和歌山のテキスタイルメーカー エイガールズ(A–GIRL’S)が、オリジナルブランド「マル(MALU)」を2026年春夏コレクションからリブランディングする。新たに「ビオトープ(BIOTOP)」のオリジナルレーベル「ヨー ビオトープ(ë BIOTOP)」でディレクターを務めた曽根英理菜をクリエイティブディレクターに起用。支持され続けているシームレスなインナーニットに加えてウェアも展開しラインナップを拡充するほか、卸売をスタートすることで、改めて幅広い層に長く親しまれるブランドを目指すという。
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Image by: エイガールズ
エイガールズは90年以上の歴史を持つ和歌山の老舗丸編みファクトリーを母体とし、ジャージーのスペシャリストとして知られる。クライアントには世界のトップブランドも名を連ね、2017年には、世界最大級の素材見本市「プルミエール・ヴィジョン(Première Vision)」で最も栄誉ある「PVアワードグランプリ(大賞)」を受賞した。
マルは2021年にエイガールズ取締役副社長でファブリックディレクターを務める山下装子が立ち上げた。長年にわたり同社が培ってきたジャージー開発の技術をもとに、高品質なコットンをはじめ、カシミヤやシルクといった選び抜かれた天然素材を使った女性のための服を展開し、究極の肌ざわりと着心地を実現。主にインナーウェアを主軸としてきた。自社工場で保有するヴィンテージの編み機で筒状に丸く編み上げる丸胴仕上げの製品を特徴とし、ブランド名の「マル」の由来にもなっている。
販路は当初、ポップアップと自社ECのみに限定。それでも品質を追求したものづくりを支持するコアなファンは多く、さまざまな商品展開の要望が届いていたが、ヴィンテージの編み機は一日に数メートルしか生地が編めないという生産性の問題があり、従来の機械では極細の糸は切れてしまうことから、期待に応えられない状況が続いていたという。
曽根はセレクトショップでプレス兼バイヤーを務めた後、2018年からビオトープのバイイングを担当。2021年にヨー ビオトープの前身で、同ブランド初となるランジェリーラインとして「ヨー ビオトープ ランジェリー(ë BIOTOP Lingerie、以下ヨー)」を立ち上げた。徹底的に着心地や品質を追求し、曽根の視点ならではのリアリティを落とし込んだアイテム群は販売開始後に即完売するなど、女性から根強い人気を得た。今年6月にヨーのディレクターを退任。現在はインナーブランドのディレクションやファッションブランドのコンサルティングを手掛けている。
エイガールズと曽根の出会いは約1年前。マルのリブランディングを模索する中で知り合ったという。曽根のものづくりに共感した山下は「どうすれば女性が美しく見えるか、どうすれば気分が上がるか、といったカッティングや色使いのセンスが素晴らしく、マルを一気に新しいレベルへ引き上げていただけると確信した」とし、クリエイティブディレクターを打診。曽根はファクトリーブランドで品質管理を徹底して保てる質の高さや、メイドインジャパンというという透明性のある情報を発信できる点に魅力を感じ、オファーを快諾した。「アパレルでは生産背景を全面的に打ち出すのが難しい場合もあるが、ここでは質の良さとデザイン性を担保しながら“最高の土俵”でものづくりができている」(曽根)。



Image by: エイガールズ
リブランディングでは、「より多くの人に届ける」といったこれまでの課題を解消するため、既存のインナーニットに加え、多様なニーズに応えられるアイテムとして、新たにロングスカートやワンピースといったウェアを投入。リブランディング前は毎シーズン8〜10型ほどの展開だったが、今季は31型に拡充した。曽根はインナーでありながら一枚で着ることも想定したデザインを意識し、過度なデザインを入れるのではなく、カッティングの美しさで魅力を引き出すことを重視したという。また、最高級コットン「Sea Island Cotton」や、インド南部でのみ栽培される希少なコットン「スビンコットン」を使用したシリーズが新登場。Tシャツは身丈のバランスを考慮し3サイズを展開するほか、メンズも着られる長袖のカットソーも揃えるなど、選択肢を増やした。カラーは、ブラックやホワイトといったベーシックカラーをベースに、肌に心地よくなじむ6色を用意する。価格帯は1万6000〜3万円程度。






タンクトップは1枚でも、重ねてレイヤリングしても楽しめるため、スタイリングの幅も広いという。
Image by: FASHIONSNAP
山下は「ウェアが加わったことで、コレクション全体が大きく変わった。よりシャープで洗練された印象になったと思うので、さらに多くの方に手に取っていただけるのではないか」と自信を覗かせる。実際に、展示会では“多色買い”する個人客もいたという。
まずは「具体的な数字目標よりも、まず新しいブランドの世界観がどのように世の中に根付いていくかを大切にしたい」(山下)とし、協力できる卸売パートナーを模索。将来的には直営店の展開にも意欲を示している。
なお、リブランディングに伴いロゴも刷新。ブランドロゴおよびパッケージデザインにはグラフィックデザイナーで美術家の田中義久を起用した。

ロゴデザインはエイガールズの確かな技術や歴史背景を骨格としているという。
Image by: FASHIONSNAP

身体とシームレスに繋がるような質感や美しい透明感をパッケージでも表現。
Image by: FASHIONSNAP
記者のひとこと
 エイガールズは、名だたるハイブランドにもテキスタイルを提供するメーカーです。その上質な生地を使った一着が3万円ほどで手に入るのは驚くほど良心的。実際に手に取り、試着してみると、肌にやわらかく馴染む着心地がとても心地よく、上質な素材に包まれることで身体だけでなく心の奥までも満たされていくのを確かに感じました。そして曽根氏がこだわったという精緻なカッティングは、いたって普通な自分の身体さえも、美しく引き立ててくれるように思いました。ちなみにマルで使われているテンセルシルクの服は自宅洗いが可能なのも嬉しいポイントの一つ。
 決して華美ではないミニマルなデザインですが、その中に光る上質で揺るぎない品格に魅力を感じ、気付けば3着購入。春夏が来るのが楽しみです。
最終更新日:
東京都出身。高校時代に編集者を志し、デザインもわかる編集者を目指して美術系専門学校でグラフィックおよびウェブデザインを学ぶ。ウェブメディア「ORICON STYLE(現・ORICON NEWS)」で編集を経験後、カナダでのワーキングホリデーを経て、2014年にレコオーランドに入社。ライフスタイル領域をメインに担当後、現在はシニアエディターとしてデスク業務のほか、セレクトショップや百貨店・商業施設、ECといった小売関連企業を中心に取材。企業のトップに取材する連載「トップに聞く」を担当している。趣味はボードゲーム。
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