アマゾンナウに対抗するウォルマート・デポ、ネットスーパー最前線“地域密着型の小型物流拠点”

顧客の玄関先に届けられた日用品。ネットスーパーの超高速配送が運んでいるのは、商品ではなく「時間」そのものだ。

顧客の玄関先に届けられた日用品。ネットスーパーの超高速配送が運んでいるのは、商品ではなく「時間」そのものだ。

顧客の玄関先に届けられた日用品。ネットスーパーの超高速配送が運んでいるのは、商品ではなく「時間」そのものだ。

アマゾンが仕掛ける超高速配送への宣戦布告
アマゾンはウォルマートの強固な実店舗網に対抗するため、超高速配送の拡大に本腰を入れている。
生鮮食品や日用品などを最短30分で届けるアマゾン・ナウ(Amazon Now)を数十の主要都市で展開し、さらに全米各地で1時間および3時間配送サービスを強化している。
1時間配送の追加料金としてプライム会員に9.99ドル(約1500円)、非会員には19.99ドル(約3000円)を課してでも、「時間を売る」ビジネスモデルを推し進めている。
この猛追に対し、全米の95%の地域に3時間以内の配送網を構築しているウォルマートは、次なる一手として新たな物流拠点戦略を加速させている。
空き店舗を活用した次世代の物流拠点ウォルマート・デポ
ウォルマートがアマゾンの超高速配送に対抗する最強のカードとして展開しているのが、ウォルマート・デポ(Walmart Depot)と呼ばれる地域密着型の小型物流拠点である。
この施設は一般の買い物客には開放されておらず、ウォルマート独自の配達アプリであるスパーク(Spark)を利用するギグワーカー専用のフルフィルメントセンターとして機能している。
施設内には需要の高い日用品や食料品などの売れ筋商品のみが陳列され、冷蔵設備も備えられている。
外観にはウォルマートの看板すら掲げられておらず、まるで名もなき小型スーパーマーケットやドラッグストアのような作りとなっている。
広大なスーパーセンターが抱えるピッキングの課題を克服
ウォルマート・デポが設立された背景には、同社の主力であるスーパーセンターの構造的な課題がある。
通常、約18万平方フィートの売り場面積を持つスーパーセンターでは、配達員が広大な店内を歩き回り、一般の買い物客を避けながら商品をピッキングする必要があった。
これに対して、ウォルマート・デポの広さは約2万平方フィート(560坪)に抑えられている。
あるスパーク(Spark)の配達員は、巨大な店舗で5つの商品を集めるのに25分かかっていた作業が、デポを利用することでわずか5分に短縮されたと語っている。
一般客を排除し、商品のピックアップに特化することで、店内の混雑を解消し、配達スピードを劇的に向上させることがデポ最大の目的である。
これにより、一部の地域では注文から最短30分での配達が可能になると見込まれている。
撤退したドラッグストア跡地を狙うしたたかな出店戦略
このウォルマート・デポの展開において注目すべきは、その不動産戦略である。
ウォルマートは、経営破綻などで大量閉店が続くライトエイド(Rite Aid)やウォルグリーン(Walgreens)といったドラッグストアの空き店舗、さらにはグッドウィル(Goodwill)などのリサイクルショップの跡地を積極的に活用している。
すでにニュージャージー州カールスタット(Carlstadt)、アーカンソー州フェイエットビル(Fayetteville)、テキサス州ダラスの3カ所で稼働しているほか、ニューヨーク州ポキプシー(Poughkeepsie)やカリフォルニア州サンディエゴなど、全米各地で出店計画が進行中である。
出店にあたっては、商業施設内の独立した建物をターゲットとし、5年以下の短期リース契約を結ぶことで、実験的なパイロットプログラムとしての柔軟性を保っている。
アマゾン、インスタカート、ドアダッシュ、ウーバーイーツなどが入り乱れる超高速配送の主戦場において、ウォルマートは競合他社が手放した空き店舗を「物流のファストパス」へと変貌させ、地域のラストワンマイルを完全に掌握しようとしているのである。
日本でも最近、追加料金を支払ってラーメン店の行列を横目に進むような「時間を買う」タイパ消費が当たり前の光景になりつつあります。
しかし、沸騰するアメリカのネットスーパー最前線は、さらに深くアクセルを踏み込んでいます。
彼らがカートに詰め込んでいるのは、もはやオーガニックのトマトでも洗剤でもありません。無地の段ボールにパッキングされた「時間」そのものです。
顧客の玄関先までの「ラスト・ワン・マイル」という最終直線。ここをいかにマッハで駆け抜け、数十分で到達できるか。この極限のスピード競争を制する者だけが、今後の小売業の覇者として君臨します。
一般客を完全に締め出し、ギグワーカーたちが秒単位で商品をピックアップしていくウォルマート・デポの空間は、さながらコンマ数秒を削り出すF1のピットストップです。
ただ、巨額の投資をして構築したこの究極のスピードインフラですが、結局私たちが30分で受け取ったお菓子をかじりながら、浮いた時間でしていることといえば...(笑)
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