カジュアルシューズの原点「Clarks」。人気シリーズの「Desert Boot」は1950年の発売開始以来、常にカジュアルシューズをリードしてきた。加えて、ここ数年のトレンドとして、若い世代が「Clarks」の靴を求める流れがある。1825年創業、もうすぐ200年目を迎える「Clarks」のブランド価値とトレンド回帰に対する思いを、ホールセール&リテール ディレクターの横山 力也さんに語っていただいた。
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横山 力也さん/クラークスジャパン株式会社 ホールセール&リテール ディレクター
法政大学卒業。1994年に株式会社リーボックジャパンに入社し、以降19年以上「Reebok」のセールスマネージャー及びレディース商品のマーケティングを担う。その後デッカーズジャパン合同会社に移り、2020年からクラークスジャパン株式会社にて現職。
節目を迎えるブランドの変化に向き合う、靴業界の専門家
ー まずは横山さんのご経歴を教えてください。
大学卒業後、株式会社リーボックジャパンに入社し「Reebok」のセールスやマーケティングを担当しました。その後に、デッカーズジャパン合同会社に移り、「UGG」や「Sanuk」などのブランドに関わりました。2020年にクラークスジャパン株式会社に移り、現在は4年目です。
ー ずっと靴業界でご活躍されていますね。
そうですね。特にデッカーズジャパン合同会社においては、「UGG」の認知度が高まる過程を経験でき、とても勉強になりました。その経験を現在マーケットが変わっていくタイミングでもある「Clarks」で活かし、よりお客さまに楽しんでいただけるブランドにしたいと思っています。
支持され続ける理由は、「製品価値」と「感情的価値」
ー では改めて「Clarks」というブランドについて教えてください。
「Clarks」 は2025年で創業200年を迎えます。ブランドの始まりは、シープスキンのラグマットを作る会社に勤めていたサイラスとジェームスという兄弟が、切れ端を繋ぎ合わせてルームシューズを作ったことです。今も受け継がれる「Clarks」の哲学「パッケージング」は、「靴は単に『履く』ものではなく足を『包む』もの」という、「Clarks」のすべての靴に共通したものです。
ー 「Clarks」といえば定番のスタイルが印象的です。
「Clarks」は、どんな方にも、どんな場面にも合う、プレミアムなカジュアルシューズとクラシックシューズの数々を提供しています。「Clarks」の中には、愛されているアイコニックなスタイルで知られる「Clarks Originals」があり、主な製品シルエットは、「Desert Boot」(発売から74年)、「Wallabee」(発売から56年)、「Desert Trek」(発売から52年)です。世代や文化を超えて愛される理由は、上質な素材と汎用性の高いシンプルなデザインにあると確信しています。
ー 変わり続ける市場や消費者の需要のなかで、定番であり続けることが「Clarks」の大きな価値なのですね。
変わらないことを意識しているというよりは、コンセプトがデザインの原型として形を留めているからこそ変える必要がないと考えています。「Desert Boot」は、カジュアルシューズにおける最初の先駆的シルエットであり、靴が「堅苦しい」フォーマルなものと認識されていた時代に、「カジュアル」というカテゴリーを確立しました。モカシンである「Wallabee」は、アイヌやイヌイットの方々が魚や木の皮を足に巻いていたことから「足に巻きつける」をコンセプトとしたものです。
我々の製品が求められている理由のひとつは、履き心地が良いという「製品価値」に加えて「感情的価値」があることです。TPOやジェンダー、世代を問わずに使っていただけるのは他のブランドにはあまりないことだと考えています。それは例えば、おじいさんが履き続けていただいていた製品と全く同じものを、お孫さんが違う感覚で楽しんでいただけるといったことにもつながります。世代を超えてご愛用頂くなかに、それぞれの価値が生み出されるのです。
ー 素晴らしいですね。他にも「Clarks」が求められる要因はありますか。
「Clarks」は各国の文化と密接に繋がっています。アメリカのヒップホップ界では「Wallabee」が注目され、ジャマイカでは「Clarks Originals」がレゲエスタイルの方に多くご愛用いただく、国民的な人気ブランドとなっています。ヨーロッパではオルタナティブロックやアンダーグラウンド文化に密接に関わっています。
このように、まったく違う文化や趣味嗜好のお客様が同じモデルを求められることが「Clarks」の特徴です。移り行く世の中でその時代や地域、文化に繋がりを持ち、ブランドや製品の価値を紡いできたからだと考えます。
トレンドのなかで、次の200年に向けたシフトチェンジを
ー では、トレンドが回帰することについてはどのようにお考えですか。
トレンドはブランドを知っていただくトリガーになると思います。しかし、お話してきたように「Clarks」は歴史のなかで多くの方々に支えていただきながら、文化を紡いでいくことを重視していますので、あまりその時々のトレンドに影響されずにいたいと考えています。
それゆえ、ブランドとしては「THE GREATEST CASUAL SHOE BRAND IN THE WORLD」というメッセージを、「Clarks JAPAN」としては「CREATING CURTURE TO ENJOY CLARKS」というビジョンを持ち、「Clarks」 を楽しんでいただく文化を創造することを核としています。
ー Y2Kや2K5など、最近若い方に「Clarks」 が求められていますね。
ここ20〜30年でスポーツシューズやスニーカーを普段履きすることが浸透し、スニーカーコーデを楽しむカルチャーが定着しました。一方でスニーカーは洋服をどうしても選んでしまう部分があります。お客様が「落ち着いて大人びた、普遍的なちょうどいいカジュアルシューズ」が欲しい時や「ちょっと違う表現をしたい」時の入り口として我々の商品を選び、楽しんでいただけたらとても嬉しいです。
ー今後の展望をお聞かせください。
次の200年を紡ぐ上で、「Clarks」 ブランドをお客さまにどう楽しんでいただけるのか、今まさにシフトチェンジをしています。「Clarks Originals」は日本で4店舗を運営しており、加えて今後は「Clarks」の製品のみ扱う店舗も展開していく予定です。
「Clarks Originals」では、こだわりを持つ方々に向けて引き続き有名なブティックやセレクトショップなどと協業します。「Clarks」では軽さや履き心地の良さを保ちつつ、多くの方々のニーズや幅広いシーンに対応できる「可愛い」「かっこいい」コレクションとして百貨店やシューズショップなどとの関係を強化していきます。
ー では従来とは違った特徴の製品が並ぶのでしょうか。
ビジネスシューズやブーツなど違う特徴のものもありますが、メインに据えるカジュアルシューズは、従来のDNAを持ったデザインを踏襲します。より軽く柔らかく変化をつけたデザインで「ちょうどいい」を常に表現していくコレクションです。
たとえオンラインで買った商品でも、同じものが素敵なブティックに置いてあったら嬉しいですよね。お客様が「良いものを持っている」と思えるようにデザイン的な主張をするのではなく、自分が買ったものに対して後で丸をつけてあげれるようなブランドであり続けたいと思います。 我々は常に「お客様がお金を払う価値」をつくり続けられるかを考えて行動したいと思っています。そのためにはまず我々とビジネスパートナーが楽しんで事業を推進すること、そして自分たちが欲しいと思うブランドや商品であり続けることが重要です。そして、それをより多くの方と共有・共感していく。シンプルで当たり前のことですが、この想いに磨きをかけていきたいです。
文:吉田櫻子撮影:Takuma Funaba
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