
8月1日、約3,000人が集まったスピリット・ハロウィン旗艦店の開業日。長い行列など、本当にすごい熱気だ。店内は空き店舗に商品を並べるだけではなく、動く怪物、光、音、限定商品を組み合わせ、真夏の売場を行列のできる”劇場”へ変えている。
真夏にハロウィンで3,000人
地元紙によると8月1日午前9時、ニュージャージー州エッグハーバーの商業施設を約3,000人の行列が囲んだ。
目的はスピリット・ハロウィン(Spirit Halloween)の旗艦店(6725 Black Horse Pike Suite 26, Egg Harbor Township, NJ 08234)である。
真夏にもかかわらず、客はピエロやゾンビ、魔女の姿で集まり、午前10時の開店を待った。
ハロウィンは10月31日の行事ではない。米国の小売業では8月1日に始まる巨大商戦なのだ。
2,000人をスマホで整列
2026年の開業イベントでは、初めてデジタル登録システムを導入した。
事前登録枠の2,000人分は開業前に埋まり、登録客にはQRコードと入店順を示す番号が割り当てられた。
当日はQRコードを確認して番号入りストラップを渡し、約50人ずつ店内へ誘導した。未登録客にも2,001番以降を先着順で配布した。
以前は何日も前から泊まり込むファンがいたが、今回はキャンプや場所取りを禁止した。人気を抑えるのではなく、行列を予約・可視化し、安全に楽しめるイベントへ変えたのである。
20,000平方フィートの劇場
旗艦店は20,000平方フィート(約560坪)。
開店前にはフードトラック、音楽、ゲーム、フェイスペイント、景品を用意した。マスコットのジャック・ザ・リーパーは飛行船からパラシュートで降下した。
店内では、動く骸骨やピエロが突然話しかけ、照明、音響、動作を組み合わせて客を驚かせる。
2026年モデルには、周囲の会話を聞き取って反応するブルートゥース機能まで加わった。
ここで売っているのは仮装・コスプレ用品だけではない。売場へ入る前から始まる恐怖と高揚の体験である。
499.99ドルの商品が10分で完売
店頭限定の等身大アニマトロニクスは499.99ドル(約8万円)でも、開店から10分で完売した。
高さ6フィート6インチ(198.12cm)の商品を最初に確保したのはカナダから来た客だった。
他にも映画に登場する殺人鬼の等身大モデルやホラー仕様のテディベアが次々と売り切れた。
混乱を防ぐため、アニマトロニクスの購入は1人1点に制限されたのだ。
限定商品が来店目的となり、旗艦店の開業日が映画の封切りやコンサート初日のようになっているのも興味深い。
1,575店を短期間で立ち上げる
スピリット・ハロウィンは2026年、米国とカナダで過去最多となる1,575店を計画し、5万2,000人以上の季節従業員を採用する。
8月1日には約400店が先行開業し、残りも数週間かけて順次立ち上がる。
ところが営業期間は、ハロウィン終了直後までの約3カ月にすぎない。
一般のチェーンストアが年間営業する店舗を数年かけて増やすのに対し、同社は1,500店以上を出しては消すを毎年繰り返す。
スピリット・ハロウィンは、全店を毎年つくり直す「組み立て式チェーンストア」なのだ。
空き店舗を仕入れる
過去記事でも触れたように、同社は半径3~5マイル(約4.8~8.0キロメートル)に人口35,000人以上が住む商圏を狙う。
必要な床面積は5,000~50,000平方フィート(約141~1,405坪)である。
短期賃貸のため、家主は恒久テナントを探している期間にも賃料を得られる。
2026年はベッドバス&ビヨンド、メーシーズ、フォーエバー21、ビッグ・ロッツ、パーティーシティ、ジョアン、ドラッグストアなどの跡へ出店するという。
一般の小売企業が避ける空き店舗こそ、スピリット・ハロウィンにとって最大の店舗供給網である。
パーティーシティの退場が追い風
かつての競合だったパーティーシティは経営破綻し、季節店のハロウィン・シティも市場から消えた。
ジョアンなどの大型倒産も、仮装、手芸、装飾、パーティー用品の需要と空き店舗を同時に残した。
全米の小売空室率は4.3%と低い。それでも同社は、業態も面積も異なる空き箱を短期間で共通の売場へ変換できる。
競合の閉店は需要の消滅ではない。買物客と物件が、新しい運営者を待っている状態なのだ。
季節をクリスマスへ伸ばす
ハロウィンで培った短期出店のノウハウは、スピリット・クリスマス(Spirit Christmas)にも移されている。
2024年の試験展開から拡大し、クリスマス装飾、ギフト、衣装、写真撮影などを扱う季節店を30カ所へ増やす計画だ。
ハロウィン店舗を撤収して終わるのではなく、別の空き箱で次の季節を立ち上げる。商品を通年化するのではなく、店舗を季節ごとに着替えさせる発想である。
空き箱を行列のできる劇場へ
スピリット・ハロウィンの強さは、1,575店という出店数だけではない。
空き店舗、期間限定商品、動画で発信するファン、デジタル整理券、体験型売場を一つの開業イベントへまとめる力にある。
常設店は「いつでも行ける」が、季節店は「今しか行けない」。この制約が、来店を先延ばしにさせない。
閉店跡へ商品を並べただけならポップアップストアだが、3,000人が開幕を待つなら、それは小売店というより公演である。
前のテナントの看板が消えた空き店舗も、怪物たちに見つかれば、今年も客の叫び声が響く売場へよみがえるのだ。
本日のレートは1ドル=160円。
スピリット・ハロウィンの旗艦店を取材した動画を見ると、約3,000人が集まった理由がよく分かります。
店内には商品棚が並んでいるだけではなく、巨大なアニマトロニクスが動き、光や音で客を驚かせる仕掛けが連続しています。
買物というより、入場無料のお化け屋敷に物販を組み込んだ劇場です。
開業日には事前登録した2,000人に加えて一般客も並び、499.99ドル(約8万円)の等身大商品が10分で完売しました。
2026年は過去最多の1,575店を短期間で展開しますが、その多くは倒産・閉店したチェーンの空き店舗です(旗艦店はサーキットシティの跡地ですね)。
つまり同社は、誰も来なくなった店舗を、客が開店前から待つ舞台へ変えるプロなのです。
常設店の「いつでも買える」とは逆に、「今しか体験できない」で人を動かします。
前のテナントにとっては幽霊・訳あり物件(一部は事故物件も!?)でも、スピリット・ハロウィンには怪物まで働いてくれる優良物件なのです。
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