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【連載ふくびと】第7話 N.ハリウッドと尾花大輔――伊勢丹メンズ館で通用するか

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第6話からつづく――

 フォーマルラインの「N.ハリウッド コンパイル(N.HOOLYWOOD COMPILE)」でパリに進出した頃、尾花大輔は伊勢丹から出店のオファーを受けていた。百貨店出店にためらいがあり、オープンに至ったのは数年後の2010年2月。アンダーウェアからフォーマルウェアまで豊富な展開ラインを軸に、やがて伊勢丹メンズ館の同フロア内でトップの売上へと成長していく。――N.ハリの創業デザイナー尾花が半生を振り返る、連載「ふくびと」N.ハリウッドと尾花大輔・第7話

ミスターハリウッドは2004年に原宿の裏通りから神宮前4丁目に移転した。

 

・肌着と白い箱

 「伊勢丹メンズ館に出店しませんか」と、3、4年にわたってラブコールをもらっていたんですが、他の百貨店ブランドのようにクオリティを担保できる自信がなく、出店に至るまではだいぶかかりました。いざオープンしてみると、不安が吹き飛ぶほど好評で。デザイナーズブランドでありながら、肌着やベーシックウェアからフォーマルウェアまで広く展開しているので、売り上げの波が少ないのが百貨店と合っていたのだと思います。

 出店前のコーナー展開の時、とにかくブランドのインパクトを残したいと思いました。それで、肌着を入れる白い箱を壁一面に積み上げて、それ自体をアドバタイジングとして見せて。予想的中で「なんだろう」と気になってもらえたようです。

 この肌着ですが、実は最初期はドイツ軍のデッドストックの肌着にブランドのタグを付けただけでした。でもだんだんと追いつかなくなって、一から作ってみたのが「アンダーウエア (UNDER WEAR)」ラインの始まりです。古着とは一味違うディテールにしたかったので、パターンを独自に改良したり。当時、スクープネックの肌着を普通にTシャツとして着てくれる子も多くいました。

スクープネックの肌着にボロボロの古着を着た尾花。見た目に反して、全く遊びにいけず徹夜ばかりのブランド初期の頃。

 でも自分が30歳を超えてくると鎖骨が見える服は似合わなくなるので、もっと大人っぽいリラックスした肌着が着たくなって。それで、ちょうど伊勢丹に出店する前に、「最高峰」という意味を込めて作ったライン「アンダーサミットウェア(UNDER SUMMIT WEAR)」が始まるわけです。初代の箱はものすごく拘って、そのまま引き出しとして使える仕様にしたんですが、難点は畳めないしかさばるし、とにかく高い! こと。

 海外でも、パリの「コレット(Colette、2017年に閉店)」で伊勢丹のように大量に積み上げて販売することになったのは嬉しかったんですが、箱のかさが凄すぎて輸送費が馬鹿にならないから、「赤字ボックス」と社内で呼んでいたくらいです。でもやっぱり箱には拘りたい。数年後、フェローズ バンカーズボックスとの協業をきっかけに畳めるアンダーサミットウェア特注のボックスを制作してもらって、今に至ります。

 もう一つ、メインのコレクションとは別軸でワードローブとして提案しているのが、軍モノがデザインソースの「テストプロダクト エクスチェンジサービス(TEST PRODUCT EXCHANGE SERVICE)」です。卸をしていると、業界では「期中」と呼ばれているシーズン中盤に投入する売れ筋商品が欲しいと言われるんですが、「コレを出したら買ってくれるんでしょ」とお客様を舐めてるように感じてしまって、自分の中では嫌で。なので「期中」の代わりに展開できるものとして作りました。

 

・僕はブランドタグは取らない

 少し変わったブランドタグも、由来は古着。でも初期のタグは今と違って、自分で描いたピストルを持った女の子のキャラクターのロゴでした。シュルレアリスムの影響を受けたり、自分の中でクリエイターぶっていた頃。デザインが目まぐるしく変わっていたのも、きっと当時の精神状態が現れていたんだなと思います。

 そもそも服作りって地味だけど、何か一つ自分らしい、アイコニックなものが付いていた方がブランドの証になると考えていて。それで辿り着いたのが、やっぱり古着でした。アメリカのドネーションストアでユニフォームのコーナーを見ると、アメリカの医療用の作業着が大量にあったんです。それらに付いていたピスネームを参考にしたのが、今のブランドタグ。

現在のブランドタグ

 例えばジャケットだと、袖口の外側にも見えるように付いているので「取った方がいいですか?」と聞かれることもありますが、その発想はなかったので僕は取らないです。聞かれたら「好きにしてください」と返しています。実は昔に一度、その医療用作業着のデッドストックを買い付けて並べたこともあったけど全然売れず。あれは失敗でした。――第8話につづく

 

愛用品・定番品

文:小湊千恵美
企画・制作:FASHIONSNAP.COM

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