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オーダーメイドのキャップ製作から生まれた坂本龍一との出会い　木島と坂本の関わりは、坂本がキジマタカユキのキャップを愛用していたことからスタート。2012年に坂本が還暦を迎えた際は、事務所スタッフからの依頼でキャップを製作した。木島は坂本が自身が製作したキャップを愛用していることに喜びを感じながらも直接の面識はなかったが、2019年8月に坂本から完全オーダーメイドでキャップ製作の依頼があったことで本格的な交流に発展した。　キャップのオーダーメイドにあたり坂本は、代官山に構える木島のアトリエを訪れたが、そこでのやりとりは日常会話のみ。「ニューヨークのレストランにも被っていけるようなシックなワークキャップ」という要望以外に、デザインやディテールについては一切の指定がなかった。木島は、それまで坂本が被っていたというノーブランドのワークキャップをベースに、木島自身の坂本に対する解釈を織り交ぜながら製作。目の詰まったコットン100％の上品な生地に洗い加工を施すことで気取りすぎない印象に仕上げ、パターンなどを微妙に変えた複数型を納品した。「ディテールを一任されたことで、坂本さんからの期待やリスペクトを感じて創作意欲が湧き上がった。お顔に合わせて幅やクラウン（帽子上部）の高さをミリ単位で調整したほか、パターンも何度も再考して自分の力を全て注ぎ込んで完成させた」（木島）と語るオーダーメイドキャップを坂本は非常に気に入り、公の場に立つ時だけでなく、病床でも被っていたほどだったという。果たせなかった約束を胸に、木島がコラボレーションに込めた想い　オーダーメイドキャップを坂本に納品して初めての冬、木島のもとに坂本から再度依頼が届いた。「ニューヨークの冬は寒いから、ワークキャップに耳当てがついた帽子が欲しい」。木島は喜んで引き受け、すぐにサンプルを製作して送ったというが、坂本からは「なんだかイメージと違う」というフィードバックが返ってきた。「どんな帽子に仕上げようかと考えているうちにコロナ禍になり、落ち着いてきた頃には坂本さんが体調を崩されてしまった。そしてとうとう帽子が完成しないままお別れすることになってしまい、それが本当に心残りだった」（木島）。　依頼を果たせなかった無念を胸に、木島は2024年秋冬コレクションを坂本のアルバム「async」から着想を得て製作することを決意。「勝手にテーマにさせていただくのは心苦しい」との気持ちから、坂本のパートナーに許諾を得るためコンタクトをとったところ、逆に坂本の命日である3月28日に合わせてキャップを作ってほしいという旨の依頼を受け、今回のコラボが実現したという。コラボキャップは、第1弾オーダーメイドで納品した複数点の中で坂本が特に気に入っていた1型と全く同じ素材、パターンで製作した。　長い時間を共にした訳ではないが、アトリエでのやり取りを振り返り、木島は坂本のことを「どこかきゅんとする一面がある人」と紹介する。「オーダーした帽子をお渡した時に『この髪と眼鏡で坂本龍一だとバレちゃうけど、帽子を被って眼鏡を外せば山手線にだって乗れるんだよ』と言いながら恵比寿駅に向かって歩いていったのが印象的だった。クールなイメージだけど、お茶目な一面も持ち合わせていた」。　木島はコラボキャップの発売に際し、「それぞれの想いで帽子に向き合ってほしい」と語る。毎日被って自身の生活に馴染ませるもよし、ここぞの場面で使うもよし。「どんな使い方であっても、この帽子が着用する人にとって坂本龍一という人物を思い出すきっかけになれば嬉しい」と話した。

KIJIMA TAKAYUKI

Fashion

果たせなかった約束を胸に、キジマタカユキと坂本龍一のコラボの契機になった「心残り」とは

コレクション

　「キジマタカユキ（KIJIMA TAKAYUKI）」の2024年秋冬コレクション。テーマは「async」。

2024 Autumn Winter

　新作コラボは、今年9月にブランド創設10周年を迎えたキジマ タカユキが10月連続でコラボアイテムを展開する企画「Thanks and then.」の第5弾として製作。元々アーツ＆サイエンスのインラインで展開されていたバッグをベースに、生地はヨーロッパの古⽣地をもとにアレンジされた同ブランド定番のリネンキャンバスを採用し、ハンドルには牛革を使用した。バッグには、ハットを携帯できるホルダーや、ワンショルダーストラップが付属。いずれも取り外しが可能で、ホルダーのみの持ち運びもできる。カラーはベージュとブラックの2色を用意する。

キジマ タカユキとアーツ＆サイエンスがコラボ　ハットの持ち運びが可能なバッグを発売

インサイド

TEATORA

Tabio

【2023年ベストバイ】美容室「アルバム」創業者　槙野光昭が今年買って良かったモノ

　コラボアイテムは、9月にブランド創設10周年を迎えたキジマ タカユキが10月連続でコラボアイテムを展開する企画「Thanks and then.」の第4弾として製作。キジマ タカユキ直営店で使用しているハットスタンドとマドエレンのシグネチャーであるポプリケースをドッキングしたデザインに仕上げた。マドエレンの香りを染み込ませたアンバーとチャージオイルが付属し、ポプリケースとハットスタンドの2wayで使用できる。価格は税込5万5000円。

キジマ タカユキがマドエレンとのコラボハットスタンドを発売、香りを染み込ませたアンバーが付属

　フェルトハット「Leather patch felt beanie」は、熟練の職人が一点一点手作業でニット帽のようなシルエットに仕上げた。取り扱い店舗ごとにカラーが異なり、全店舗ではブラックを、キジマタカユキではパープル、ブルー、ブラウンを、MIDWESTではオレンジを、LES COUREURS HOMMEではレッドを、st companyではベージュとを展開する。　発売にあわせて、全店舗でフロントにあしらったキジマタカユキのイニシャル「K」のレザーパッチが特徴のタスマニアウールのニットキャップ「Leather patch wool beanie」（ブラック／グレー、1万7600円）もラインナップする。

doublet

ダブレットがキジマ タカユキとコラボレーション　フェルトハット7色展開

　「ピース de ミライ」は、2022年3月に実施したアップサイクルプロジェクト「デニム de ミライ」の第2弾。「新しいファッションを発信したい、ファッションの高揚感を届けたい」という想いを未来に繋げていくため、ファッション業界の課題に企業の枠を超えて向き合い、業界全体が進化していくことを目指している。　今回は、「デニム de ミライ」で再利用した「リーバイス（Levi's®）」のユーズドストックデニム生地のほか、イギリスのテキスタイルブランド「リバティ・ファブリックス（LIBERTY FABRICS）」、デンマークのテキスタイルメーカー「クヴァドラ（Kvadrat）」、フィンランドの「マリメッコ（Marimekko）」、国内有数の織物産地 尾州の生地といった5種類のテキスタイルをアップサイクル。様々な生地を生産する上でどうしても生まれてしまう残反に新たな価値を吹き込むため、約50のブランド・アーティストがプロジェクトに参画した。　リーバイスを使用した商品では、第1弾で人気を集めた人気作家「GRAPE BRAIN」のソフビフィギュアのほか、袖や身頃などのパーツを異なる時代のデニムで再構築した「アンリアレイジ（ANREALAGE）」のジャケット、ダメージ加工を施した「ゴールデン グース（Golden Goose）」のスニーカーなどが登場。リバティ・ファブリックスの残反を使用した商品では、ライナーにアイコニックな柄を配した「サンヨーコート（SANYOCOAT）」のトレンチコートなどを展開する。そのほか、「キジマ タカユキ（KIJIMA TAKAYUKI）」や「チカ キサダ（Chika Kisada）」といったデザイナーズブランドが、クヴァドラの生地を使い参画。尾州産地の生地のカテゴリーでは、ランジェリーブランド「ユエ（Yue）」やシューズブランド「エムビーティー（MBT）」のファッションライン「マサイベアフットテクノロジー（Masai Barefoot Technology）」などが尾州産地のツイード生地を用いた限定アイテムを発売する。　また、三越伊勢丹の情報を提供する専用アプリ「三越伊勢丹アプリ」では、他店に先んじて伊勢丹新宿店の店舗ページがアップデート。本館およびメンズ館で10月17日まで開催している90周年記念企画など、各種催事の情報が確認できるようになっている。

Chika Kisada

Marimekko

Levi's®

三越伊勢丹がサステナプロジェクトをスタート、リーバイスのユーズドストックやマリメッコの残反を再利用

　第1弾のアンダーカバーとのコラボアイテムは、両者のコラボハットをコラージュされたグラフィックをプリントしたTシャツ（1万5400円）。グラフィックはデザイナー髙橋盾が今回のために制作した。カラーはホワイトとブラックの2色を展開し、サイズは2・3・4・5の4サイズを揃える。アンダーカバーは、キジマ タカユキがコラボしてきた多くのブランドの中でも特に歴史が深く、1990年代後半にアンダーカバーが東京コレクションに参加していた頃から始まり、デザイナーの木島にとっても特に思い入れの強いブランドだという。　10月に発売する、タカヒロミヤシタザソロイスト.とのコラボアイテムは、デッドストックのシルクツイルを使用した88cm四方の大判スカーフ。デザイナー宮下貴裕が今回のために、キジマ タカユキのロゴマークを散りばめたグラフィックを作成した。スカーフと合わせてキジマ タカユキのロゴマーク入りメタルバッジがSとMの2サイズ同封される。木島は「宮下さんのプロダクトへの天才的なアプローチを見ていつも感動しています。ショーのルックに絶妙にハットを合わせるバランスも楽しみに観させてもらっています。そんな中、今回、大判のシルクスカーフとメタルバッジ。展示会に伺うたび気になっていたスカーフとバッジを思い切って依頼してみました」とコメントしている。

UNDERCOVER

TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.

Mame Kurogouchi

キジマタカユキがアンダーカバーやソロイストなど10ブランドとコラボ

　コラボ第2弾では、テアトラ唯一のレインウェア「BARRIERIZERシリーズ」の通気性・撥水性に優れた機能素材を採用。後頭部2枚のパネルにわたる広範囲にゴムを使用することで、幅広い頭の大きさにフィットするフリーサイズに仕上げた。カラーはブラック1色で、価格は税込1万7600円。

TEÄTORA

テアトラ×キジマ タカユキ 第2弾が登場、レインウェア素材を採用したキャップを発売

　「キジマタカユキ（KIJIMA TAKAYUKI）」の2024年春夏コレクション。テーマは「アメリカン フィフティーズ」。

2024 Spring Summer

　「キジマタカユキ（KIJIMA TAKAYUKI）」の2023年秋冬コレクション。

2023 Autumn Winter

　コラボキャップは、テアトラの代表的なパッカブルシリーズの機能素材を採用。パッカブルシリーズ同様の加工を施すことでシリーズ独自の歪みを再現した。様々な頭の形に対応するフリーサイズで、後ろの中心にはテアトラのウェアでネックフックとして使用しているパーツをあしらった。カラーはブラックとディープネイビーの2色を用意。製品染めのため、アイテムごとに風合いが異なるという。価格は各税込1万7600円。

テアトラがキジマ タカユキとのコラボキャップを発売、ブラックとディープネイビーの2色を展開

　「キジマタカユキ（KIJIMA TAKAYUKI）」の2023年春夏コレクション。

2023 Spring Summer

　サウナハットは、両デザイナーのサウナ愛から製作がスタート。ダブレットの井野将之による「灼熱のサウナに長時間入っていたら暑すぎて帽子が燃えてきた」をコンセプトにした焦げたような刺繍を施し、素材にはフィンランドで計画的に伐採される森林資源から作られたセルロース繊維の「Kuura®」とリサイクルポリエステルを使用した。また、中綿に遮熱効果の高いシンサレートを採用することで、サウナを長く楽しめる仕様にしたという。カラーはベージュ1色のみを展開する。　また、同コラボの第2弾として、9月23日にキジマ タカユキ直営店限定モデルを発売予定。同アイテムの詳細は、9月12日にキジマタカユキの公式サイトと公式インスタグラムで公開される。

ダブレット×キジマ タカユキ×ミッドウェストがトリプルコラボ　サウナハット発売

　故郷の遠い記憶と春の息吹から着想した前回の2022年春夏コレクションから季節が移り変わり、今回の舞台は秋から冬にかけての長野。約半年、何度も長野に通い、自身を見つめ直しながら制作したという。　コレクションを紐解くキーワードは、「山のテクスチャー」と「縄文」。ショー会場には、その2つの着想源が服作りに至るまでの過程を明らかにするムードボードが展示された。■山の景色とテクスチャーを服に表現　晩秋の山々の景色を、どのようにして服に表現するか——。黒河内は長野の山や自然をスケッチし、そこから多彩な色を抜き出してかすり染めした系で織り上げるといった、新たな手法を試みた。生地の表面をすいて起毛させ、色を混ぜることで独特なテクスチャーのコート地に。また岩肌の苔は、繊細な立体刺繍となってドレスのカフスやショルダーを飾った。　カラーパレットのメインは、秋の野山から抽出した深いブラウンやグリーン、カーキなどのアースカラー。そこに、対照的なイエローやオレンジのネオンカラーが差し込まれた。また、サスペンダー付きのスキーパンツやスパッツ、ロングソックスといったアスレチックの要素が混ざり、現代的な装いへと昇華させている。■懐かしいスキーニットに描かれた白馬の景色　スキーニットのランドスケープ柄は、黒河内が白馬五竜のスキー場で目にして心を打たれたという、絵織り作家の作品が着想源。四季折々の白馬の景色が、どこか懐かしさを感じさせる絵柄となって編み込まれた。チャンキーニットに刺繍された「Snow」「Time」などのワードは、記憶や風景を言葉に表したものだという。■縄文土器の文様をドレスに　故郷の探求はさらに進み、その地に伝わる民間信仰や自然信仰、そして1万5000年前の縄文文化にまでさかのぼっていく。特に注目したのが、縄文時代中期の土器の造形美や文様。先祖らが残したものに思いを馳せながら、「私の文様とは？」を探し、自身の記憶の中の景色を文様に紡いでいったという。　シルク混の三重織で唐草文様を表現したテキスタイルは、ミリタリーコートやセットアップに。ベロアに施された曲線のコードワークは土器や土偶のシルエットを想起させ、コード刺繍のテクニックを応用したオリジナルの文様がディテールをエレガントに装飾した。■スキースタイルとガラスのジュエリー　アクセサリーにもテーマが反映され、幅広のヘアバンドやニットのバラクラバ、スキーゴーグル風のキャットアイ型サングラスといったノスタルジックなスキースタイルを、都会的に演出。　長野は黒曜石の産地で知られ、中には透明性の高いものも採掘されている。それを軽量ガラスに置き換え、ピアスやバングル、ネックレスなどのジュエリーにデザインした。■伝統を更新する2つのコラボ　「キジマ  タカユキ（KIJIMA TAKAYUKI）」とのコラボレーションによるクロシェハットは、スタイリングをモダンに仕上げるアクセントに。そして京都の「履物 関づか」と制作した足袋と厚底の草履は、毛足の長いベルベットの共地でブーツのように仕立てられた。　10周年を経たマメ クロゴウチが、2022年春夏から2シーズンにわたって探求した「Land」は、黒河内にとって最もパーソナルな私小説とも言える特別なテーマ。ルーツを辿り、そして後世に残すものを服に表現することで、マメ クロゴウチの新たな一ページが開いた。