
2026年秋冬コレクション
Image by: MIKIOSAKABE

2026年秋冬コレクション
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「ミキオサカベ(MIKIOSAKABE)」が、没入型のホラーアトラクションを運営する「オバケン」とタッグを組み、2026年秋冬コレクションをインスタレーション形式で発表した。会場となったのは、港区芝にひっそりと佇む築90年の古民家「凶遡 咽び家(きょうそ むせびや)」。特別お化け屋敷「ステインド(STAINED)」と題された同インスタレーションで、デザイナーの坂部三樹郎はなぜ「ホラー」という極端な演出手法をとったのか。
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2026年秋冬コレクションのテーマは「Hometown」。日常の中に生じるわずかなズレから立ち上がるラグジュアリー体験を軸に、忘れ去られた存在や混線した記憶、錯視の感覚を重ね合わせたという。会場は「台所」「和室」「保健室」など10の部屋に分かれ、それぞれでアメリカンホラーや「呪怨」をはじめとするジャパニーズホラーから着想を得て、恐怖で覆った世界観を表現した。

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前シーズンから引き続き「お化け」や「ホラー」をテーマに掲げている坂部だが、その理由はただ単に奇をてらうためではなく、「大人を最も容易にファンタジー(異世界)へ連れ出せる装置」と考えているからだ。「大人になると、純粋なファンタジーの世界には入り込みにくくなる。しかし、築90年の家屋が放つ不気味さのような『日常に潜むホラー』は、大人をすんなりと異世界へ連れて行ってくれる」と坂部。ミキオサカベがこれまでインスピレーション源としてきたアニメなどのサブカルチャーは、日常とエンターテインメントを繋ぎ、生活を豊かにする力を持っていると言える。ホラーもまたその延長線上にあり、「異世界へ行く体験」とファッションを混ぜ合わせることで、アートのような高尚さとは異なるベクトルで、人々の日常を楽しく揺さぶることができると信じているのだ。

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お化け屋敷という性質上、会場は極端に暗く、主役であるはずの衣服のディテールはほとんど見えない。ファッションショーとしては致命的とも言えるこの環境設定も、坂部の計算のうちだ。「服をはっきりと見せることが、自分のやりたいことを伝える最善の方法ではないと感じている」と坂部は明言する。明るい照明下で服の構造を見せるよりも、空間や人を含めた「世界観そのもの」を体感させる方が、結果的に人々の記憶や印象に深く刻まれるという。2026年秋冬コレクションでは、大正・昭和のレトロな要素、着物、昔の女子高生の制服などをミックスし、足元には雪駄のような新作フットウェアを合わせているが、それらの「かわいいテキスタイル」と「不気味な空間」のコントラストこそが、同氏が提示したかったデザインの全体像である。

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坂部はここしばらく、顧客との直接的なコミュニケーションを重視してきた。「ファッションの専門知識がなくても、着てみたら楽しい、その空間にいたら面白いという体験を提供したい」。今回のホラーアトラクションも、単なる新作発表ではなく、ファンにブランドを「体感」して深く好きになってもらうためのエンターテインメント装置として機能した。
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