DIOR 2020-21年秋冬コレクション フィナーレ
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ディオールが掲げた「I Say I(私は私を言う)」 20AWで提示する自己肯定と団結のマニフェスト

DIOR 2020-21年秋冬コレクション
DIOR 2020-21年秋冬コレクション
Image by: Laura Marie Cieplik for Dior

 パリのチュイルリー庭園内、「ディオール(DIOR)」2020-21年秋冬コレクション会場のエントランスに掲げられていたのは、自己肯定を意味する「I Say I(私は私を言う)」の文字。ランウェイの床一面には新聞紙がデザインされ、頭上には様々なマニフェストと共に「CONSENT(=同意)」のサインが点灯していた。昨今では性的同意(セクシャル・コンセント)といった形で取り沙汰されることが多い言葉だが、奇しくもディオールのショーが行われたのは、MeToo運動のきっかけにもなったハーヴェイ・ワインスタイン被告に有罪判決が下された翌日。マリア・グラツィア・キウリにとって同意とは、何を意味するのだろうか。

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特設会場の入り口 Photo : Adrien Dirand
ランウェイの装飾 Photo : Adrien Dirand

Women's love is unpaid labour(=女性の愛は無給の労働)」
Patriarchy kills love(=男性上位制は愛を殺す)」
Feminine Beauty Is a Ready-Made(=女性の美は既製)
 ・・・

 会場に入ると、ネオンのように光るマニフェストの数々が目に飛び込んできた。フェミニニティを象徴する会場装飾は、アーティスト集団クレール・フォンテーヌとのコラボレーションによるもの。さらに客席に置かれたコレクションノートには、雌記号「♀」の丸の中に拳が描かれたコインが貼り付けられている。ショーが始まる前から、このコレクションが多面的なフェミニニティを示すものだと予感させた。

 ファーストルックは「バー(Bar)スーツ」。メゾンのアイコニックなスタイルだが、従来と根本的に異なるのはファブリックではなくニットでできているということだ。ジャケットとパンツ、それぞれがコットンウールで立体的に編み立てられており、ニット特有の柔軟性で身体に負荷のない快適な着心地を見て取ることができる。細身のタイはチュール素材で、メッシュソックスとストラップパンプスを合わせることで、マスキュリンとフェミニンを同居させた。

 続くルックも同様に、ジャケットにワイドなボトムを合わせたセットアップやオールインワンがあれば、トランスペアレントなメッシュやデコルテが大胆なカットのイブニングドレスもあり、相反する要素のコントラストが映える。ロングプリーツはひだの内側にチュール素材を忍ばせ、センシュアルなニュアンスを添えている。

 ムッシュ ディオールが愛したというチェック柄は様々なパターンで登場し、水玉模様と共にメゾンのアーカイブをグラフィカルなバリエーションで展開。頭にバンダナのように巻いたスカーフ、アーガイル柄のニットやワイドデニムをはじめ、ダウンジャケットやベスト、ミニスカートなど、1970年代の自由な気風を感じさせるカジュアルなワードローブも目立った。

 コレクションを通じて多用されたフリンジは、今シーズン注目のディテール。アウターの裾をはじめ、オートクチュールと同様にドレス全体をフリンジで仕立てたり、ロングスカートとしてレイヤードすることで、エレガントな存在感を高める役割を担う。足元はタフな厚底のブーツが多く、力強いステップが印象に残った。

 マリア・グラツィア・キウリは今シーズン、ティーンエージャーだった頃の日記や写真から着想を広げ、自身のアーカイブに目を向けたという。その着想の発端となったのが、エントランスに掲げられた「I Say I」。これは美術評論家でのちにフェミニストとして活動したカルラ・ロンツィの言葉「Io dico io」の英訳で、多様な個性のシンボルであり際限のないフェミニニティの象徴としている(「Io dico io」はカルラ・ロンツィのアーカイブを公開する展覧会のタイトルでもある。ディオールの後援により、ローマ国立近代美術館で2020年3月23日から6月21日まで開催される予定)。

Photo : Adrien Dirand>

 また「CONSENT(=同意)」の意味については、ブランドの広報に問うと昨今の社会問題など具体的な関連性はないとしているが、マリア・グラツィア・キウリは海外メディアの取材に「今、重要な言葉」だと述べている。信号のように点滅するサインは、女性にとっての同意が一瞬のものであることを表しているという。1970年代初頭のヒッピーのような概念にとらわれない個性の主張と、シスターフッド的な団結をイメージさせるコレクションと共に、自己肯定という強い意思に触れることができた。

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