
Image by: FASHIONSNAP

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ファッションブランド「ハレ(HARE)」が、ブランド史における1つの重要局面を迎えている。2003年に誕生した同ブランドは、若者に向けてモードでトレンド感のあるデイリーウェアを手頃な価格で提案し続け、今年で23年目。2025年度にメンズが過去最高売上を記録し、2010年にスタートしたウィメンズアイテムの売り上げがここ数年で以前の4倍にまで伸長するなどブランドの成長は著しく、更なる拡大を目指して本格的な海外進出を計画している。
8月末には、過去最大規模のランウェイショーを東京・白金台の八芳園で開催。ショーを通じて「これまでのハレとこれからのハレ」を表現し、グローバルで戦っていくという明確な意思を示した。変革期を迎えたハレはいかにして世界に挑み、どのような未来を切り拓いていくのか。これまでブランドを支えてきた村岡秀紀部長と、原田純PRマネージャーに話を聞いた。
天も味方に、史上最大規模のショー
——改めて、ハレとはどんなブランドでしょうか。
原田純PRマネージャー(以下、原田):モードを軸にしながら、日本のカルチャーや根底にある美意識と、現代のトレンドやカルチャーを組み合わせて、現代的に再編集して提案しているファッションブランドです。「日常を華やかに晴れやかに。」というスローガンに基づいて、「自身」をアップデートして「自信」に変えられるような服を届けることを目指しています。2003年に立ち上げて、今年で23年になります。

HARE 原田純PRマネージャー
——長く愛されているブランドだとは思っていましたが、想像以上に歴史があるんですね。
村岡秀紀部長(以下、村岡):僕が入社するずっと前から続いているので、黎明期を知る人は流石にもう社内には数少ないと思います。ブランド立ち上げ当初はエディ・スリマン(Hedi Slimane)のようなピチピチのテーラードなんかも売っていて、ラグジュアリーブランドに手が届かない学生さんや美容師さんから支持を得て成長してきました。
——今は日本の美意識から着想を得たクリエイションを展開していますが、設立当初からモノづくりの方向性が変化したということでしょうか?
村岡:そうですね。立ち上げ当初は、世の中のトレンドに追随するというか、良くも悪くもミーハーさがありました。自分たちの感覚を大切にして、良いと思うものをハレのフィルターを通して表現するといったイメージがもっとも近かったと思います。
方向性が変わったのは2017年秋冬シーズンにブランド初のショーを開催したときです。初めて「和」や「ジャポニズムモード」、「ジェンダーレス」といったコンセプトを提示したのですが、そこからクリエイションの解像度が一気に高まりました。それまでの「イケてるよね、カッコいいよね」という曖昧な基準から、「ハレで服を作るならこういう要素がなければ」と言語化できるようになったんです。

HARE 村岡秀紀部長
——なぜ「日本」というものを製作の軸に据えるようになったのでしょうか。
原田:ハレは設立当初から「東京発のモードブランド」ということをすごく大事にしてきました。2017年にショーを実施するにあたってみんなで「東京発ってどういうことだろう」と話し合ったのですが、そこで「日本」というところに考えが及んでいきました。ショーを開催したことで自分たちのアイデンティティが確立された、という感じでしょうか。
——先日開催したショーは600人もの観客が詰めかけるなど史上最大規模となりました。ショーを終えての心境を教えてください。
原田:率直に言えば、成功させることができてほっとしたという気持ちが1番強いです。4年ぶりのショーでかなり長い時間をかけて準備をしたのですが、当日はお客さまを案内するタイミングで雨が降ってしまい。正直「この半年以上の努力が報われないかもしれない」と不安でいっぱいだったのですが、奇跡的に開演のタイミングで晴れてくれました。奇しくも今回のショーのテーマは「霽レ」。霽レとは、曇りや雨が過ぎ去り、空が晴れていく様子を指す言葉です。天気がまさにショーテーマを体現してくれていて、チームメンバーには感動で泣いている者もいました。
村岡:天気が一番の舞台装置でしたね。本当にドラマチックでした。とはいえ、ショーをやって終わりではありません。お客様のクローゼットにハレの服が届いて、はじめて成功と言えると考えています。

八芳園で開催したハレのランウェイショー
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ブランド始動から23年、次のステージは海外
——バイヤーへのお披露目も兼ねてショーを開催するコレクションブランドと違い、ハレは卸売をほとんど行っていません。足元の売り上げが好調に推移している中で、ショーという発表方法を選んだ狙いを聞かせてください。
村岡:一番の狙いは、今後の成長戦略の最重要課題と位置付けている海外展開の足がかりにすることです。好調な今こそ、ハレがどんなブランドなのかを示すべきだと考えましたが、発信したくてもどうしても資料ベースになってしまい、感覚的に訴えることが難しいという課題がありました。そういう意味で、非日常的な空間でブランドの世界観を肌で感じていただけるショーは、打って付けだったんです。また、チームメンバーや世の中に対して「世界へ挑戦するぞ!」という決意表明の意味合いもありました。
原田:前回のショーからの4年間、ブランドの売り上げは好調でしたが、結果を求めたことでクリエイションの軸が少しだけブレている感覚がありました。ショーを通してブランドのルーツや存在意義をチーム全員で再確認する、というのも狙いの1つでした。
——ブランド始動から20年以上、国内を主戦場にビジネスを拡大してきましたが、このタイミングで海外展開に舵を切る理由を教えてください。
村岡:直接的なきっかけとなったのは、国内店舗におけるインバウンド売り上げの急伸長です。ここ数年、文字通り倍々に伸び続けており、ならして見ると実店舗売り上げの3割近くを占めるまでになりました。原宿の旗艦店「HARE.JP」に至ってはインバウンド売り上げが約75%。日本への旅行者が増えているという外的要因もありますが、何よりハレが元々持っていたモードの文脈に「日本の美意識」を加えたクリエイションそのものが、高く評価されている結果だと言えます。
昨今、日本のカルチャーに対する世界の注目度は高まっていますし、「ジャパンブランド」に対する信頼も絶大。加えて、日本のようにモードファッションがストリートレベルで大衆化している国は世界的に見ても稀有で、そこにはまだ掘り起こされていない潜在的なニーズが眠っていると強く感じています。以上から、「しっかりと戦略を立てて挑戦すれば、海外でも必ず戦える」と確信しました。現在先行して出店している台湾の4店舗が非常に好調なことも、背中を押してくれています。

台湾に出店しているハレの店舗写真
Image by: HARE
——台湾の次に出店を狙うエリアはどこですか?
原田:直近では香港、そこから中国、韓国といった東アジアへの進出を考えています。人口密度が高く、モードファッションへの関心も非常に高い市場です。日本からの距離が近いのも大きなメリットですし、グローバル展開を目指すならこれ以上の拠点はないでしょう。当面の間は東アジアで海外事業の基盤を固めることに注力していきます。
——いずれは欧米にも?
村岡:過去にはロサンゼルスの老舗セレクトショップ H.Lorenzoで取り扱ってもらった実績もありますし、ニーズはあると思うのでチャンスがあればぜひ挑戦したいです。ポップアップなのか常設店なのか形態は分かりませんが、ゆくゆくはファッションの中心地 パリで現地のお客さまにハレの服を届けられたらと思っています。そして、将来的には世界の各主要都市にハレの店舗を出店したいですね。
——グローバル展開にあたり、商品戦略を教えてください。
村岡:モードを軸に日本の美意識と現代のカルチャーを融合させるというブランドのアイデンティティは一切変えず、そのままの形で届けたいと考えています。一方で、現地のニーズに合わせるべき部分もあります。例えば、サイズスペックは各国の体型に合わせてローカライズしなければ通用しません。また、海外のお客様は、より「和」を強調したデザインを好む傾向が見られるので、そうしたアイテムの構成比を高めるといった見せ方の工夫は必要になるでしょう。



漫画「NANA」とのコラボヴィジュアル
Image by: HARE
原田:コラボレーションは積極的に活用していきたいです。ハレは、書道家や陶芸家といった日本の伝統文化の担い手から、世界的に人気なアニメといったIPまで、幅広い相手と協業しています。その中で大切にしているのは、キャラクターをただプリントするなどの表面的なアプローチは極力控え、コラボ相手の世界観やイメージを落とし込む、概念的なデザインです。この直接的すぎない表現は国内外で非常に好評なので、今後も続けていきたいと思っています。
——現在インバウンドに人気のアイテムは?
村岡:ハカマパンツや角袖のアウターといった、和服の意匠を取り入れたアイテムが好評です。生地のしなやかさを活かし、歩くたびに裾が揺れるようなドレープ感や躍動感、和服独自の侘び寂びのムードなどが海外のお客様に支持されているようです。

ハカマパンツ

角袖ワンピース
——原宿の旗艦店「HARE.JP」ではアイテムだけでなく、茶室をモチーフにした空間を設けるなど、店舗全体で日本的な体験を提供しています。
原田:お店の前に大きな黒松を植えるなど、空間全体で「日本の美意識」を感じていただけるような空間作りを意識しました。今では多くの外国人のお客さまがその松の前で写真を撮ってくださるなど、店舗のシンボルとして定着しており、手応えを感じています。単に服を売るだけでなく、その空間での体験を通して、日本を訪れた楽しい思い出と共にハレの服を持ち帰っていただく。そして、その服を着るたびにそのときの感動を思い出してもらえるようなブランド体験を提供したいと考えています。
村岡:グローバルで出店する際も、「HARE.JP」のような日本を感じさせる店舗作りは非常に効果的だと思っています。出店する場所の雰囲気や客層にあわせて、洗練された現代的な店舗と日本的な店舗からマッチする方を選んでいく方針です。


「HARE.JP」店頭
Image by: HARE
“ハレラー”復権へ これからのハレに求められること
——今年3月には、日本の伝統やモノづくりをベースにした新ライン「ナリル(NARRIL)」を立ち上げました。既存のハレとの違いはどこにありますか?
村岡:最大の違いは、ものづくりへのこだわりを極限まで追求している点です。ハレには「デザイン性の高い服が、手頃な価格で買える」という強みがある一方で、品質面で「高級」というイメージまでは伝えきれていないというブランディング上のハードルがあります。そこで、品質とクリエイションに完全に振り切った、特化型の新ラインとしてナリルを立ち上げたんです。ハレが大切にしてきた美学を一切の妥協なく、より純度高く表現したハイエンドラインという位置付けで、価格帯もハレの1.8倍ほどに設定しています。
原田:ナリルは大きく2つのシリーズで構成されています。生地から縫製まで、すべてを日本国内で行うことにこだわった「ハイクオリティ」と、着物や柔道着といったユーズドの和服を解体し、その生地や構造を活かしながら新しい洋服として蘇らせる「リビルドジャポニズム」。海外展開するうえで分かりやすく「ハレらしさ」を打ち出すのがナリルの役割です。既存のハレのラインナップに加えて、「こんなこともやっているよ」とブランドの幅を見せていくのは顧客層拡大の観点でも非常に大事になってくると思います。



「NARRIL」ヴィジュアル
Image by: HARE
——ブランドとしての課題を教えてください。
村岡:避けては通れないのが、日本の人口減少と少子高齢化という社会構造上の問題です。ハレのメインターゲットは20代なので、国内若年層市場の縮小は、他のブランド以上に大きな課題だと言えます。対応策は2つ。1つは、これまでお話ししてきたように海外に打って出て、マーケットを拡大すること。もう1つは、お客さま1人あたりの来店頻度や接点を増やすことで関係性をより深め、LTV(顧客生涯価値)を高めていくことです。分かりやすく「ファンの熱狂度を高める」と言い換えることもできます。
原田:かつては、安室奈美恵さんの「アムラー」、篠原ともえさんの「シノラー」のように、ハレの服を愛用してくれる若者たちを指して「ハレラー」という愛称がありました。当時は「手に取りやすく、簡単におしゃれになれるブランドを着る若者」というニュアンスだったと思います。今、ブランドが届けたい価値は当時とは異なりますが、あの頃のような熱狂を、今のハレで再び生み出したいんです。
——10年後、ハレが大きく成長するために必要なことは?
原田:ブランドのアイデンティティは変えるつもりはありません。一方で、それを表現する「手段」は、時代に合わせて常にアップデートし続ける必要があります。トレンドの移り変わりに柔軟に対応できるフットワークの軽さこそが、ハレの強みです。「日常を華やかに晴れやかに。」という根っこの部分は変えずに、アウトプット手法は大胆に変えていくというアグレッシブな姿勢がより一層求められると思います。
——これからのファッションシーンにおいて、ハレが果たしていきたい役割や最終的なゴールを教えてください。
村岡:ブランド始動から23年、ハレは、多くの人がファッションに目覚めるきっかけとなる“登竜門”のようなユニークな立ち位置を築いてきたと自負しています。ファッションシーンを盛り上げていくためには、このポジションのブランドが必要不可欠。今後もこの立ち位置からファッションに興味を持つ若者の背中を押していきたいと思っています。たとえハレを入り口にファッションを好きになった人が別のブランドに移っていってもいいんです。「ハレの服と出会ったことで世界が広がり、人生が豊かになった」。そう感じてくれる人をこれからは世界中に広げていきたい、というのが私たちの大きな目標です。

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