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「社会の当たり前を疑い、自分なりの答えを提示する」 アンリアレイジ森永の講義をレポート

2023年秋冬コレクションで発表した、紫外線を浴びると模様が浮かび上がる服を紹介する森永邦彦デザイナー

Image by: ANREALAGE

2023年秋冬コレクションで発表した、紫外線を浴びると模様が浮かび上がる服を紹介する森永邦彦デザイナー

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2023年秋冬コレクションで発表した、紫外線を浴びると模様が浮かび上がる服を紹介する森永邦彦デザイナー

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 東京都が実施する育成プログラム「東京都若手デザイナー『パリ・ファッションショー』挑戦プロジェクト2027」の一環として、「アンリアレイジ(ANREALAGE)」のデザイナー森永邦彦による特別講義が開催された。

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 同プロジェクトは、ファッションコンクール「Next Fashion Designer of Tokyo(NFDT)」および「Sustainable Fashion Design Award(SFDA)」の2024年度受賞者17人を対象に、2027年1月に開催されるパリ・ファッションウィーク期間中のファッションショー出展を支援する育成プログラム。なお森永は、制作およびショー演出に関する指導・アドバイスを担当している。第1回となる今回の講義では、長年にわたりパリ・ファッションウィーク公式スケジュールでコレクションを発表してきた経験をもとに、ファッションウィークの仕組みからコレクション制作の考え方、パリで発表する意義まで幅広く語った。

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 講義の冒頭では、参加者が挑戦することになるパリ・ファッションウィークの概要について説明。公式カレンダーにはランウェイショー形式とプレゼンテーション形式の発表が組まれ、ウィメンズは約10日間にわたって世界中のブランドが最新コレクションを披露することや、デザイナーだけでなく、PR、演出家、会場制作、モデルキャスティング、ヘアメイク、スタイリスト、音楽制作など、多くの専門スタッフが連携して一つのコレクションを形にしていくことを解説した。

 続いて、自身がブランドを立ち上げた当初を振り返りながら、ブランドづくりにおいて最も重要なのは「常識を疑う視点」だと説明。森永は、アンリアレイジの立ち上げ当初を振り返り、資金や体制の問題からランウェイショーを開催できず、展示形式で発表を続けていたことを紹介。「ショーができないなら、展示だからこそできる表現を考えた」と語り、制約を弱みではなく創作の出発点として捉えてきた姿勢を説いた。

2010-2011年秋冬コレクション

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 その考え方を象徴する事例として、「体に合う服」という既成概念を問い直した初期コレクションを紹介。「誰にも似合わない服だからこそ、誰もが袖を通せる服になる」という発想から、球体や立方体、三角錐をモチーフにした、誰の身体にも完全にはフィットしない服を制作したと振り返った。また、「定規は正しい」という常識を覆すため、縦横比が異なるオリジナルの定規を制作し、その寸法だけでパターンやグラフィックを設計したコレクションや、約2000個の異なる小さなパーツを組み合わせたパッチワーク作品なども例に挙げながら、「社会の当たり前を疑い、それに対する自分なりの答えを提示することがブランドの個性になる」と自身の創作姿勢を伝えた。

 さらに森永は、コレクションは服単体で完結するものではなく、ショー全体でブランドの思想を伝えるメディアだと説明。「カラー(COLOR)」をテーマに、紫外線を浴びると白から様々な色に変わる服を発表した2013-14年秋冬コレクション2023年秋冬コレクションを例に、「ショー全体を起承転結で構成し、観客が少しずつ物語を理解していく流れを意識している」と説明。コンセプトと演出が一体となって初めてブランドのメッセージが伝わるとし、服だけでなく空間や演出を含めた総合的な表現の重要性を説いた。

アンリアレイジ2013-14年秋冬コレクション

アンリアレイジ2023年秋冬コレクション

Image by: Koji Hirano

 続いて、現在のファッションを取り巻く環境の変化についても言及した。スマートフォンやSNSの普及によってショーをリアルタイムで世界中へ発信できるようになったことを踏まえ、「画面では伝わらないもの」を追求すると同時に、「画面だからこそ伝わる表現」を生み出す発想も重要だと説明。アンリアレイジでは、会場でしか体験できない演出を大切にしながら、写真や動画として拡散された際にも新たな見え方が生まれる表現を追求してきたと話し、2016年春夏コレクションで発表した特定の角度からフラッシュを当てたときだけ柄が浮かび上がる衣服や観客にヘッドホンを配って音楽を聴かせる演出など、「その場にいる人」と「画面越しに見る人」で異なる体験が生まれるショーの事例を紹介した。

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 講義終盤では、「デザイナーとして創作とどう向き合うか」という根源的なテーマへと話が及んだ。森永は、「服で生きていこうと思うこと自体が、とても困難な道だ」と前置きしつつも、その困難から逃げずに歩み続けた先には「ファッションをやっていてよかったと思える世界が必ずある」と語った。さらに、「簡単に生きられる時代ではないからこそ、何に抗い、何を疑い、どう自分なりの答えを見つけていくか。そのプロセスそのものがデザインになる」と続け、デザインとは単なる造形ではなく、自らの価値観と向き合い、それを形にしていく営みだと位置づけた。そのうえで、「皆が良いと言っているものではなく、自分にしか見つけられていない美しいものを貫いてほしい」と参加者へ呼びかけ、流行や既存の価値観にとらわれず、自分だけの視点から新たな価値を提示し続ける重要性を強調。最後に「皆さんは未来をつくる側の人たちです」と語り、「新しい当たり前をつくることを目指してほしい」と締めくくった。

◾️質疑応答を紹介

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参加者

社会から“ずれた”表現を目指すとき、外してはいけない部分とのバランスはどう考えていますか?

社会全体のルールを壊すという発想ではなく、ファッションの中で共有されている“当たり前”に対して、どこに違和感や新しさを見出すかを意識しています。全部を崩すのではなくて、どこか一箇所に焦点を当てて“ずらすポイント”を決める。その代わり、それ以外の要素はあえてニュートラルに保つ設計を意識しています。意図的に残した部分をきちんと機能させることで、初めて“ずらし”が成立するという感覚です。

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森永

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参加者

表現に込めた意図や想いが伝わらない人がいることをどのように考えていますか?

まず前提として、「全く誰にも伝わらない表現」だけをしていては、ブランドとして成立しないと思っています。一方で、「最初からすべての人に正しく伝わる必要もない」とも考えています。服や表現というのは、一方的にメッセージを届けるというよりも、それを受け取った人との“対話”の中で成立していくものだと思っています。なので、意図や想いがそのままの形で伝わらないこと自体は、ある意味で自然なことでもあります。むしろ大事なのは、「少しでも何かが引っかかる人がいるかどうか」だと考えています。最初はごく少数でも、その人たちとの反応やフィードバックの積み重ねが、表現そのものを少しずつ変化させていく。実際、最初はほとんど理解されなかったものでも、時間をかけて続けていくことで“定番”になっていったものもあります。そういう意味で、伝わらなさは失敗ではなくて、時間軸の中に含まれているプロセスだと思っています。

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森永

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参加者

アート性の強い服とリアルクローズの関係をどのように考えていますか?

別物として線を引くのではなく、あくまでグラデーションとして捉えています。最初はアート性の強い表現に見える服でも、単発ではなく継続して発表していくことで、少しずつ日常に馴染んでいく可能性があると考えています。その際に重要なのは、最初から「着やすさ」だけを目指すのではなく、ある程度の違和感や扱いづらさも含めて提示し、それを受け手からのフィードバックとともに変化させていくことです。その結果として、時間をかけてリアルクローズとして成立するものもあれば、逆にその中間の状態のまま揺れ続けるものもあると思っています。

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森永

最終更新日:

菅原まい

Mai Sugawara

FASHIONSNAP 編集記者

2002年、東京都生まれ。青山学院大学総合文化政策学部卒業後、2025年に新卒でレコオーランドに入社。中学生の頃から編集者を志し、大学生時代は複数の編集部でインターンとして経験を積む。特技は空手。趣味は世界中の美味しそうなお店をGoogleマップに保存すること。圧倒的猫派で、狸サイズの茶トラと茶白を飼っている。

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