


26年も折り返しを迎えました。上半期のトレンドを振り返るなかで、特徴的だったキーワードの一つが「スピ活」です。
街歩きと同じ
スピ活とは、神社参拝やパワースポット巡り、お守りやお札モチーフのアイテムを取り入れるなど、スピリチュアルな要素を日常の延長線上で楽しむ行動を指します。ここで注目すべきは、必ずしもスピリチュアルな思想そのものへの関心が高まっているわけではないという点です。
若者インタビューでは、「推しのコンサートに当選しますように」「友達と仲直りできますように」といった動機で行っているという声が多く聞かれました。将来の大きな願いよりも、日常のなかで生まれる小さな不安や心配ごとに向き合い、自分の心を整えるための行動として広がっていることが分かります。
具体的な行動としては、休日に友人と神社やパワースポットへ出かけたり、お守りや御朱印帳を集めたりするほか、境内の落ち着いた雰囲気を楽しんだり、写真映えするスポットで撮影したりすることが挙げられます。街歩きやカフェ巡りと同じような感覚で楽しめるレジャーとして受け入れられているのです。
関連消費も広がっています。通販でパワーストーンを組み合わせてオリジナルブレスレットを作ったり、験担ぎとして駄菓子の「ビッグカツ」を購入したりと、スピ活にまつわる消費行動は多岐にわたります。ファッション雑貨やアクセサリー、推し活グッズとの親和性も高く、従来のスピリチュアルな需要とは異なる新たな市場として広がりを見せています。
このように「スピ活」は、高額な商品やサービスに依存するのではなく、身近で手の届く範囲のアイテムを取り入れながら、自分なりに楽しむ気軽さが特徴的です。私たちはこうした動きを「ファッションスピ活」と呼んでいます。
SNSに戻るため
背景を考える上で、SNS上で目にする「ドパガキ」も見逃せません。これは「ドーパミン」と「ガキ(子供)」を組み合わせたネットスラングで、ショート動画やゲームなど刺激の強いコンテンツを次々と消費し、より強い刺激を求めてしまう状態の若年層を揶揄(やゆ)する際に使われています。
気づけば長時間SNSを見続けてしまうという状況に疲れや違和感を抱いているのでしょうか。最近では若者自身も自虐的に自身を「ドパガキ」と表現している投稿が見られます。
その点でスピ活は、一時的にSNSから距離を置くきっかけにもなります。そして心身をリフレッシュした後、その体験を写真や動画として投稿し、再びSNS上で交流を楽しむ。スピ活は、デジタルと距離を置くための行動でありながら、同時にSNSの世界へ戻るための入り口にもなっているようです。
強い刺激を求め続けるのではなく、時に立ち止まって気持ちを整える。その手段として、若者たちはスピリチュアルな要素を自分たちなりに軽やかに取り入れています。
つまり、スピ活の広がりは、若者たちが刺激を求め続けるだけではなく、自分自身を整える時間や体験にも価値を見いだし始めていることの表れと言えるでしょう。こうした〝整える価値〟への共感は、今後ますます重要になっていくのではないでしょうか。

長田麻衣(おさだ・まい) SHIBUYA109lab.所長。毎月200人の若者と接する毎日を過ごしている。著書に『ほめられると気まずすぎてしぬZ世代、ほめて伸ばそうと必死になる上司世代』(徳間書店)。
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