ビジネスの目標を達成するための定量指標となるKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)。さまざまな業界の企業・組織で重視されており、当然それはファッション業界も該当する。
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本記事では、外資系ラグジュアリーブランドの店舗におけるKPIの実態をご紹介。エーバルーンコンサルティングの五十野正人さんが外資系ラグジュアリーブランド9社のマネージャークラスにKPIについてヒアリングを行った結果、コロナ禍以降、各ブランドは店舗運営において「売上」以外の点を重視していることがわかった。その変化について、五十野さんが解説する。
五十野 正人さん/エーバルーンコンサルティング株式会社 シニアヴァイスプレジデント
大阪府出身。大学卒業後、セレクトショップにて販売、外資系ラグジュアリーブランドにてマネジメント職を経験。2011年にエーバルーンコンサルティング入社。大阪オフィスに在籍し、自らのネットワークを活かし、マネジメントからストアオペレーションまで全国のショップ系求人を担当する。
コロナ後は「客単価」より「ローカル客(日本人顧客)の満足度」を重視
― ブランドビジネスにとって、KPIは重要なのでしょうか。
目標を数値化し、ブランドごとのビジネス戦略を明確に店舗に落とし込むことができるKPIはとても重要です。KPIを明確に設定することで、店舗のスタッフ一人ひとりがブランド戦略を数字で理解することができる。そしてその目標を達成するために、自分はどのような行動をすればいいのかが明確になってくるのです。
― コロナ禍を経て、各ブランドが設定するKPIに変化はありましたか。
時代背景によって顧客動向や客層は変わっていきますが、それに伴ってKPIも常に変化していきます。この数年ではコロナ禍前後ではっきりとその変化が見られます。どのブランドも、コロナ前は購入決定率やセット率など、「限られた来店客に対していかに購入に繋げていくか」を指標としていました。しかし、アフターコロナで客足が戻りだした2022年以降は高額品販売や客単価など「ブランドの価値をより高める」傾向にシフトしていきました。
― 具体的にはどのようなKPI設定をするようになったのでしょうか。
アフターコロナ以降は、「ローカル顧客(日本人顧客)の獲得」「顧客満足度が高いサービスを提供できているかどうか」に重きを置くようになっています。アウトリーチ数、アポイントによるセールスなど、いかにお店のスタッフがローカル顧客を読んで実績をつくれるか。そして、顧客満足度を測る目的として、商品購入後のアンケートやミステリーショッパー(覆面調査)による接客スコアを導入している会社が多くみられました。
なかには、ミステリーショッパーのスコアを高めるため、顧客の仕草や表情などから行動心理を分析する専門チームを作り、独自のトレーニングプログラムを導入しているブランドもあるようです。このように、各社は店舗での感動的な顧客体験を提供することによってローカル顧客を獲得することをとても重視しています。
各社が目指すのは、外的要因に左右されない店舗作り
― なぜ、ローカル顧客を重要視するKPIに変化したのでしょうか。
コロナ禍直後は、円安の影響で訪日客が多く、各社は売上を大きく伸ばしていました。しかしその反面、直近の円高傾向への懸念や大地震といった外的要因でインバウンドが減ってしまうと売上が大きく左右されることになります。そのため、日本人顧客の売り上げを伸ばすKPIが重視され、顧客一人ひとりの満足度を測るKPIにシフトしているのです。
― KPIを達成した際のインセンティブはあるのでしょうか。
大半の会社は特にインセンティブは設定しておらず、業績賞与などの人事評価に反映する程度です。売上が上がっても顧客満足度が下がってしまっては本末転倒のため、最近では売上に対してインセンティブを発生させるのではなく、顧客満足度とリンクさせようとする会社もあります。この傾向は今後、より強まるのではないでしょうか。
― KPIを達成するために店舗運営に求められることは何ですか。
ストアマネージャーに、KPI管理のスキルが求められることは大前提です。時代背景によって設定されるKPIも変化していく中で、その変化を敏感に察知・理解してストアに落とし込んでいくスキルも求められます。特に今の時代は、インバウンド客の増減に左右されることなく、ローカル顧客に対して感動的で質の良いサービスを提供できるチーム作りやコーチングスキルが求められています。
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