
ファレル・ウィリアムスとルイヴィトン2026年春夏メンズコレクション
Image by: LOUIS VUITTON
世界的エンターテイナー、ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)がプロデュースする「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」メンズコレクションのショーは、壮大な演出と豪華なセレブリティの共演で常に話題をさらう。今回もパリでライブを終えたばかりのビヨンセ&ジェイ・Z夫妻をはじめとする多彩なコミュニティが駆けつけるなど、会場は熱気に包まれた。しかし真に注目すべきはコレクション本来の魅力だ。誠実なテーラリングと、近くで見て驚くほどの細部へのこだわり、大人の心をくすぐる遊び要素が、何より"着る喜び"を呼び覚ます。とりわけ2年前に発表されたデビューコレクションの完成度は語り草になっているが、シーズンを重ねるごとに"ダンディズム"の探究は深みを増し、ファレルが敬愛する多様なカルチャーが息づいている。メンズ クリエイティブ・ディレクター就任3年目にして、スタジオとアトリエとの綿密な連携がうかがえ、着実に成熟の階梯を上っていると言えるだろう。
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巨大なボードゲームがランウェイに
2026年春夏メンズコレクションのショー会場となったのは、パリ中心部の文化施設ポンピドゥー・センターの広場。1年で最も日の長いこの時期に、夜10時前の夕暮れ空を背景に響く音楽と歌声は、2023年6月のメモリアルなポン・ヌフでのショーを彷彿とさせた。ファレルが今回着目したのはインド──ダンディズムとサルトリアリズムの真髄を深掘りする旅の始まりだ。
招待状として配られたレザーチャームに収められた3つのサイコロ。それが示すヒントは、会場に足を踏み入れてから明らかになる。ランウェイ全体を覆うのは、古代インド発祥のゲーム「スネーク&ラダー(へびとはしご)」を模した巨大なボード。建築集団「スタジオ・ムンバイ」が設計した舞台には、ヘビ(悪行)を避け、はしご(善行)を登ってゴールを目指す寓意が込められ、"可能性のメタファー"を具現化したという。






インドのサルトリアリズム 着込まれた佇まい
今シーズンの核となったのは、インドに息づくサルトリアリズム。インドといえば伝統的な手工芸を思い浮かべるが、ファレルは都市・自然・太陽のエネルギーに着目し、それらをルイ・ヴィトンの"ダンディズム"に反映した。
ソフトな仕立てとシルエットのテーラリングは、長年着込まれたかのような佇まい。パンツにさりげなくタックが入っていたり、足元にトングサンダルを合わせたりとリラックスムードが漂う。サンフェード加工やブラッシュド加工により、日焼けや経年変化のニュアンスで、軽やかなアイテム同士のレイヤリングが効いている。グレンチェックの生地に、メタリック刺繍でグラデーションを表現したジャケットが目を引いた。




登山、アウトドア、ブラウンデニム
インドの登山カルチャーへオマージュを捧げたシェルジャケットやフリース調ブルゾン、ハイキングブーツは、アウトドアの機能美をラグジュアリーに再構築。手刺繍のビジューが伝統とモダンの融合を体現する。また、インディゴに代わる新提案としてコーヒー豆を思わせるブラウンデニムを採用。着込むほどに深まる風合いは、メゾンが原点とする"旅"のテーマに呼応する。




ダージリン急行のトランクが製品化へ
今シーズンの注目トピックは、ウェス・アンダーソン監督によるインドが舞台の映画「ダージリン急行」(2007年)のため、当時アーティスティック・ディレクターだったマーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)が手掛けたルイ・ヴィトン製ラゲージを初めて製品化。劇中のトランクをはじめ、多様なサイズとデザインのバッグがランウェイを彩った。動物やヤシの木のモチーフとイニシャルは、ジャケットやデニム、シューズなど、あらゆるアイテムに展開。カエルや宇宙船といったユニークなデザイン、金糸で刺繍が施されたバッグも視線を浴びた。








ドーチーとタイラー・ザ・クリエイターを迎えたショー音楽
周辺の街路にまで響き渡るほど大音量のショーミュージックは、今回もファレルが作曲・プロデュースしたオリジナルサウンドトラック。ゴスペル合唱団Voices of Fireとオーケストラの生演奏で数曲を披露し、クライマックスはドーチー(Doechii)とタイラー・ザ・クリエイター(Tyler, The Creator)を迎えた最新曲「Get Right」により、盛り上がりは最高潮に。この日はメンズファッションウィークの初日ということもあり、花火を打ち上げるかのようにパリの中心地に活気を与えた。


ショーのフィナーレの後、スキップするように軽やかな足取りで登場したファレル。一流メゾンの重圧をものともせず、次なる可能性を切り拓く"ゲームチェンジャー"の姿は、さらなる飛躍を予感させた。
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