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美術館作品のイメージ

Image by: ©ATTA - Atelier Tsuyoshi Tane Architects

福島県富岡町に美術館建設、現代美術家 宮島達男がブルネロ クチネリでトークショー

芳之内史也

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Image by: ©ATTA - Atelier Tsuyoshi Tane Architects

 「ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)」が、東京・表参道店に構えるアートスペース「CASA CUCINELLI TOKYO」で、日本を代表する現代美術家 宮島達男によるアートプロジェクト「時の海 - 東北」を紹介する展覧会「INCONTRO CON L'ARTISTA アーティストとの出会い - 『時の海 - 東北』プロジェクト 現代美術家 宮島達男」を5月31日にスタートした。東日本大震災から15年目を迎えた今年、震災犠牲者への鎮魂と記憶の継承、そして未来へ思いを馳せる場として、福島県富岡町に美術館の建設を進めている宮島。開催に先立ち5月29日に行われたトークショーでは、宮島の表現の核である「デジタルカウンター」の思想から、福島県富岡町で進む美術館計画について語られた。

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 ブルネロ クチネリは2021年から、日本とイタリアの文化の架け橋として「アーティストとの出会い」と題したプロジェクトを継続している。またブランドとしても、震災5年目を迎えた2016年に創業者ブルネロ・クチネリ氏が仙台での復興シンポジウムで基調講演を行ったことを皮切りに、長期にわたり東北の復興サポートを続けている。

 宮島にとってイタリアは、1988年のヴェネツィア・ビエンナーレで国際デビューを果たした思い入れの深い地。代名詞であるLEDデジタルカウンターは、1から9まで数字が刻まれる状態を「生(ライフ)」、0で消灯する一瞬の暗闇を「死(デス)」と定義し、明滅が繰り返されるサイクルは、生死がセットになって永遠に続いていく仏法的な輪廻観を表したものだ。宮島は「0(ゼロ)」の概念について、6世紀のインドで生まれた本来の意味(サンスクリット語のシューニャ)に触れ、「無や空虚だけでなく、同時に無限という正反対の答えが共存するものだった」と解説。また、一人ひとりの存在に無駄はなく、すべてに敬意が払われるべきだという作品のメッセージが、ブルネロ クチネリが掲げる人間主義的な哲学とも深くリンクしていると語った。

宮島達男のLEDデジタルカウンター

 宮島の「あらゆるものと関係を結ぶ」という思想を象徴するのが、香川県の直島にある作品「Sea of Time '98」だ。アートに触れたことのない島民125人が自らLEDのスピードを設定したこのプロジェクトについて、「最初は不審がられたが、次第に島民が『私のLEDはここにある』と観光客に自慢げに解説しだすなど、彼らのプライドへと変化した。完全に向こうのものになり、今も家族のように愛されている」と、アートがコミュニティに深く介入することで生まれる変化の大きさを明かした。

 ブルネロ クチネリとの展覧会の核にある宮島の「時の海 - 東北」プロジェクトは、東日本大震災の記憶の風化を防ぐために2015年頃に構想された。震災当時、東北芸術工科大学の副学長として山形県で被災し、ボランティア活動も行った宮島だが、「自然の脅威に絶望し、当時は何もできなかったという思いが強くあった。さらに3〜4年経つと周囲が震災を忘れ去っていく。アーティストとして記憶を想起させるために何かできないか」という強い危機感がプロジェクトの原点になったという。

 「時の海 - 東北」プロジェクトでは、直島でのアプローチをさらに拡大。被災者を中心に、0歳から89歳までの3000人がワークショップに参加し、それぞれが命への願いを込めて設定した独自のスピードで動くLEDアートを制作している。「3000」という数字は仏教用語で全世界を意味し、世界中の人々にとって重要なテーマであることを示している。

 この巨大な作品を常設するため、宮島は福島県富岡町の海が見える土地に美術館の建設を進めている。建築デザインには、建築家の田根剛を起用。その土地に古くから佇んでいたかのような「祠(ほこら)」をイメージした建物(40メートル×22.5メートル)の中に作品が設置される予定だ。

 アートスペース「CASA CUCINELLI TOKYO」で開催されている「INCONTRO CON L'ARTISTA アーティストとの出会い - 『時の海 - 東北』プロジェクト 現代美術家 宮島達男」は5月31日から12月31日までの長期にわたって開催され、前期と後期で展示内容が入れ替わる。8月31日までの前期では、すべてユニークピースとなる4種類のドローイング作品「Life Face for Sea of Time - TOHOKU」が展示販売され、2011年3月11日の人々の想いや感情をとどめた貴重な表現に触れることができる。続く9月5日からの後期では、特別なマルチプルアート作品が披露される予定だ。

 宮島は「『時の海 - 東北』プロジェクトは記憶の継承だけでなく、命のことを考える場所。他者への想像力を育み、命に向き合う場所であってもらいたい」と語り、未来へと紡がれるアートの役割への誓いでトークを締めくくった。

最終更新日:

◾️「INCONTRO CON L'ARTISTA アーティストとの出会い - 『時の海 - 東北』プロジェクト 現代美術家 宮島達男」
会期:2026年5月31(日)~12月31日(⽊)
前期:5月31(日)~8月31日(月)
後期:9月5日(土)~12月31日(⽊)
※前期・後期で作品の入れ替えがあるため、9月1日 (火)~9月4日 (金)は休館。

FASHIONSNAP ディレクター

芳之内史也

Fumiya Yoshinouchi

1986年、愛媛県生まれ。立命館大学経営学部卒業後、レコオーランドに入社。東京を中心に、ミラノ、パリのファッションウィークを担当。国内若手デザイナーの発掘と育成をメディアのスタンスから行っている。2020年にはOTB主催「ITS 2020」でITS Press Choice Award審査員を、2019年から2023年までASIA FASHION COLLECTIONの審査員を務める。

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