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フランス発フレグランスマガジン「Nez」がおくる香料辞典:Vol.1 バニラ

Image by: Nez

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 盛り上がるフレグランスカルチャー。ショップやイベント、日本に上陸するブランドが続々と増え、自分の好きな香りや気になる香りを見つける人も少なくないはず。ブランドの歴史や香りの種類、まとい方などさまざまな情報が発信され、少し詳しくなってきた人もいると思います。そこで、フレグランスについて、“ちょっと詳しく知りたい”人向けに、香りの元となる「香料」について特集。フランス発のフレグランスマガジン「ネ(Nez)」(以下、ネ マガジン)の協力を得て、奥深い香料の世界を、全3回の短期連載でお届け。産地や香料として使うための加工・製造など、少しニッチな内容も。第1回は、若年層を中心に人気が高まっているグルマン系の王道、バニラの香料をピックアップ。

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(出典:Nez)

甘く洗練された香りを生み出すバニラ

 香りで言うところのグルマン(gourmand)は、フランス語の「食いしん坊」からきています。グルマン系のフレグランスは、バニラやキャラメル、カカオ、ナッツなど、美味しそうな食べ物を連想させる、甘い香りが特徴。最近では夏や気温が高い日でも、軽やかに甘さをまとえるグルマン系も増え、自己表現のひとつとして、さまざまな香りのバリエーションに緒戦する若年層を中心に人気が高まっています。

 グルマン系の王道のバニラは、甘さの中にも洗練された深みがある香りで、料理のフレーバーだけでなく、アブソリュート(香料の濃縮エキス)としてフレグランスの世界でも重宝されています。香りに用いられる“スパイス”としてのバニラは、インド洋に浮かぶマダガスカル島で栽培・加工されています。

バニラの香料はどこからやってくる?

 バニラの香料の物語りは、地球上の3万5000種の蘭(ラン)の中で唯一、食用の果実を生み出すことのできる「バニラ・プラニフォリア」によって始まります。メキシコ原産のこの植物は、19世紀に赤道沿いの地域へと運ばれ、マダガスカルにも持ち込まれました。今やマダガスカル島は世界最大のバニラ生産地となっています。

 島の島の北東部にあるサヴァ地方に拠点を構えるドイツの植物香料会社Symriseは、約7000人の農家が、資源の適正な保全を保ちながら、品質を維持して生産に携わっています。バニラの植物が生い茂り、剪定され、花を咲かせるまでは3〜4年ほどを要します

 ちなみにバニラの花は雌雄同体で、繁殖のための受粉は、一輪ずつ手作業で行う必要があります。受粉から約9ヶ月後、サヤが収穫可能な緑色へと変化。およそ600本から約6kgのバニラ(ビーンズ)が生まれます。

バニラが生まれる過程

 収穫後の肝となるのが、発酵と乾燥の工程。その長い過程の中で、バニラは私たちが見慣れた黒褐色へと変化します。収穫されたばかりのサヤは、60度に熱した水で1分間湯通し。これにより細胞構造が分解し、酵素の作用によって、バニラの香りの成分であるバニリンが生み出されます。そして湿ったままのサヤは木箱に詰められ、綿の布で覆われ、熱を保ったまま3日間“発汗”を続けます。次に、棚に広げられ、10〜21日間かけて乾燥。乾燥途中は定期的にチェックされ、柔軟性や水分の含有量に応じて、選別・分類された後、束ねられます。

 サヤはさらに熟成され、何段階もの選別と等級分けの工程を繰り返します。この選定作業は、香料の品質にとって重要な項目で、高度な専門知識を要します。こうして、バニラの香料を抽出する準備が整います。

多様なバニラの裏側

 バニラの香料と言っても、その表情は多様で、調香師たちのセンスでさまざまなものが選ばれるのです。このバニラの香りのバリエーションは、異なる農園からのサヤを混合・粉砕することで叶えられます。複数が混ざり合うことで、バニラの香料(アブソリュート)は、食欲をそそるグルマンな香りから、フェノール、ウッディ、タバコ調のノートまで、多様な側面を持つようになります。

 サヤから得られた粉末は、70度に熱したサトウキビ由来のアルコールと混ぜられ、黒糖の香りとバニラの香りが融合。この混合物を蒸発させて抽出液を得ます。さらに、この高濃度の抽出液を6倍のアルコールで希釈し、再度蒸発させることで、バニラのアブソリュートが完成します。単純でありながら伝統的なこの蒸留法で、バニラ果実の持つすべての甘さや、レザーのような雰囲気、動物的な香りが保たれるのです。

バニラの香りを得る5つのステップ

  1. 受粉
    雌しべと雄しべを隔てる膜を手作業で切り、両者を優しく接触させます。受粉は開花初日の朝に行わなければならず、そうしないと花は萎れてしまいます。3ヶ月にわたる開花期間中は毎日チェックが必要なのです。
  2. 収穫
    受粉から9ヶ月後の9月から12月にかけて、サヤが収穫可能となります。風味は成長期間の終盤にかけて形成され、緑のまま熟します。
  3. 乾燥
    収穫されたサヤは湯通し・発酵された後、陰干しされます。毎日1~2時間だけ日光にさらされます。
  4. 等級分け
    サヤはサイズや品質に応じて束に分類されます。まずはワックス紙に包んで熟成し、その後箱に入れます。品質管理者が束を定期的に嗅ぎ、品質の一貫性と安定性を確認します。
  5. 加工
    サヤは粉砕され、アルコールと混ぜられます。この混合物は蒸留され、濃度に応じて、「3x」または「30x」というラベルがつけられます。

■バニラが香る、フレグランスセレクション

 フレグランスを文化的、芸術的な側面から捉えるネ マガジンが、バニラが特徴的に香るフレグランスをセレクション。

トム フォード ビューティ「タバコ・バニラ オード」(2007年誕生:調香師 オリヴィエ・ギヨタン)

おまけ:妄想香水劇場(The fantasy perfumery)

 Nezならではのフレグランスの夢のブティック「THE FANTASY BOUTIQUE」。フィクションの登場人物たちが、ある日、現代の香りを求めてフレグランスブティックの扉を開けたとしたら?コンサルタントが物語の舞台やキャラクターの性格、スタイルに合わせた香りを提案します。今回は、2001年のパリ、日付は12月19日。お客さんは、「ハリー・ポッターと賢者の石」より、ハリー・ポッター(Harry Potter)が訪れました──。

 ホグワーツ魔法魔術学校に入学したんですね?おめでとうございます、若き魔法使い。初めて香水を買うというその行為は、これから始まる非現実的で、魔法のような世界への第一歩を祝福する儀式でもあります。そこでおすすめするのが、「ペンハリガン(Penhaligon's)」の「サボイ スチーム(Savoy Steam)」。その香り立ちはややボーイッシュで、あなたの新たな成熟を邪魔することなく、ぴったりと寄り添ってくれるでしょう。まるで壮麗な時代様式のバスルームにいるような気分になります。バスタブからあふれる泡の中、イングリッシュローズとアロマティックなゼラニウムの香りがしっとりとした空気に広がります。清潔感を大切にするあなたに、まさにぴったりですね。そして、魔法の要素は? もちろん、ちゃんとありますよ。この香りの中には、悪意あるインセンスの霧が紛れ込んでいて、まるで呪文のようなノートを運んできます。ピンクペッパーの大胆さ、バルサム調のベンゾインが輪郭を柔らかく包み、同時にそれはどこか薬局や、いや魔法使いの軟膏のようでもあります。──ウィンガーディアム・レビオーサ。──えっ、どういう意味かって?ああ、浮遊の呪文ですよ、うっかりしてました…。サボイ スチームはあなたの元へ飛んでいきます。この香水は、あなたの家系のように誠実で、ミステリーに満ちた才能を持つ人にこそふさわしいのです。

最終更新日:

香りと嗅覚をテーマとする定期刊行雑誌。科学論文、インタビュー、調査、批評など、香りを中心に据えたユニークな内容で、“鼻”を使って世界を探求する助けとなるようなコンテンツを紹介している。2024年に、ニッチフレグレンス専門ショップ NOSE SHOPが日本語版の版権を取得。フレグランスや香水業界の動向、プロダクトレビュー、芸術遺産の提唱といったさまざまな分野の深い洞察を掲載している。

Crédit photo : Romain Bassenne / Illustrations flacons, Crédit : Atelier Marge Design / Boutique imaginaire, Crédit : Clément Charbonnier
April 2019 © Nez
Japanese translation rights arranged with Agence Deborah Drubathrough Japan UNI Agency, Inc.

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