Image by: ©Launchmetrics Spotlight

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3シーズン目を迎えたサラ・バートン(Sarah Burton)による「ジバンシィ(GIVENCHY)」が今季のテーマに据えたのは、女性が自分自身を取り戻す旅。これまで積み上げてきた構築的なシルエットの探究を土台に、自身の人生や日常の感覚を織り込んだ。テーラリングを核に、流れるドレープや装飾、日常の記憶を思わせるモチーフを重ねながら、ひとつの理想像に集約されない、多面的な女性像を提示している。
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土台づくりを越えて、彼女の言葉が立ち上がる時
サラ・バートンは就任以降の過去2シーズンを通して、身体にどう沿わせ、どう抑揚を生むかというシルエットの設計を一貫して追求してきた。今季はその延長にとどまらず、より直感的でパーソナルな感性をコレクションに盛り込んでいる。ショーの核になったのは、やはりテーラリングだ。


ラペルの上下を反転させたように取り付けたジャケットや、ウエストをつまむように絞ったピーコートと同様のダブルブレストのアウターは、メンズウェアの文脈を踏まえながらも、女性の身体に添うフォルムへと変換。ピンストライプのスーツも、単なる男性的なパターンの借用ではなく、身体の輪郭に沿って再構成された"女性のための"テーラリングとして機能していた。






厳格さの中に差し込む、やわらかさと揺らぎ
黒を基調にしたシャープなルックが続く一方で、その合間には流れるドレープ、ボウのモチーフ、肌をのぞかせるカッティング、刺繍やレースといったロマンティックな装飾の甘さが差し込まれ、ショー全体に豊かな抑揚を生んでいた。


深いスリットが入ったドレスや、背中が大きく開いたシャツのルックは、正面と後ろ姿の見え方に差をつくり、二面性のある異なる魅力を放つ。スーツとスリップドレス、黒のミニマルな装いとレオパード、昼のワードローブを思わせるルックとイブニングの華やかさ。その振れ幅の広さが、女性をひとつの型に押し込めないという意思につながっている。ドレスに施された絵画のような繊細な刺繍は糸をフリンジのように垂らし動的な要素として盛り込まれ、レースドレスには立体的なラインでクリノリンを思わせるふくらみも取り入れられるなど、クチュール的な手仕事も随所に光る。

色彩はコバルトブルー、バーガンディー、そしてバートンがキーカラーに据えるイエロー。抑制のきいた黒の世界にこれらの色が差し込まれ、花柄のジャカードやフローラルモチーフ、チューリップのジュエリーやボウとタイの反復も、緊張感のあるムードを和らげる役割を果たしていた。




日常の記憶とメゾンの歴史をつなぐ


今季を象徴する要素としてもっともインパクトを与えたのが、スティーブン・ジョーンズ(Stephen Jones)と協働したヘッドピースだ。Tシャツを頭に巻いたようなフォルムで、ショーでは彫刻的でドラマティックなアクセサリーとして異質の存在感を放った。日常的なアイテムを非日常の装飾へと変換する表現方法に、今季のジバンシィの多面性が表れている。




同時に、バートンはメゾンのアーカイヴと、自身が築き始めた新しいブランドコードを丁寧につなぎ合わせている。ユベール・ド・ジバンシィ(Hubert de Givenchy)に由来するチューリップのモチーフ、花を連ねたような装飾、手描きのペインティング表現には、過去への敬意が宿る。一方で、ファーストシーズンから継続する「ピンチ」モチーフ、“制作途中”を思わせるしつけ糸のようなステッチは、サラ体制の「ジバンシィ」を印象づける新たなコードになりつつある。また、ショーの招待状にも同封されたレザーのボウのアクセサリーはバッグや首元、ベルトなどにつけられ、ルックに躍動感をプラス。手元にボリューミーなアクセントを与える「ボンボングローブ」やサイハイのブーツ、バッグでは「ヴォワイユー」の新作も登場し、服だけでなくアクセサリーとの合わせでワードローブを全体像して捉えていた。
構築的な服づくりを核に据えながら、やわらかさ、装飾、実用性、感情の揺れを同時に内包することで、サラ・バートンは「ジバンシィ」の女性像をより具体的に提示した。それは完成された単一の理想像ではなく、複雑な日常を生きる女性が、自分自身を取り戻すためにまとう服としての提案だった。

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