ADVERTISING

ギャップ復活、既存店10%増へ変えたキャッツアイの「踊るデニム」

在米28年のアメリカン流通コンサルタント
激しくウォルマートなアメリカ小売業ブログ

GAPの「ベター・イン・デニム(Better in Denim)」公式動画。キャッツアイの6人がケリスの「ミルクシェイク」に合わせて踊り、デニムを“着る商品”から“参加したくなる文化”へ変えた。累計5億回超の再生、80億インプレッション、デニム売上2桁増を生み、直近のGAP既存店売上高10%増へつながった復活劇の起点である。

5000万回どころではなかった 

GAPが2025年8月に公開したキャッツアイ(KATSEYE)の「ベター・イン・デニム(Better in Denim)」は、公開直後の5000万回再生を通過点に、最終的には各媒体で5億回超、メディア露出では80億インプレッションを生み出した。

デニム売上は2桁増となり、GAPは全米の成人向けデニム市場で前年の8位から6位へ浮上した。

Z世代の熱狂が再生回数だけで終わらず、商品、客数、既存店売上高へ変換されたのである。

GAP既存店売上高10%増 

GAPの2026年度第2四半期売上高は前年同期比9%増の8億4400万ドル(約1350億円)、既存店売上高は10%増となった。

デニムだけでなく、フリース、子供服、ベビー用品まで伸び、客数、販売数量、平均販売単価がそろって上昇した。

動画がバズった翌四半期だけの花火ではない。キャッツアイ以降も、文化と商品を結びつける経営が売場の数字を押し上げ続けている。

利益は関税還付を差し引いて見る

粗利益率は52.8%、営業利益は6億7600万ドル(約1082億円)、純利益は5億100万ドル(約802億円)となった。

しかし国際緊急経済権限法に基づく関税の純回収効果が、売上原価を4億1700万ドル(約667億円)押し下げている。

これを除いた調整後粗利益率は41.4%、調整後営業利益は2億5900万ドル(約414億円)、調整後純利益は1億9000万ドル(約304億円)である。

復活の実力を見るなら、派手な利益額よりGAPの既存店10%増と調整後利益率を重視すべきだ。

バービーを蘇らせた男 

最新ニュース動画は、GAPがかつて企業価値430億ドル(約6兆8800億円)に達し、1日2店を開く勢いから、約20年間にわたり文化的な存在感を失った過程を描く。

再建を託されたのは、バービー復活を指揮したリチャード・ディクソン(Richard Dickson)CEOである。

彼が持ち込んだのは、値下げで服を処分する発想ではなく、商品と音楽、ダンス、スターを一体化する「ファッションテインメント」である。

ブランドは売れ残りを安くしても復活しない。もう一度、語りたくなる存在にする必要があるのだ。

広告から参加型メディアへ

キャッツアイの成功は、有名人を起用しただけでは説明できない。

6人の異なる個性、ケリスの楽曲「ミルクシェイク」、真似したくなる振り付け、誰でも着られるデニムを1本の物語にした。

視聴者は広告を見る客ではなく、振り付けを再現し、投稿し、拡散する販売員になった。

GAPは広告枠を買う代わりに、Z世代のスマートフォンを数億台のデジタル売場へ変えたのである。

店舗は動画の受取場所になる 

デジタル販売は1%減だったものの、全社売上高の35%を占める。

さらにGAPとGAPファクトリー(Gap Factory)は8月、ドアダッシュで全米の対象店舗からオンデマンド配送を始めた。

学校が始まる直前に「去年の服が入らない」と気づいても、アプリから当日配送できる。

SNSで発見し、ECで比較し、店舗在庫から即配する。

バズを売上へ変えるには、動画の裏側に在庫、店舗、決済、ラストワンマイルが必要なのだ。

デニムをバッグへ翻訳する 

GAPは9月8日、初の本格的なバッグ事業となるギャップバッグ(GapBag)を発売する。

元コーチのリード・クラッコフ(Reed Krakoff)が、5ポケットのデニムやロゴ入りフーディーをトートバッグへ再設計した。

主力価格は29.95~148ドル(約4800~2万3700円)で、限定品は498ドル(約7万9700円)。

衣料品で取り戻した文化的な熱量を、高粗利益のアクセサリーへ横展開する。デニム1本の復活を、次のカテゴリーを生むブランド資産へ変えようとしている。

復活とは懐古ではない 

GAPが再生したのは、1990年代のカーキパンツ広告をそのまま再現したからではない。

音楽とダンスという原点を、TikTok時代の参加型コンテンツ、オンデマンド配送、店舗在庫、バッグ事業へ接続したからである。

日本の流通業者が学ぶべきはキャッツアイの起用法ではない。

自社の過去にある強みを、今の顧客が使うスマートフォンと購買導線へ翻訳できるかである。

本日のレート1ドル=160円。

⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です!

キャッツアイの「ベター・イン・デニム」は5億回超の再生と80億インプレッションを生み、デニム売上を2桁増へ押し上げました。

しかしGAPは同じ成功のコピーを作っていません。

最新作「デニム・オン・ユア・オウン(Denim on your own.)」では、歌手マルコム・トッドと俳優インデ・ナバレッテを起用。

ロビンの名曲を再解釈し、一糸乱れぬ群舞ではなく、白い空間で各人が自分らしく動く映像に変えました。

春にはプエルトリコ出身のヤング・ミコと26人のラテンダンサーによる、初のスペイン語キャンペーンも展開しています。

GAPはデニムやスウェットを先に売ろうとせず、音楽、若手スター、多様な文化から「参加したくなる場」を作っているのです。

その結果、直近のGAP既存店売上高は10%増。動画はCMというより、スマートフォンの中に開いた踊る旗艦店です。

ただし試着室で踊りすぎると、次に必要なのはデニムではなく湿布かもしれません。

最終更新日:

ADVERTISING

現在の人気記事

NEWS LETTERニュースレター

人気のお買いモノ記事

公式SNSアカウント