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資生堂上期、「ドランク エレファント」の不振続く 米州事業で300人の削減へ

資生堂上期、「ドランク エレファント」の不振続く 米州事業で300人の削減へ

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 資生堂が、2025年12月期第2四半期(2025年1~6月)の連結業績を発表した。売上高が前年同期比7.6%減の4698億円、コア営業利益が同21.3%増の234億円、営業利益が181億円(前年同期は27億円の赤字)、親会社の所有者に帰属する中間利益(純利益)が95億円(前年同期は1500万円)だった。中期経営戦略の「アクションプラン 2025-2026」に基づいた日本事業の構造改革により、収益性を改善。通期での業績予想は据え置く。

 事業別では、日本事業が「SHISEIDO」や「クレ・ド・ポー ボーテ(Clé de Peau Beauté)」、「エリクシール(ELIXIR)」などのコアブランドが成長を維持し、売上高は同0.6%減(為替の影響を含め実質0.4%減)の1459億円、コア営業利益は同207.5%増の195億円に着地。特に今年3月にリニューアルしたSHISEIDOの「アルティミューン」をはじめ、新技術を搭載した商品がけん引した。早期退職による人件費削減やマーケティング投資の効率化といった構造改革と生産性向上により増益。一方、インバウンド消費は、訪日外国人旅行者数は増加したが、5月以降、旅行者の消費行動の変化や円高等に伴う内外価格差の縮小により減速した。

 中国・トラベルリテール事業では、景気の悪化に伴う消費低下の影響を受け、売上高は同12.4%減(実質10.0%減)の1739億円。中国はEC市場における販促イベント「618」で、クレ・ド・ポー ボーテや「ナーズ(NARS)」が伸長したものの、オフラインは厳しい状況が継続。対応策として、クレ・ド・ポー ボーテでは百貨店の上層階にスパを新設するなど、上質な顧客体験の提供により来店を促進。ラグジュアリーブランドとしての体験を重視した投資が、競合ブランドとの差別化に奏功しているという。トラベルリテールは中国海南島や韓国における、中国人旅行者の消費低調が続き、減収となった。

 アジアパシフィック事業では、タイを中心とする東南アジアや韓国でSHISEIDO、クレ・ド・ポー ボーテ、「アネッサ(ANESSA)」が増収した一方で、台湾での市場縮小の影響を受け、事業全体では減収。売上高は同2.3%減(実質0.5%減)の337億円に着地した。

 米州事業の売上高は同10.1%減(実質9.0%減)の515億円。アルティミューンやミネラルサンケアの新商品が好調だったSHISEIDOをはじめ、クレ・ド・ポー ボーテ、「ドクター デニス グロス スキンケア(Dr. Dennis Gross Skincare)」が増収したが、「ドランク エレファント(DRUNK ELEPHANT)」は前年比マイナス成長が継続した。

 欧州事業でもドランク エレファントの苦戦により、売上高は同5.3%減(実質3.8%減)の595億円を記録。新商品を発売した「ザディグ エ ヴォルテール(Zadig&Voltaire)」や「ナルシソ ロドリゲス(narciso rodriguez)」などのフレグランスは堅調な成長を見せている。

 下期は、貿易摩擦による世界経済の鈍化、先行き不透明な状況による市場の減速、ドランク エレファントの回復遅れ、日本におけるインバウンド消費の減速などのリスクを見込みながらも、通期予想は据え置く。売上高は前期比0.4%増の9950億円、コア営業利益は同0.4%増の365億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は60億円を見込んでいる。上期で減収した中国・トラベルリテール事業は、当初の想定よりも好調に推移を続け、7月にはプラス成長に転じたことから8月以降のさらなる成長を図る。

 関税による業績への影響額は70億円の想定から30億円へと縮小。原材料や商品の輸入コスト上昇や、米国からの輸入抑制による売り上げ減少などに対し、地場調達先への変更や生産地の見直し、コストマネジメントといった取り組みの継続に加え、在庫の積み増し、関税優遇措置の活用、卸売価格の引き上げなどの施策を投じる。グローバルコスト削減・構造改革については、上期で135億円の削減を達成し計画通りに進捗。通期では、米州の構造改革を前倒しで実行することで、当初計画の200億円から250億円へと上方修正した。

 ブランド別では、SHISEIDOがアルティミューンをフックに新規顧客を獲得するための投資を全地域で展開。日本では同商品の売り上げが2倍に伸長し、ブランドとしても2桁成長を達成している。クレ・ド・ポー ボーテはリニューアルしたスキンケアコレクションの初速が好調。そして、新グローバルブランドアンバサダーに俳優のニコール・キッドマンを起用したことから、ラグジュアリーブランドとしての地位を強化する。ナーズでは、第3四半期に予定するマルチスティック「ザ マルティプル」のリローンチをはじめ、地域に合わせた新色や限定色の発売で話題性を高める。

 不調が続くドランク エレファントは、グローバルチームによる課題の再検証を実施。一昨年SNSで人気商品が大きな話題を集めたが、その後ブランドのポジショニングが曖昧になったことで顧客基盤が弱体化したことを指摘。さらに、ブランドの独自性の訴求不足や画期的なイノベーションによる競合との差別化ができていないことを認め、対応策として今年度は市場在庫の整理、偏在在庫の低減、店頭エンゲージメントの構築、ブランド価値の再定義を推進。来年以降、クリニカル・高性能スキンケアのコミュニケーションを強化したブランドリセットキャンペーン、売場づくりの見直しを実施し、ブランドポテンシャルの再評価を目指す。なおドランク エレファントは今年6月に日本での販売を終了している

 そして、米州事業の2026年コア営業利益の黒字化に向け、アルベルト・ノーエ(Alberto Noe)CEOを中心とした新マネジメント体制のもと、スピード感を重視して改善計画を遂行。米州事業全体の約15%にあたる約300人の人員削減や、オフィスフロアの縮減(構造改革費用は第3四半期計上予定)、間接購買最適化などにより、年間で150億円のコスト削減を見込む。組織のスリム化による効率性・生産性の向上、持続可能な成長を可能にする組織・コスト構造の構築を目的としている。

 アクションプラン 2025-2026について、藤原憲太郎 取締役 代表執行役 社長 CEOは「同プランは2026年に最大限の効果を発揮させるために、今年中にアクションをすべて完了させる必要があるとしてきたが、現段階では計画通りに進められている。同プランの完遂はあくまでスタート地点であり、当社がグローバル競争を生き抜くためにはまだまだ進化が必要。さらなる収益拡大と最適なコスト構造の追求、次の成長領域への再投資に向け、次期中期経営計画の公表を今年中に予定している」と語った。

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