
Image by: トライオン

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ロサンゼルス・ドジャース 大谷翔平選手の活躍や、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の話題などもあり、特に国内の野球人気は高まりを見せている。日本野球機構(NPB)によると、2025年のプロ野球公式戦の入場者数は前年比1.3%増の2704万286人と、2年連続で過去最多を更新した。
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近年の野球の名シーンといえば、2023年のWBC決勝で大谷選手がラストバッターを三振に仕留め、グラブを投げたシーンを思い浮かべる人も多いだろう。日本の野球界には古くから「道具を大切に扱う」という文化があることもあり、当時SNSでは賛否両論の声が上がったが、野球グラブは硬いボールから手を保護するために丈夫な革で作られているため、投げられた程度では全く問題ないという。実は、日本にはそんなグラブの革を使ってユニークなオリジナルバッグを展開しているブランドがある。大阪を拠点に活動する「トライオン(TRION)」だ。
世界的メーカーのグラブ製造から、“憧れていた”オリジナルブランド設立
ブランドを手掛けるトライオンは、1968年に雑貨商社としてスタート。その後、大手スポーツブランドの野球グラブ製造を手掛けるOEM事業をメインとするビジネススタイルに転身し、現在ではラクロスやアイスホッケーのグラブ製造も請け負っている。1988年にフィリピン工場「トライフィル」、2007年にはベトナム工場「トライベト」を立ち上げ、グローバルな生産体制を構築している。

特に第二の祖業とも言える野球グラブの製造においては、世界で圧倒的なシェアを誇る。手掛けているのは野球ファンなら誰もが知る米国の大手スポーツ用品メーカーのグラブで、現在日本を含む全世界で展開されている同メーカーのレザーグラブのほぼ全てがトライオン製造だ。また、日本メーカーのグラブのOEMも担当している。
そんな同社がオリジナルバッグブランド「トライオン」を立ち上げたのは1998年のこと。元々、野球グラブ製造で培った設備や革、技術を転用し、1980年代末からバッグのOEM事業を営んでいた。しかし、2000年を待たずに主要な取引先が倒産。一度整えたフィリピンの製造ラインを止めるのは忍びないという現実的な問題に加え、「ずっとOEMをやっていたが、心のどこかでオリジナルブランドに憧れていた」という青木幹社長の思いもあり、自社ブランド設立へと踏み切った。

トライオン株式会社 青木幹社長
トライオンのモノづくりを象徴するモデルが、グラブ製造時に出る端切れ革を再利用した「パネルシリーズ」と、グラブそのものをデザインに落とし込んだ「ザ グラブシリーズ」だ。
「パネルシリーズ」は、ブランド立ち上げの原点となったライン。背景には「もったいない」という日本の伝統的な精神がある。グラブ製造では「ステアハイド」というタフさときめ細かさを備える革を30以上のパーツに分けて裁断し、それを組み立てることで1つの製品が完成するが、どうしても使われない革が出てくる。この余剰革を何とか有効活用できないかという思いから、パッチワークデザインのパネルシリーズが生まれた。価格帯はトートバッグで3万円前後。余剰革を使っているため材料費を抑えられる一方で、繊細なパッチワーク技術が求められるため、1つ作るのにかなりの手間がかかる。しかし、「面倒だとしても、余って捨ててしまう革を少しでも減らすことが大事。『手間を厭わない』ことに関してはどの会社にも負けない」と青木社長。

トライオン「パネルシリーズ」
もう一方の「ザ グラブシリーズ」は、グラブメーカーとしてのアイデンティティを前面に押し出した、よりストレートなデザインが特徴だ。グラブのウェブ(網)やバックシェル(背面)といったパーツをバッグのデザインに大胆に取り入れており、「できる限りリアルな野球グラブのサイズ感や作り方を踏襲してバッグに組み込んでいる」(青木社長)。ハイエンドな硬式グラブに使われるレザーを贅沢に使用しており、価格は3万円台後半が中心と同社の中では中〜高価格帯に位置するラインだ。

トライオン「ザ グラブシリーズ」
そのほか、同社はトライオンとは異なるコンセプトのブランド「トモエ(TOMOE)」も展開している。同ブランドはイッセイミヤケ出身の松村光をデザイナーに迎え、グラブ製造で培った革加工の技術を転用したミニマル意匠のバッグを提案。トライオンと比べて、「革本来の佇まいの美しさ」を打ち出すことに注力している。価格帯は2〜8万円。

トモエの代表的なバッグ「2WAYトート」
野球人気で売り上げ増、若年層へのアプローチ強化
野球人気の高まりも追い風となり、トライオンの売り上げはここ数年で1.5倍ほどに伸長。青木社長は、野球人気という外的要因に加え、「商品や販促といった自社の活動の質が向上したことによる相乗効果だ」と分析する。支持層は45歳以上が中心で、特に「ザ グラブシリーズ」は野球ファンからの支持が厚い。対照的に「パネルシリーズ」は、野球ファンに限らず、そのユニークなデザイン性から日常的に使うバッグとしてピックアップする顧客も多いという。
一方ブランドとして最大の課題は、認知度の低さだ。もともとあった大阪の店舗に加えて昨年4月に東京・日本橋に初の関東直営店をオープンさせ、関東2店舗目の出店も計画中だというが、「まだまだ皆様に知っていただけているとは言えない」と青木社長。現在読売ジャイアンツや阪神タイガースといった日本のプロ野球チームおよびMLB球団とのライセンスアイテムを販売しているほか、今後はプロ野球チームの本拠地がある主要都市を中心にポップアップストアを積極的に出店し、認知拡大を図る。

東京初の直営店「TRION 日本橋店」

阪神タイガースとのコラボアイテム
平日にも関わらずプロ球団の試合が連日数万人を動員し、客層も高齢者からZ世代まで幅広く獲得するなど「盤石」とも言えそうな野球ビジネスだが、実は将来的な不安もある。少子化や金銭的負担の大きさなどにより、競技人口が減少の一途を辿っているのだ。青木社長も「競技という面においては、野球は決して安泰とは言えない」と危機感を示す。
こうした状況に対して、「トライオンとしてやってみたいことは、かっこいい野球文化のイメージ作りの一役を担うこと」(青木社長)。現在30代以下の年齢層と親和性の高いアパレルブランドとのコラボレーション企画を走らせるなど、若年層へのアプローチを強化している。青木社長は「私世代のプロ野球選手はファッショナブルではない印象もあったが、近年ではファッションへの意識が高い選手もたくさんいらっしゃる。高校野球を見ても自由で爽やかなイメージの慶應義塾高等学校が甲子園で優勝したりと、今の野球界は変わりつつある気がします。古くから親しまれてきた野球というスポーツにまつわる文化をより良い形で未来につないでいくため、世代を超えて選ばれるブランドに成長していきたい」とコメントした。
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