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韓国の百貨店が日本の商業施設に出店 広がる「Kブランド誘致」

「現代百貨店」が国外初の店舗をパルコにオープン

Video by: FASHIONSNAP

 韓国の3大百貨店の一つと言われる「現代(ヒュンダイ)百貨店」が、国外初の常設リテールショップを渋谷PARCOに出店した。海外の百貨店が1テナントとして日本の商業施設にオープンするのは異例。現代百貨店は渋谷PARCOの常設店を皮切りに、日本に5店舗を出店する計画だという。商機をどこに見出したのか。

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ロゴ画像

「ザ ヒュンダイ」のロゴ

Image by: FASHIONSNAP

 現代百貨店は16の百貨店を運営している韓国の主要百貨店チェーン。2021年2月にソウルにオープンした「THE HYUNDAI SEOUL」は観光スポットとしても知られている。

外観
内観
内観

Image by: パルコ

韓国にある「現代百貨店」

 同社は2024年5月以降、有望な韓国ブランドを発掘・集約し、海外有力リテーラーで販売する“Kブランド輸出プラットフォーム事業”を展開。パルコとは戦略的協業に関する基本合意を締結したことを発表しており、今回の本格上陸に先駆けてパルコの館にポップアップストアを出店してきた。渋谷PARCOではパク・ソジュンがアンバサダーを務める「ノイス(NOICE)」を皮切りに、「マーティンキム(Matin Kim)」「ミスチーフ(MSCHF)」など、2024年のうちに計23ショップの単独ポップアップを開催したほか、日本のMZ世代をターゲットにしたオンラインプラットフォーム「ヌグ(NUGU)」を運営するMediquitousと手を組み、9ブランドを週替わりで展開する「THE HYUNDAI x PARCO Limited Store with NUGU」を設けた。具体的な数字は非公表としながら記録的な売上を達成するなど、いずれも好評を得たといい、常設店出店の決め手にもなった。

 現代百貨店にとってパルコはカルチャーに強みを持つ情報発信拠点である点に共通項を見い出しているといい、中でも渋谷PARCOは常に新しいことに挑戦し、新しい文化を取り入れる姿勢が現代百貨店の目指す方向性と一致していることを評価。フロアごとにコンセプトが明確であり、各ブランドの世界観を尊重しているため、最大限に表現できる点を高く評価している。パルコ側は昨年のポップアップを通じて、韓国ブランドの持つ集客力や売上、ビジネスのスピード感に勢いを感じているといい、韓国のブランドから渋谷PARCOへの出店に関する問い合わせが急増するなど大きな反響があったことから、2019年のリニューアルオープン後初の大型改装となる今回のタイミングで導入を決めた。

 店舗名は「ザ ヒュンダイ(THE HYUNDAI)」。「パルコミュージアムトーキョー(PARCO MUSEUM TOKYO)」や日本最大級のヴィンテージ総合ECモール「Vintage Collection Mall(VCM)」初のリアルショップ「VCM MARKET BOOTH」など多様なジャンルの店舗が並ぶ4階にオープンした。同フロアには日本初上陸の韓国ブランド「コイセイオ(COYSEIO)」や「オソイ(OSOI)」も出店するなど、韓国ブランドが揃っているが、パルコとしては「韓国ブランド」という括りで誘致しているわけではなく、今の日本の顧客が求めるファッションやカルチャーの流れを汲んだ結果、自然な形で韓国ブランドの導入に至ったと説明している。

 ザ ヒュンダイは小規模なコンセプトショップとして展開。トレンドの移り変わりが速い韓国ファッションの「今」をいち早く日本の消費者に紹介するショールーム的な位置付けで、複数のブランドを扱うセレクトショップ形式ではなく、一つのブランドの世界観を深く伝えるため、1ブランドずつ展開する方式を採用した。

店内の様子

「ザ ヒュンダイ」のロゴも控えめの掲出。あくまでも主役はブランドとし、ブランドの世界観を全面に押し出す。

Image by: FASHIONSNAP

 第1弾ブランドは「トリミングバード(TREEMINGBIRD)」。クラシックなスタイルにユニークな素材やディテールを加えた新たな「モノクローム・クラシック・ノームコアルック」を提案している。日本での認知は高い方ではないが、韓国国内ではミレニアル世代とZ世代を合わせたMZ世代からの支持が厚く、マーティンキムと同じ運営会社が手掛けるブランドということもあり注目度は高く、日本の若者にも独自の世界観が受け入れられると考え、あえて最初のブランドとして選定した。店頭では韓国のグローバルアイドルグループのメンバーの着用情報と合わせてアイテムを紹介するなど、独自の売り場を構成している。出店期間は10月16日まで。

内観
内観
内観
内観
内観
内観
内観
内観

Image by: FASHIONSNAP

 K-POPアーティストの着用から火が点いた「Y2K」ファッションの人気を機に、日本では続々と韓国ブランドが進出しているが、百貨店が出店するケースは異例だ。ザ ヒュンダイのグローバルバイヤー担当者は「日本進出を望むものの、その方法がわからない韓国ブランドが多いため、現代百貨店が持つノウハウや人脈を活かして、それらのブランドの日本進出をサポートする役割を担いたい」と現代百貨店の日本進出の意図を話す。また、韓国ではオンラインで購入しても返品・交換しやすいなどの対応が整っている一方で、日本では同様のサービスが浸透していないことから、「日本の消費者は、オンラインで情報を得つつも、最終的には実店舗で商品を直接見て、触って、試着してから購入する傾向が強い」と分析。そのためにもリテールショップは重要な役割を果たすとしている。ザ ヒュンダイは渋谷PARCOに続く店舗として、2026年上期に表参道に大型店をオープンする予定。その後5年間で、東京だけではなく大阪や名古屋などの主要都市にも、百貨店内店舗や路面店などの出店を計画している。

 なお、韓国初の百貨店として設立された新世界百貨店は、東急グループの東急リテールマネジメントと業務提携に向けた基本合意書を締結。SHIBUYA109渋谷店でポップアップを展開するなど、韓国発のファッションブランドの誘致を進めるとしている。韓国の百貨店が日本の商業施設に店舗を構えるケースは今後も増えていきそうだ。

最終更新日:

FASHIONSNAP 編集記者

伊藤真帆

Maho Ito

東京都出身。高校時代に編集者を志し、デザインもわかる編集者を目指して美術系専門学校でグラフィックおよびウェブデザインを学ぶ。ウェブメディア「ORICON STYLE(現・ORICON NEWS)」で編集を経験後、カナダでのワーキングホリデーを経て、2014年にレコオーランドに入社。ライフスタイル領域をメインに担当後、現在はシニアエディターとしてデスク業務のほか、セレクトショップや百貨店・商業施設、ECといった小売関連企業を中心に取材。企業のトップに取材する連載「トップに聞く」を担当している。趣味はボードゲーム。

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