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デジタル不在の視察は「無意味」 変化する売り場を知るために必要なこと

米国ではネットスーパーが年率11.57%で成長し、実店舗の0.62%を大きく引き離している。2028年には市場規模67.8兆円に達し、食品小売の成長を牽引するのは完全にデジタルへと移行した。にもかかわらず、この「本体」を体験しない流通視察は、もはや学びとして成立しない。

米国ではネットスーパーが年率11.57%で成長し、実店舗の0.62%を大きく引き離している。2028年には市場規模67.8兆円に達し、食品小売の成長を牽引するのは完全にデジタルへと移行した。にもかかわらず、この「本体」を体験しない流通視察は、もはや学びとして成立しない。

米国ではネットスーパーが年率11.57%で成長し、実店舗の0.62%を大きく引き離している。2028年には市場規模67.8兆円に達し、食品小売の成長を牽引するのは完全にデジタルへと移行した。にもかかわらず、この「本体」を体験しない流通視察は、もはや学びとして成立しない。

在米28年のアメリカン流通コンサルタント
激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ

デジタル不在の流通視察は「何も学んでいない」のと同じである

米国ネットスーパー市場はすでに不可逆の成長軌道に入っている。FMI(食品業界協会)とニールセンIQの最新レポートによれば、2028年にはオンライン食品販売は4,520億ドル(約67.8兆円)に達し、シェアは25.5%まで拡大する見通しである。

この規模は日本企業で例えればトヨタの売上(約50兆円)を上回る水準であり、もはや「新しいチャネル」ではなく、産業そのものを塗り替える主戦場である。

さらに重要なのは成長率だ。オンラインは年率11.57%で成長する一方、実店舗はわずか0.62%にとどまる。
つまり、成長のほぼすべてをデジタルが奪っているという現実である。

この前提に立つと、いま日本で行われている多くの流通視察の問題点は極めて明確になる。
それは、「最も成長している領域を一切体験しないまま帰ってきている」という致命的な欠陥である。

「見る視察」はすでに終わっている

ある米国視察レポートを見ても、その内容は極めて真面目である。店舗を巡り、売場を観察し、商品や価格、オペレーションを分析している。しかし、そのレポートの冒頭にはこう書かれている。

「視察内容から今すぐに結論を導けるものではない」

これは正直であるが、同時に本質を突いている。
なぜ結論が出ないのか。答えは単純である。見ている対象が“本体ではない”からだ

実際にレポートの中でも、こうした気づきは断片的に出ている。
店内ではアプリ利用は限定的であり、主戦場は店外のPickupやデリバリーであると記されている。

ここまでは正しい。
しかし問題は、その先に進んでいないことだ。

では、そのPickupやデリバリーを実際に注文したのか。
そのオペレーションを自分の手で体験したのか。
そのアプリの設計思想を検証したのか。

答えはNOである。

だから結論が出ない。
当たり前である。本体に触れていないのだから

売場はすでに「UI」に過ぎない

米国小売の構造はすでに変わっている。
売場は中心ではない。結果である。

アプリで注文が入り、ピッカーが動き、店舗は出荷拠点として機能する。
レポートでも「店内は顧客よりピッカーが多い」という現象に衝撃を受けている。

これは重要な示唆だ。
店舗は「買う場所」から「出荷拠点」に変わったということだ

しかし、この変化を本当に理解するには、
ただピッカーを見るだけでは足りない。

実際に注文し、
実際に受け取り、
実際に時間指定し、
実際に代替提案を体験しなければならない。

つまり、体験しなければ理解できない構造に変わっている

それにもかかわらず、多くの視察は依然として「売場を見る」ことに終始している。
これは例えるなら、飛行機を見学して操縦を学んだつもりになるのと同じである

49.8万円でも67万円でも同じ構造――流通視察はなぜDXを学べないのか

米国の流通視察は数多く存在する。

ニューヨーク3泊5日で49.8万円、ラスベガス5泊7日で67万円といった価格帯が一般的であり、一見すると「手頃で効率的な学びの場」に見える。

しかし、この価格の中身を冷静に分解すると、そこには見逃せない構造的な問題がある。

結論から言えば、これらの視察はすべて“移動と見学にお金を払うモデル”であり、DXの本体には一切投資されていない。

まず49.8万円のニューヨーク視察を分解してみる。航空券が約20万~25万円、ホテルが8万~12万円、食事が3万~5万円、現地移動が3万~6万円、ガイドやコーディネーターが6万~10万円、さらに旅行会社のマージンが6万~10万円。この時点でほぼ全額が埋まる。

ラスベガスの67万円コースも同様であり、期間が長い分だけホテルや移動費が増えているだけで、構造は完全に同じである。

つまり、49.8万円でも67万円でも本質的な違いはない。お金の使い道が同じだからだ。その内訳は航空費、ホテル、バス移動、ガイド、手配費が大半を占める。

円安や米国の物価高(航空燃料やガソリン価格の高騰も)を考慮すると、お金のほとんどは移動と手配に消えているのが内実だ

では、最も重要な「デジタル体験」にいくら使われているのか。

答えはゼロである。

ネットスーパー注文体験もない。
カーブサイド・ピックアップもない。
デリバリー体験もない。
アプリ操作もない。
インストア・モードの確認もない。

これはもう明確だ。

成長の75%を担う領域に、1円も投資していない研修である

これで何を学ぶのか。

「なぜ日本が遅れるのか」が、そのまま体現されている

大人数視察という構造的な欠陥

さらに問題を悪化させているのが人数である。
30人、40人という規模での視察では何が起きるか。

スマホの画面は共有できない。
アプリの操作は見えない。
レジでのフィンテック体験もできない。

つまり、デジタルは完全に排除される

結果として何が残るか。

売場を見る。
写真を撮る。
感想を書く。

これで終わりである。

これは研修ではない。観光である

座学すらないという構造的問題

さらに深刻なのは、こうした視察の一部には座学すら存在しないことだ。
なぜか。コストがかかるからである。

ホテルの会議室を借り、講義を行い、ディスカッションを設計する。
これには追加コストが発生する。

だから削られる。

しかし、ここで決定的な問題が起きる。

構造を理解する場が完全に消える

見て、考えて、構造化する。
このプロセスがなければ、すべては断片で終わる。

結果として、レポートはこうなる。
「参考になった」「可能性を感じた」「今後検討したい」

つまり、何も決まらない

デジタル不在の視察は「無意味」である

米国小売はすでにオムニチャネルが前提である。
消費者の94%がオンラインと店舗を併用している。

この世界で「店舗だけを見る」ことに意味はない。

ネットスーパーを体験しない視察。
アプリを触らない研修。
オペレーションを理解しない分析。

これらはすべて共通している。

本体を見ていない

だから断言できる。

実店舗を見て回るだけの視察は、今や意味がない

結論:「自ら、変われ!」と言いながら変わらない視察の現実

これからの流通視察は明確に二つに分かれる、などと言うまでもない。
なぜなら、多くの視察はすでに“変わらない側”に立っているからだ。

ひとつは、
「自ら、変われ!」と掲げながら、売場を見て、写真を撮って、感想を書く視察である。
スローガンは立派だが、やっていることは何も変わっていない。
むしろ、変わらないことを確認しに行っているようにすら見える。

もうひとつは、
ネット注文し、DX体験し、デジタル構造を理解し、意思決定につなげる研修である。
こちらはスローガンを掲げる必要すらない。やっていること自体が変化だからだ。

本来であれば、この二つのどちらを選ぶかで結果が決まる、と言いたいところだが、現実は少し違う。
「変わろう」と言いながら、変わらない方を選び続ける。これが今の日本の流通視察である

同じ時間とお金を使って、
「写真」を持ち帰るのか、
それとも「設計図」を持ち帰るのか。

答えは分かっているはずなのに、行動は変わらない。
だからこそ、「自ら、変われ!」という言葉が、これほど皮肉に響くのだ。

そしてその間に、米国では何が起きているか。
ネットスーパーは実店舗の18倍の成長率で拡大し、売上はトヨタを超える規模へ向かっている。

変わらないことを選び続けた結果の差は、もはや“努力の差”ではない。構造の差である

「自ら、変われ!」と言うのは簡単だ。
難しいのは、本当に変わることである。

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です!

今回の記事は、「いまの流通視察は本当に学びになっているのか?」という本質に切り込んだ内容でした。

米国ではネットスーパーが67兆円規模へと拡大し、成長のほとんどをデジタルが握っています。

それにもかかわらず、日本の視察の多くは売場を見るだけで終わっている

このズレが、現場の理解を止めているのです。

実際、私の勉強会ではZoom越しにウォルマートのエクスプレスデリバリーをその場で注文してみせます。

すると参加者の方が一気に前のめりになる。

画面の向こうで「本当に今注文したんですか?」と空気が変わる瞬間があります。

売場の写真を何十枚見るよりも、1回の実注文の方が理解が深いのです。触れた人だけが構造を理解できる、そんな世界に変わっています。

売場を見るだけの視察は、設計図を見ずに完成した家の外観だけを眺めているようなものです。

どんなに立派でも、中の配管や構造は分かりません。だから結論も出ない。

逆にデジタルを体験すれば、一瞬で「なぜこうなっているのか」が腹落ちします。

結局のところ、今の流通は「見る」から「触る」へ進化しています。ここを外すと、どれだけお金をかけても学びは薄いままです。

次にアメリカに来たときは、ぜひ一緒に注文してみましょう。

見学ツアーから“買い物ツアー”に変わった瞬間、世界の見え方が一変しますよ。財布も一緒に軽くなりますが(笑)

最終更新日:

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