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デムナ・ヴァザリアが半世紀の時を経て現代に蘇らせた「バレンシアガ」のクチュール

Image by: BALENCIAGA

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デムナ・ヴァザリアが半世紀の時を経て現代に蘇らせた「バレンシアガ」のクチュール

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 約半世紀の時を経て「バレンシアガ(BALENCIAGA)」がオートクチュールの世界に戻ってきた。6年前、メゾンに加入したデムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)の手によって。

 最後にバレンシアガがクチュールの舞台でコレクションを発表したのは、今から53年前となる1967年。創業クチュリエのクリストバル・バレンシアガ(Cristóbal Balenciaga)が手掛けて以来だ。その後、低迷期を経てプレタポルテでメゾンを復活させた現「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」ウィメンズのアーティスティックディレクターのニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquière)やアレキサンダー・ワン(Alexander Wang)でさえも、クチュール部門の復活を実現することはなかった。本来であれば昨年の7月に発表されるはずだったコレクションは、パンデミックによって1年延期。十分に時は満ちたと言える。

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Image by: IMAGE (c) Maison Balenciaga, photographe Thomas Kublin

 クリストバル・バレンシアガ(1895-1972)は、スペイン・バスク地方で生まれ洋裁師として修行を積む。フランスに移住後の1937年、パリのジョルジュ・サンク通り10番地にメゾンをオープンし、オートクチュールを発表。1950年代にかけて発表された丸みを帯びた「バレル ルック」や「サックドレス」「チュニックドレス」など、構築的で斬新なシルエットで「クチュール界の建築家」の異名を持ち、後世のデザイナーに多くの影響を与えた20世紀を代表するクチュリエの一人だ。

 60年代後半にプレタポルテの台頭という時代の波にあおられ閉鎖されたアトリエの扉を、再び開けたのはデムナだった。店舗のストレージとなっていた場所は、昨年クチュール専門チームのアトリエとしてリオープン。白を基調としたクラシックな内装は、窓枠やカーテン、顧客が座る椅子のデザインまで、まるで手付かずで存在していたかのように当時のサロンが再現されている。この場所がショーの会場となった。

 トップジャーナリストなどの限られた招待客が集う中、"無音"という意表を突く演出でショーがスタートした。冒頭は黒で仕立てられたテーラードのスーツスタイルが披露され、袖、裾共に長めの丈とビッグショルダー、そしてウエストはシェイプされている。トレンチコートドレスやデニムジャケットの抜き襟と落とした肩のシルエットは、立体的で計算された美しさをまとう。

ファーストルックを飾ったモデルは、バレンシアガのプレタポルテや「ヴェトモン(Ventement)」でもお馴染みのエリザ・ダグラス(Eliza Douglas)

 また、ストライプのボタンダウンシャツやジーンズ、フードパーカ、トラックスーツ、そしてTシャツ(海外メディアの事前取材で、デムナが最も難しかったピースに挙げている)といった現代の定番服をクチュールの手法で仕立てているのも、アイロニックなユーモアが好きなデムナならではのアプローチだ。

 素材は上質なビキューナやヴィンテージウール、サテン、シルクから、実用的な日本製のデニムやテクニカルファブリックまで多様。刺繍が施されたルーズスレッドと表面処理されたカットアウトで本物のファーやフェザーのような質感に仕上げられたコートや、タイルのようなパッチをコンピュータープログラムでマッピングし、手作業でつなぎ合わせたクロコダイルレザーのイミテーションなど、手仕事と最新のテクノロジーを組み合わせた手法を用いて、伝統的なクチュールを現代に表現している。

 一際存在感のある大きな円盤のような笠やオペラグローブは、クラシックなアクセントとなり、アイマスクのように目を覆うアイウェアはコンテンポラリーな造形でどちらもミステリアスなムードをまとう。モデルが手にしているバッグは、"消費"の象徴であるバレンシアガお馴染みのショッパーやギフトボックスのようなデザイン。無音のサロンからは、モデルのヒールで床がきしむ音、布が擦れる音、トレーンが床を引きずる音といった、生々しさが画面越しにも伝わってくる。

 終盤ではバスローブとストールを合わせたボリューミーなピースや、体をすっぽりと覆うスポーティーな要素を取り入れたカラフルなバルーンドレスが登場。バルーンドレスをはじめ、グラマラスなツイストレースやチュールのイブニングドレスといったクリストバル・バレンシアガのアーカイヴを参照したピースも多く、花模様の刺繍ガウンはジャクリーン・ケネディのために作られたピースをオマージュ。ベールが上半身を覆ったミニマルなブライダルルックをフィナーレに、メゾンの記念すべき50回目のクチュールショーは幕を閉じた。

 ブランドはショーの数日前にインスタグラムのフィードを全て削除した。そしてショー後には今回のコレクションルックが真っ白だったフィードを埋め始めている。ジョージア出身のデザイナーが老舗メゾンの舵取りを任されて6年。クリストバル・バレンシアガが作り上げたクチュールの礎を新たな形で現代に蘇らせるという一つの使命を果たしたデムナ・ヴァザリアの新しいチャプターは始まったばかりだ。

 2021年秋冬オートクチュール

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「BALENCIAGA」2021年秋クチュールコレクション

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