カナダ発のスキンケアブランド「オーディナリー(The Ordinary)」の日本上陸や、「ジョー マローン ロンドン(JO MALONE LONDON)」の世界最大規模の旗艦店オープンと、2024年は話題がつきないエスティローダー カンパニーズ(ELC)ジャパン。コロナを経て、市場が“ノーマル”に戻る中、ELCジャパンが抱えるコスメブランドでも動きも活発になってきた。コロナ後の今、大型新ブランドのローンチや旗艦店オープンなど積極的な投資を行う、ELCジャパンの職務執行者社長 ジェームズ・アクィリナ氏(James Aquilina)に話を聞いた。
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◾️ジェームズ・アクィリナ(James Aquilina)
エスティ ローダー カンバニーズ ジャパン 職務執行者社長。エスティ ローダー カンパニーズのトラベルリテール部門でキャリアをスタート。さまざまなブランド、カテゴリー、アメリカ大陸、ヨーロッパ、中東、アフリカを含む地域で活動。「メイクアップ アート コスメティックス(M・A・C)」のインターナショナル&グローバル コマーシャル担当GMや「トム フォード ビューティ(TOM FORD BEAUTY)」のインターナショナル担当GMなどを経て、2022年から現職。
ーコロナ禍を経て2024年は、以前のような経済活動が復活しました。2023年から今年にかけ、コロナ以前との違いはありますか?
私たちエスティ ローダー カンパニーズは、多様なブランドを展開するグローバル企業として、社会の変化やお客さまのニーズ、そして各地の習慣や文化に寄り添うことをとても重要視しています。
パンデミック中は、ニーズにオンラインで応えるためにデジタルの拡充に注力してきました。また規制が緩和され、ニューノーマルへと移行するにつれて、消費者のトレンドが急速に変化し、購入体験を求めてリアル店舗に再び来店される人が増えてからは、オンラインを充実させることも手を抜かずに、オフラインでは店頭での体験を重視したイベントを再開するなどで、お客さまと再び密な関係性が築けるよう、進めてきました。
ーではカテゴリーではどうでしょうか?コロナ前と今と変化はありますか?
市場全体でそうだと思いますが、コロナによるパンデミックは想像以上に私たちの生活を変え、フレグランスのようなささやかなラグジュアリー商品に投資をするようになり、新たな自己表現の方法として、日本では主要なカテゴリーではなかったフレグランスが受け入れられるようになりました。
最も歴史が古く、アジア初拠点の関連会社として存在感を発揮
ーELCジャパンでもフレグランスカテゴリーは好調です。
フレグランス・カテゴリーの勢いは現在も伸び続けています。当社のラグジュリーフレグランス・ポートフォリオに含まれるジョー マローン ロンドン、「ル ラボ(LE LABO)」、「トム フォード ビューティ(TOM FORD BEAUTY)」といったブランドが大きく成長しました。ル ラボの「シティ・エクスクルーシブ」、ジョー マローン ロンドンの「イングリッシュ ぺアー & フリージア コロン」など、主力製品がカテゴリー全体をけん引しています。2024年は新たに2つのグローバル旗艦店をオープンしました。3月に京都の木屋町通にル ラボ 京都町屋店を、4月に日本上陸15周年を記念して原宿の東急プラザ「ハラカド」にジョーマローン ロンドンの世界最大規模のグローバルフラッグシップをオープンすることができました。ジョー マローン ロンドンの旗艦店は素晴らしい内装で、香りが漂うオブジェや、キャビネットの引き出しを開けると香りと音が発信される演出など、没入型の空間になっています。
ーフレグランスを含め、日本のビジネスの進捗状況はいかがでしょうか?
日本は世界第3位の美容市場であり、私たちELCにとって最も戦略的に重要な拠点で、成長の原動力の1つであり続けています。ELCジャパンはELCのグローバル関連会社としては最も歴史が古く、関連会社としてアジア初の拠点として、常にELCのインスピレーションの源でもあります。先ほども言ったように新店舗のオープンをはじめ、各ブランドで限定商品の打ち出しを積極的に行い、その上でカテゴリーを問わず、お客さまにユニークな体験を提供することに重きを置いています。
さらに今年の大きな目玉として、カナダ発のスキンケアブランド「オーディナリー(The Ordinary)」を日本に導入しました。こういった話題を生むアクションを起こすことで継続的に革新にコミット、刺激的な(エキサイトする) 時を迎えていると感じています。
ーオーディナリーの日本上陸はSNSでも話題を集めていました。
オーディナリーは日本の消費者のていねいな美容習慣にぴったりなブランドだと思います。高品質な成分を手に取ってもらいやすいように、透明性のあるコミュニケーションと良心的な価格設定を行うことで、スキンケア業界に変革をもたらせるために、カナダで誕生したブランドです。米国と英国でNo.1のプレステージ美容液ブランドとなり、美容にこだわりのある多くのお客さまに愛用されています。特定のスキンケアのニーズや悩みに対処するため、美容成分を効果的な濃度で使用できるように、科学的根拠のある処方を組み込んでいます。これによって、パーソナライズされたルーティンをデザインすることが可能になります。そのこだわりが見て取れるような、成分名を記載しているユニークなパッケージも含め、日本人の方にも愛されるのではないでしょうか。
ー海外と日本では薬機法も違いがありますが…。
違いはありますが、東京にはR&Dおよびイノベーション・ハブ(ジャパン・イノベーション・ハブ)を置いていますし、日本のあらゆる規制を遵守しながらイノベーションを推進し、科学と創造性を融合させ革新的な製品を生み出し、日本の消費者に適した製品を届けています。
ーそのほかのブランドはいかがでしょうか?
「ラ・メール(LA MER)」や「エスティ ローダー(ESTĒE LAUDER)」といったラグジュアリー・スキンケアカテゴリーを代表するブランドは、パートナーである百貨店と協力して、店頭でのカウンセリングや最高のサービスをサポートするテクノロジーを取り入れています。順応力と革新性を維持することで、私たちは困難を乗り越えチームに力を与え、卓越した製品とサービスを提供することでお客さまの体験を向上できるよう心がけています。
エスティ ローダー カンパニーズ 主なブランド(五十音順)
・アヴェダ(AVEDA)
・エスティ ローダー(ESTĒE LAUDER)
・クリニーク(CLINIQUE)
・ジョー マローン ロンドン(JO MALONE LONDON)
・ドクター ジャルト(Dr.Jart +)
・トム フォード ビューティ(TOM FORD BEAUTY)
・フレデリック マル(FREDERIC MALLE)
・ボビイ ブラウン(BOBBI BROWN)
・メイクアップ アート コスメティックス(M·A·C)
・ラ・メール(LA MER)
・ル ラボ(LE LABO)
男女平等、性別問わず平等な機会を提供
ーELCといえば女性の社会進出支援にも熱心に取り組んでいます。
組織内および世界中で女性の地位向上に尽力してます。日本では、特にSTEM(科学、テクノロジー、エンジニアリング、数学)分野の女性のために、ジェンダー平等、世代間の多様性、リーダーシップ開発に注目しています。現在のELCの社員は圧倒的に女性が多く、リーダー役職の60%近くを女性が占めています。さらに、取締役会のほぼ半数が女性です。もちろん性別を問わず平等な機会を提供することができるように努めていますし、仕事の機会、指導的な地位、健康、教育、経済活動参加の面において、必要なリソースやサポートを提供しています。
ー現職に就任してから2年が経ちましたが、実を結んだ取り組みはありますか?
2022年に東京に着任して以来、私はELCの「CEOグローバル・リバース・メンタリング・プログラム」を提唱してきました。このプログラムはCEOのファブリツィオ・フレダが考案したもので、従来とは反対に後輩が先輩を指導する機会を提供するというものです。私は幸運なことに、ELCで長年にわたり複数の地域、ブランド、部門にまたがるとても多様なキャリアを積むことができました。そうした経験を活かしながら、才能を持つ人材に多様な機会を創出すること、そしてそういった人材が発言力を持ち、組織全体をリードできるように育てていくということを使命として強く感じています。
ー最後に、日本市場とは?
日本マーケットはまさに唯一無二の存在であり、世界的に認知されています。戦略的影響力を持つ日本から貴重な見識を得ようと、国際的なエグゼクティブが何度も日本を訪れています。2024年も半期が過ぎましたが、残りの半年もお客さまにとって新鮮で刺激的な製品と体験に満ちた年になるでしょう。私は日本の多様性豊かなチームとその大きな可能性、そして私たちが互いに刺激し合っていることを誇りに思っています。
(文:米山奈津美、企画・編集:福崎明子)
◾️エスティ ローダー カンパニーズ:公式サイト
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