【おウチ映画館が急成長】AMC宅配50%増、ポップコーンがスクリーンを飛び出した

ウーバーイーツに表示されたAMCシアターズの宅配メニュー。映画館のポップコーンがスマホから注文でき、ラージサイズから持ち帰り専用のメガバッグまで自宅へ届く。スクリーンを稼働させなくても厨房が売上を生む「おウチ映画館」市場である。

ウーバーイーツに表示されたAMCシアターズの宅配メニュー。映画館のポップコーンがスマホから注文でき、ラージサイズから持ち帰り専用のメガバッグまで自宅へ届く。スクリーンを稼働させなくても厨房が売上を生む「おウチ映画館」市場である。

ウーバーイーツに表示されたAMCシアターズの宅配メニュー。映画館のポップコーンがスマホから注文でき、ラージサイズから持ち帰り専用のメガバッグまで自宅へ届く。スクリーンを稼働させなくても厨房が売上を生む「おウチ映画館」市場である。

映画館がスクリーンを飛び出した
米映画館最大手のAMCシアターズ(AMC Theatres)で、フードデリバリーが新たな収益源に育っている。
2026年のデリバリー売上は前年同期比で約50%増加し、すでに数百万ドル規模に達した。
売れているのは映画のチケットではない。主役は映画館の香りまで思い出させるポップコーンである。
AMCは映画館を、上映作品がなくても注文が入る「宅配厨房」へ変え始めたのだ。
ポップコーンが興行リスクを薄める
映画館の業績は、ヒット作品の有無や公開延期に左右される。
一方、ポップコーンは上映スケジュールと無関係に作って売れるうえ、利益率も高い。
AMCはウーバーイーツ、ドアダッシュ、グラブハブ(Grubhub)を通じ、ポップコーンだけでなくチキン、フライドポテト、ピザなども届けている。
持ち帰り専用のメガバッグ(MegaBag)は通常のラージサイズの3倍で、バター風味のトッピングも別添えにする。家庭で食べる場面から逆算した商品設計である。
過去最高決算を支える食の力
AMCの2026年第2四半期売上高は前年同期比14.2%増の15億9,670万ドル(約2,555億円)。
本業の収益力を示す調整後EBITDAは70%増の3億2,140万ドル(約514億円)となり、いずれも同社106年の歴史で四半期最高を記録した。
デリバリーだけで達成した数字ではないものの、飲食売上は入場料とは異なる成長エンジンになっている。
座席を埋める商売に、商圏内の住宅へ食べ物を運ぶ商売が重なったのである。
日本でも始まった映画館の出前
TOHOシネマズも2026年1月5日、新宿、渋谷、なんばの3劇場からウーバーイーツによるポップコーン販売を開始した。
パーティーポップは1,350円、ラージサイズの約4倍となるパーティーポップダブルは2,560円である。
その後は対象を全国約34劇場へ広げ、バターフレーバーオイルのミニボトルも付けている。
映画館固有の味を、映画館の外でも成立する商品へ変えたのだ。
自宅に映画館を組み立てる消費者
現在は大画面テレビやプロジェクターに、サウンドバー、間接照明、リクライニングチェア、クッション、毛布を組み合わせれば、家庭にも小さな映画館を作れる。
そこへ映画館のポップコーンやピザ、ドリンクが届けば、“おうち映画”は映像視聴から1つの体験へ変わる。
テレビを売るベストバイ、家具を扱う量販店、食品スーパー、宅配事業者まで参加できる市場である。
画面を映す機材と、雰囲気をつくる食べ物やリラックスグッズが、異業種のクロスセルを生む。
競合は隣の映画館ではない
AMCにとっての競合は別のシネコンだけではなく、動画配信サービス、外食宅配、スーパーの惣菜、家電量販店が提案するホームシアターである。
そこで劇場へ客を呼び戻すだけでなく、客が自宅を選んだ日にも売上を取る。
顧客が来館しなければ売上ゼロだった構造を、劇場の厨房とブランドを住宅商圏へ開放することで変えている。
これは映画館版のオムニチャネルである。
感動する売場だけでは足りない
日本の流通業者は、店内演出や接客を磨けば客は戻ると考えがちである。
しかし、デリバリーの便利さを知った消費者は、感動的な売場があるという理由だけでは店へ来ない。
雨の日、疲れた夜、子どもから離れられない時間には、店舗体験より玄関到着が優先される。
リアル店舗の価値を高めることと、来店しない顧客から売上を得ることは、どちらか一方を選ぶ話ではない。
店舗を商圏へ配信せよ
映画館が宅配厨房になれるなら、スーパーのベーカリー、デリ、寿司、店内レストランも、売場の付属部門にとどまる必要はない。
商品名、包装、注文受付、調理能力、配達範囲を再設計すれば、閉店後や閑散時間にも店の味を売れる。
店舗の未来とは、客が来るのを待つ立派な箱ではない。店舗でしか作れない価値を、店舗の外へ届け続ける発信基地なのである。
本日のレート1ドル=160円。
私が留学生として渡米した1985年、米国で初めて見た映画は大ヒット中の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」でした。
スクリーン以上に強烈だったのが観客です。隣の男性はバケツほどの容器からポップコーンを鷲掴みにしてむしゃむしゃ。飲み物も金魚が泳げそうなサイズでした。
物語が盛り上がるたびに客席から歓声が飛び、主人公のバンド・オーディションで審査員役のヒューイ・ルイスが現れると、隣の男性は「How are you doing, Huey!」と旧友のようにスクリーンへ話しかけたのです。
静かに鑑賞する日本では味わえなかった、客席まで映画に参加する臨場感でした。
その象徴だったポップコーンが今、AMCではウーバーイーツやドアダッシュに乗り、デリバリー売上を約50%伸ばしています。
TOHOシネマズも宅配を始めました。大画面やサウンドバーに映画館の味が届けば、家庭そのものが上映会場になります。
映画館は客を待つ箱から、体験を家庭へ配達する厨房へ変わったのです。いずれ自宅でスクリーンに話しかければ、リアルタイムでヒューイから返事が来ますね、AIで。
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