられており、映画と俳優の魅力を引き立たせるためにデザイナーがこだわったポイントについても知ることができます。

【掲載デザイナー】                                                                    アドーレ・フェンディ、アニエス・ベー、イヴ・サン=ローラン、ヴィヴィアン・ウエストウッド、ヴェラ・ウォン、カール・ラガーフェルド、カルバン・クライン、グッチオ・グッチ、クリスチャン・ディオール、ココ・シャネル、サルヴァトーレ・フェラガモ、ジャン=ポール・ゴルチエ、ジョルジオ・アルマーニ、トム・フォード、ピエール・バルマン、マーク・ジェイコブス、マリー・クヮント、ユベール・ド・ジバンシィ、ラルフ・ローレン、etc…                                                         【掲載映画タイトル】                                                                       『007 シリーズ』『アニー・ホール』『悲しみよこんにちは』『華麗なるギャツビー』『グランド・ブダペスト・ホテル』『シャレード』『セックス・アンド・ザ・シティ シリーズ』『ティファニーで朝食を』『パルプ・フィクション』『ブライダル・ウォーズ』『プラダを着た悪魔』『ポリー・マグーお前は誰だ』etc…                                  

映画を彩るブランド 「クリスチャン・ディオール」

担当作品:『舞台恐怖症』(1950年)、『アラベスク』(1966年)

1947年に「コロールライン」でデビューしたクリスチャン・ディオールは、当時の質素で機能性のみを重視した制服やスーツへのアンチテーゼとしてボディラインを強調する「New Look」を発表。ファッション業界に大きなインパクトを与え、パリが再びファッションの中心地となることに寄与しました。マレーネ・ディートリッヒと友人関係にあったことから、ディオールは彼女の出演作品の衣装を担当するようになり、アルフレッド・ヒッチコックの『舞台恐怖症』では、ロングドレスをはじめとしたゴージャスな衣装に身を包む姿を見ることができます。ディオールの手掛けた衣装により、マニアックなスリラー映画に華やかな要素が加味され、配給会社はこの起用における成功を大いに喜んだといわれています。1957年にディオールが亡くなるとイブ・サン=ローランがあとを継ぎ、1961年の『アラベスク』では、ソフィア・ローレン演じるスパイの衣装を現代的なモッズスタイルでコーディネートしました。

映画を彩るブランド 「プラダ」

担当作品:『007/慰めの報酬』(2008年)、『華麗なるギャツビー』(2013年)、『グランド・ブダペスト・ホテル』(2014年)

プラダは1913年、マリオ・プラダによってイタリアで創業。彼女の死後は長い低迷期に陥りますが、1978年に孫のミッチャ・プラダがオーナー権デザイナーに就任すると、ノスタルジックと繊細さを併せ持ったスタイルでブランドを再興させます。プラダは、衣装協力だけでなく制作面でも映画との関わりが強く、ロマン・ポランスキーやウェス・アンダーソンといった監督たちとファッションミニムービーを制作したこともありました。近年の作品では2008年の『007/慰めの報酬』ではオルガ・キュレンコがバラの装飾やフリルのリボンで仕上げられたブラックドレス姿でアクションもこなす活躍ぶりを披露。2013年の『華麗なるギャツビー』では、ヒロインであるキャリー・マリガンのシャンデリアドレスとエキストラのドレス40着を提供。このシャンデリアドレスは1920年代の様式に影響を受けたミウッチャのテイストを反映し、映画にエレガントなエッセンスを加味しています。以後も2014年の『グランド・ブダペスト・ホテル』でウィレム・デフォーにモーターサイクルコートを提供するなど、プラダと映画界の密接な関係は現在も続いています。

映画を彩るブランド 「マノロ・ブラニク」

担当作品:『マリー・アントワネット』(2006年)、『セックス・アンド・ザ・シティ』(2008年)

高級靴の代表的デザイナーとして知られるマノロ・ブラニクは、1968年にイギリス・ロンドンでファッション専門の写真家として活動を開始。その後、ニューヨークに進出し、ファッションデザイナー、オジー・クラークから靴製作の依頼を受けてコレクションデビューを飾ります。ブラニクは1980〜90年代にかけて数多くの作品を制作し、「靴の王様」「靴のロールスロイス」と呼ばれるなど靴デザイナーとしての高い地位を確立。2008年、映画版『セックス・アンド・ザ・シティ』では衣装デザイナーのパトリシア・フィールドが主人公・キャリーに履かせる靴としてブラニクのハイヒールを選び、鮮やかなブルーのウェディングパンプスが存在感を放っています。2006年のソフィア・コッポラ監督作品『マリー・アントワネット』では、作中に登場するすべての靴の制作を担当。キッチュでエレガントなデザインは、ファッション誌『VOGUE』で特集が組まれるなど大きな話題となりました。

映画を彩るブランド 「フェンディ」

担当作品:『家族の肖像』(1974年)、『エイジ・オブ・イノセンス/汚れなき情事』(1993年)、『悪いことしましョ!』(2000年)、『ザ・ロイヤルテネンバウムズ』(2001年)

フェンディの歴史は1918年、アデーレ・カサグランデが比較と毛皮の工房を設立したことから始まります。1925年にオリジナル商品を販売するブティックを開業。その後、1965年にカール・ラガーフェルドがクリエイティブディレクターに就任し、プレタポルテレーベル「365」ラインを立ち上げたたことでラグジュアリーブランドとしての地位を確立します。1974年の『家族の肖像』で、衣装デザイナーのピエトロ・トージに指導を受けてオーダーメイドの毛皮を作り、主演を務めたシルヴァーナ・マンガ―ノの衣装デザインを手掛けたことも飛躍のきっかけとなりました。以後も映画への協力を積極的に行い、これまで30本以上もの作品でフェンディと衣装デザイナーのコラボレーションを見ることができます。フェンディの毛皮は映画の中で俳優たちの表情をさまざまに彩りますが、いずれの作品においても彼らの持つリッチな品格を可視化させるという共通項があり、ブランドの魅力を訴求しています。

紹介した4つのハイブランド以外にも、映画を切り口にファッション界の一流デザイナーの功績を知ることができる書籍『Fashion in Film』。ファッション関連の仕事に従事している方はもちろん、映画ファンにとっても参考になる一冊です。

TEXT:伊東孝晃

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