崩落したラナ・プラザ
崩落したラナ・プラザ
Image by: rijans

Fashion フォーカス

ファッション史上最悪の事故から5年、バングラデシュは変わったのか

崩落したラナ・プラザ
崩落したラナ・プラザ
Image by: rijans

 2013年4月24日、1,000人以上が死亡する事故が起こった。バングラデシュの首都ダッカ近郊の縫製工場が入った商業ビル「ラナ・プラザ」が崩落。死者1,134人、負傷者2,500人以上を出す最悪の惨事となった。ファッション産業の汚点となった未曾有の事故から5年の節目を迎える今、バングラデシュは変わったのか。

— ADの後に記事が続きます —

防げたはずの大惨事

 ニューヨーク大学スターンスクールの「ビジネスと人権センター(Center for Business and Human Rights)」が今年4月に発表した報告書によると、事故前日の4月23日、5つの縫製工場が入居していた「ラナ・プラザ」の従業員らは、8階建てのビルの異変に気づいていたという。壁や柱にひびが入っているのを発見した従業員らはマネージャーに報告し、地元警察は検査のための退去命令を出していた。それにも関わらず、ビルのオーナーは問題ないと主張。工場のマネージャーらは従業員に仕事に戻らなければ、解雇の可能性があると話していた。

 解雇を恐れた従業員がいつも通り出勤した翌日、午前9時頃にビルが停電し、違法に増築したビルの上層部に設置された発電機が稼働。発電機の振動と動き出したミシンなどの機械の振動が共鳴して建物を揺らし、崩壊を引き起こした。

第二のラナ・プラザを生まないために

 1990年代から500万人以上が従事しているバングラデシュのアパレル産業。輸出の80%を占め、その額は年間280億(約3兆円)を超える。「ラナ・プラザ」崩壊事故をきっかけに、アパレル産業の在り方を問い直す国際的なキャンペーン「ファッション・レボリューション・デー」の日本代表コーディネイターを務める竹村伊央氏は、「バングラデシュは繊維産業で成長しようとしていて、政府としても海外から仕事が集まることを歓迎している。しかし、労働者は仕事量が多く過酷な状況に置かれている」と懸念する。ラナ・プラザ事故の以前も火災やビルの崩壊によって100人以上の死者を出すこともあり、国の経済発展と引き換えに多くの命が失われていた。

 大惨事から1ヶ月後の2013年5月、世界中のアパレル企業が動き出した。「H&M」や「ユニクロ」、また「ザラ(ZARA)」の親会社である「インディテックス(Inditex)」など20ヶ国以上のアパレル企業を中心とした220社が「バングラデシュにおける火災予防および建設物の安全性に関する協定(The Accord on Fire and Building Safety in Bangladesh )」(以下:アコード)に署名。「ウォルマート」などアメリカを中心とした企業は「バングラデシュ労働者の安全のための提携(Alliance for Bangladesh Worker Safety)」(以下:アライアンス)を結び、世界中の企業が縫製工場の安全検査を行って建物の倒壊や火災を防ぎ、労働環境の改善を目指した。

変わらない現状も

 それから5年が経った現在、以前と比べると改善は進んでいるようだ。ペンシルベニア州立大学が今年3月に発表した調査報告によると、アコードによる活動を通じて、規模の大きい工場の状態が改善し、安全を確保された労働者の数は250万人を超えている。アコードが今年1月に発表したレポートによると、これまで検査した内の1,631の工場を管理し、継続的に安全性の検査と指導を行っているそうだ。

 しかし一方で、ニューヨーク大学スターンスクールの「ビジネスと人権センター」の報告書は、アコードが公表していない問題があると指摘している。アコードは署名した企業と直接取引をしている工場しか検査や指導の対象にしていないため、レポートに偏りがあると言及。実際に国内には下請け工場も多く、その数は少なくとも4,000近くにのぼるという。安全性の確保など全ての工場を改善するためには、12億ドル(約1,300億円)が必要だと推測している。

 一刻も早く解決すべき問題もある。バングラデシュのシンクタンク「Centre for Policy Dialogue」が4月に発表した報告書によると、事故の生存者の約半数が身体的もしくは精神的な衰弱により現在も働くことができず、補償金も得られていないという現状だ。

アパレル産業の未来へ

 バングラデシュのみならず発展途上国が抱える縫製工場の労働問題を解決するために、どのような取り組みが必要となってくるのか。竹村氏は「人を物のように扱う現状を変えなければいけない。しかし工場長など現場を仕切る人間は、オーダーをさばき儲けを生み出すことに必死で、未だ従業員や労働環境についてまで考えが及んでいない。対処するには国外からのアプローチが必要」とする。先進国の政府をはじめNPO・NGOなどの第三者機関、企業や消費者など社会全体で取り組まなければ、本当の解決にはならない。

 その鍵となるのが"透明性"だという。「ファッションは分業制が根強く、企業によっては商社が間に入ることで、自社の製品の背景を知らないことも少なくなかった。消費者の小さな気づき、例えば『この服はどこで作られたんだろう?』といった疑問を持つことからでも、生産背景を明確にしていくべき」。現在では製品の背景を明らかにしている企業が増えており、エシカルファッションに対する意識も以前に比べて高まっている。ラナ・プラザの事故を受けて制作されたドキュメンタリー映画「THE TRUE COST〜真の代償〜」やメディアの影響もあって、関心を持つ人は増えてきた。この5年間で社会が大きく変化したとは言い切れないが、バングラデシュをはじめアパレル産業が抱える問題を明るみに出すことが、未来への戒めとなるのは確かだろう。

最新の関連記事

Realtime

現在の人気記事

    次の記事を探す

    Ranking Top 10

    アクセスランキング