Image by: AIfleet
日本では、今年4月からトラックドライバーの時間外労働について「960時間」の上限規制が適用された。これによるドライバーの収益性の低下、人材減、輸送能力不足が『物流の2024年問題』として課題視されており、打開策が急がれている。
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同様に長距離ドライバーの不足が叫ばれる米国では、企業がドライバーの労働環境や運送効率の改善などのアプローチで人材確保に動いている。
効率の良い陸運ルートをAIで導くという、テクノロジー主導の解決策で業績を向上しているのが、米テキサス州オースティンに拠点を置く運送会社AIfleetである。同社はAIを活用してトラック輸送の非効率性を解決し、ドライバーにとって働きやすい環境と十分な報酬の維持を強く打ち出している。
積み荷の有無にかかわらず走行距離に応じた報酬を算出
AIfleetは、テクノロジー主導の運送会社。走行ルートはすべてAIが設定し、ドライバーはそれに従ってハンドルを回す。
同社は、走行距離に応じた距離でCPMを算出する仕組みでドライバーに報酬を支払っている。積荷を載せていない状態で走行した距離も含めて報酬が加算され、走行距離が長くなるほどCPMも高くなる。また、“何か問題が発生したときのために”と、最低2,000マイルの走行距離保証まで用意されている。
同社は業界平均よりも40%以上高い稼働率を実現し、大手運送業者と比較して営業利益を5倍に増加させることができたという。トラックの輸送ルートおよび積載計画をリアルタイムで最適化することで輸送効率を上げ、1マイルあたりのコストを削減。徹底的に効率化されたトラック輸送でドライバーの待遇を改善し、効率的な働き方で十分な報酬を維持できるようにサポートしている。
家族やペットを同行することも可能
同社は、ドライバーの福利厚生に注力している。車両1台ごとにリアルタイムに追跡できるため、それぞれのドライバーの帰宅時間の算出・保証まで可能だ。希望する場合は家族やペットを同行することも可能で、10歳以上であれば子どもも“旅(運送業務)”に連れていくことができるという。なおAIfleetのオペレーションエリアは全米に渡る。
またドライバーには毎週帰宅できるというオプションも用意。もしドライバーが毎週の在宅時間を希望する場合、最低34時間の自宅滞在も保証。同社公式サイトでは、家族との時間を確保できたという多数のドライバーたちのエピソードが掲載されている。
就労条件は厳しく設定、信頼性も重視
もちろん同社はドライバーだけでなく、荷物を送る人からの信頼性も重視している。AIfleetのドライバーには誰しもがなれるというわけではない。
たとえば大型車の運転経験、交通違反歴など就労条件は細かく審査される様子がうかがえる。“大型免許を取りたて”の人が働ける環境ではなく、他での過酷な労働環境に不満を感じて退社した優良運転手を救いあげているようにもみてとれる。
シリーズB投資ラウンドで1,660万ドルを調達
AIfleetは9月10日、Heron Rock FundのTom Williams氏が主導したシリーズB投資ラウンドで1,660万ドルの資金を調達したことを発表。これにより同社の総資金調達額は約5,000万ドルに達した。
同社の共同設立者兼CEOであるMarc El Khoury氏は、「フルトラック輸送の市場規模は4,000億ドルだが、50万社の運送会社が存在し、最大手でも市場の1%にも満たない、非効率で断片化された市場だ」と指摘したうえで、「トラック運転手不足によって生じるひずみを緩和し、トラックの輸送効率を根本的に改善する技術を開発することで、ドライバーの労務環境に“人間らしさ”を取り戻すことにもつながっている」と言及している。
ちなみにAIfleetのAIは、現時点で1台のトラックにつき1週間あたりじつに“20京通り”もの組み合わせを管理しているという。これは1週間あたり25万個の積み荷(年間200億ドル相当)に換算できる。
同社に今回出資したVolvoグループの発表で、Volvoグループの投資家であるJoe Darcy氏は「彼らは、トラックの利用効率を高めるだけでなく、ドライバーが最適な労働環境を得られるよう努めている」と語っている。
効率的なルート走行は、CO2削減、燃料コスト削減、迅速な輸送を実現するのみならず、ドライバーが効率的に動けるようになることで勤務時間の短縮と報酬維持の両立にもつながる。またアメリカトラック協会は、過去「人材不足の原因はいくつかあるため、さまざまなアプローチを取らなければならない」と発信しており、問題は賃金だけではないと訴求。
単なる“賃上げ”ではない、ドライバーのワークライフバランスを尊重するAIfleetの姿勢に投資家の期待が寄せられている。
参考:
AIfleet
米国トラック協会資料
全日本トラック協会「物流の2024年問題」
(文・澤田 真一)
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