デザイナーのクリスチャン・ワイナンツ
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Image by: FASHIONSNAP

Fashionインタビュー・対談

「女性が本当に着たい服を」クリスチャン・ワイナンツが日本で支持される理由

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 「より多くの女性に着てもらえる服を」と語るのはベルギー出身のデザイナー、クリスチャン・ワイナンツ(Christian Wijnants)。当たり前のようにも聞こえるこの言葉に、ワイナンツのファッションに対する思想が凝縮されている。華やかなデザインは店頭でひときわ目立ち、手の届く価格帯のインポートブランドとして支持されてきた。15年前、まだ無名だった頃に制作したコレクションを最初に買い付けたのは日本の店。今では世界の売り上げの4分の1を日本が占める。来日したワイナンツに15年間を振り返ってもらいながら、理想の服作りについて聞いた。

クリスチャン・ワイナンツ Christian Wijnants
ベルギー出身のファッションデザイナー。アントワープ王立芸術学院に入学し、在学中にラフ・シモンズ(Raf Simons)やベルンハルト ウィルヘルム(Bernhard Willhelm)、ヴェロニク ブランキーノ(Veronique Branquinho)の元でコレクション制作に携わる。2000年に発表した卒業制作でドリス・ヴァン・ノッテン・アワードを受賞し、ドリスの元でキャリアを積む。2001年にはイエール国際モードフェスティバルでグランプリ受賞。2003年に自身の名を冠したブランドを設立。フリーランスのデザイナーとしても活躍している。

■ベルギーのブランドと日本の関係

ー今年でブランドの創立から15年ですね。

 何年目ということは意識していなかったので、少し前まで気がつきませんでした(笑)。15年前に私のピースを初めて買ってくれたのは日本の「ヴィア バス ストップ(VIA BUS STOP)」なんです。以来、日本との関係性は年々強まってきていると感じています。

ー当時を振り返って、印象的なことはありましたか?

 最初のコレクションはアントワープ王立芸術アカデミーの卒業制作で発表したもので、販売することを念頭に置いたものではなかったんです。生産や価格についても考えていなくて。それでもヴィア バス ストップが「買いたい」と言ってくれて、驚いたのを覚えています。無名のデザイナーのコレクションを、リスクを承知で買ってくれたということですから。

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ー今では日本での売り上げが好調とのこと。なぜ支持されるようになったのでしょうか。

 日本の売り上げは世界の25%を占めています。プリントやカラフルなニットを気に入ってもらえて、私のこだわりでもある着心地の良さを分かってもらえているんだと思いますね。リピーターも多くて、ありがたいことに毎シーズン買い付けてくれるショップが多いんです。過去2シーズンが特に好調で、売り上げが約30%増加しています。

ー来日された際には、取り扱いショップを巡っていると聞きました。

 日本にはクライアントが多いので、今回の滞在では全ては回れませんでしたが、福岡や広島、東京のお店に足を運びました。実際に販売店の様子を見て、素材や着心地についてのフィードバックをもらうことはとても大切だと考えています。今回はバイヤーやスタッフ、顧客とも話しました。お客さんのことをよく知る販売員と話すのは有意義でしたね。

■脳内旅行で膨らむイメージ

ーコレクションについてお聞かせください。ここ1年はイランなど中東をテーマにしたコレクションを発表しています。

 2018年春夏コレクションでは、イランの風景を収めた写真集を着想源にしました。人がいない街の風景やカーペット、花柄のカーテンにノスタルジックなものを感じ、コレクションに落とし込みました。

ー過去にも、ソマリアのバスケットボールをする女性や、藤田嗣治といったのアーティストなど、さまざまな着想からデザインしていますね。

 インスピレーションは、本やアート、建築、異文化から得ることが多く、私の琴線に触れたものを着想源とすることが多いです。美しいかどうか判断できないものでも、心を奪われて興味を持つこともあります。旅行が好きなんですが、時間がなくて頭の中で旅をしたりも。例えばイランは行ったことがないんですが、本や映画からイメージを膨らませて、服で表現しています。

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■1人の著名人より1人でも多くの女性に

ーブランドを立ち上げる前は「ドリス・ヴァン・ノッテン(Dries van Noten)」でデザイナーとしてのキャリアを積んでいます。ドリスからは影響を受けましたか?

 もともと私がファッションの道を志したきっかけは、15歳の時にドリスの作品に感動したからなんです。彼と同じアントワープ王立芸術アカデミーに進んで、卒業制作ではドリスから賞をもらうことができ、彼のチームにアシスタントデザイナーとして参加しないかと誘われました。彼は、真摯に服を追求しているデザイナーで、美しい刺繍やプリント、ニットウェア、アクセサリーなど、様々なことを学びましたね。自由に制作していた学生時代と違って、ファッションビジネスを経験できたことも大きかった。ファッションは美しい生地や素晴らしいクリエイティビティだけでなく、いかに売ることが大切かも知りました。

ーそれらが自身のブランドでも生かされているんですね。

 私はデザイナーであり経営者なので、デザインだけではなく生産やビジネスのことも考えなければいけません。もし今シーズンに売れなければ次のコレクションが作れず、ブランドとして成立しませんから。

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ークリエイティブとビジネスを両立するための服作りについてはどのように考えますか?

 例えば新しいものが欲しい人がいれば、もう一度同じものを買いたいという人もいます。それを踏まえた上で、コマーシャルとデザイン、創造性のバランスを考えることが大切だと考えています。デザイナーの中には「コマーシャル」という言葉が嫌いな人もいると思いますが、私は違いますね。ランウェイを意識した強いイメージを考えることもありますが、チームで常に考えているのは何がコンセプトとして面白いかではなく、「女性が本当に着たいものは何か」ということです。たった1人の著名人がたった1回のレッドカーペットを歩くためのドレスを作るよりも、1人でも多くの女性に気に入ってもらえるような服作りを大切にしています。

ー2018年秋冬シーズンからは新たにシューズラインがスタートしました。

 これまでもラインウェイ用にシューズは作っていましたが、販売はしていなかったんです。4年前からメインのシーズンに加えプレシーズンコレクションを始めて、ブランドとして完成してきたと感じたので、シューズラインを始めることにしました。2018年秋冬コレクションでは6型を製作しましたが、シューズについても服と同じで履き心地を大切にして、毎日履けるようなシューズを作っていきたいと思っています。

ークリスチャン・ワイナンツの服やシューズを身に着ける、理想の女性像は?

 ブランドとして一貫した特定の女性像はありません。多様性のある現代で、顧客はアジアやヨーロッパ、アメリカと世界中にいます。理想があるとすれば多くの女性に着てもらうことなので、私の中にも1人の女性をイメージするということはないんです。

(聞き手:平田 陽彦)

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