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メゾン ミハラヤスヒロ × ロフト、目指すのは「下心のないデザイン」

左:三原康裕、右:ロフト 安藤公基社長

Image by: FASHIONSNAP

左:三原康裕、右:ロフト 安藤公基社長

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左:三原康裕、右:ロフト 安藤公基社長

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 ロフトが新たなプライベートブランド制作プロジェクトの第1弾として「メゾン ミハラヤスヒロ(Maison MIHARA YASUHIRO)」との初のコラボレーションプロダクトを発売した。

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 ロフトのブランドカラーである黄色・黒・白を全面に押し出し、大胆にロゴを配した、一見“人を選ぶデザイン”は、どういった過程で生まれたのか? ロフトの安藤公基社長とメゾン ミハラヤスヒロの三原康裕に聞いた。

ロフトがプライベートブランドを打ち出す理由

── まずは売り場をご覧になった率直な感想から聞かせてください。

三原康裕(以下、三原):ちょっとびっくりしますよね。こうやって商品が並ぶと、予想以上におもちゃ売り場みたいで可愛いなと思います。アパレルの世界では一着一着を吊るして見せるのが一般的なので、このように積み上げて見せることはあまりないから、すごく新鮮。もともと憧れがあったんですよ、この「雑貨感」に。

安藤公基社長(以下、安藤):サンダルが効いていますよね。アパレルも売り方によっては雑貨だと私たちは思っていますが、ロフトが取り扱うアパレルはレインウェアやソックス、ハンカチといった婦人雑貨系のものが多いので、今回は新たな良い取り組みをさせていただけたと感じています。新たにオープンした新宿三丁目店は標準的な規模ですが、もっと売り場面積が広い銀座店や渋谷店では、うちのイエロートルソーを使ったさらに立体的でインパクトのあるVMDになるのではないかと期待しています。

新宿三丁目ロフトの店頭の様子

── 今回、ロフトがプライベートブランドを打ち出すに至った背景を教えてください。

安藤:もともと取り扱う商品に制約を設けたくないと考えていました。ロフトが掲げている「トキの器」というコンセプトは、「自らの変化を恐れずに時代のトレンドやニーズをしなやかに切り取って、商品や売り場を通してスピーディーに情報発信をお客様にしていく」という館を目指して作ったものです。創業当時はDCブームでノベルティやスーベニアグッズを作るブランドが多かったことも後押しして、実はかつて、自主開発商品を展開していた時期もあったんです。ロフトのロゴが入った傘やスリッパ、ライターなど、色々作っていました。社内でも知らない人間の方が多いんですが、三原さんはそのことをご存知でしたよね。

三原:僕はこのお話をいただいた時に「スリッパを作りたい」と即答しました。30年以上前の話ですが、大学時代に「LOFT」のロゴが入った黄色いスリッパを見た、という強烈な記憶があったからです。なので、今回のデザインはイチから思いついたわけではなく、当時の思い出を表現したいという想いから始まったんです。

 田舎から東京に出てきたばかりのお金のない美術大学生だった頃、渋谷にあったロフトはまさに大都会の象徴でした。初めて行った時には、「ダンシングフラワー」が入り口にずらっと並んでいたのを覚えています。新しいアメリカの雑貨がどこよりも早く入ってきている場所で、田中一光さんがロゴを手掛けていたりと、“尖っているブランド”という印象が強いです。今回はそうした大学時代の思い出やノスタルジーから始まり、そうした印象を「変えないようにする」ところからデザインを作っていきました。

「思い出のスリッパ」はサンダルへと変換された

── ロフトでは、初期に展開していたロゴ入りの商品の生産を一度やめているんですね。

安藤:渋谷店を1987年に、梅田店を1990年にオープンした頃は、事業というより“家業”のような手作り感の強いブランドでした。売り場によって什器も違えば、什器同士の互換性も全くない。そんな家業から事業へと移行する中で、ある時期から「ショートタイムショッピング」という言葉が流行りだし、従来のロフトが目指していた「お客様に楽しんでもらうための時間消費型」の空間から、効率重視のつまらない空間になってしまった時期がありました。商品も面白くなくなって、「もうロフトのロゴ商品なんて作っても仕方がないな」と思って引き下げたんです。

 でも近年はローカリズムを重視した、個性のあるお店作りを推し進めているので、もうそろそろ、またロゴ商品を展開してもいいのではないか、と。

── プライベートブランドプロジェクトの全体像について教えてください。

安藤:今後は、3つの切り口でプライベートブランド事業に力を入れていこうと考えています。1つ目は、定番品をロフトオリジナルに置き換えていくことで利益改善を目指す「ロフトスタンダード」。2つ目は、他社との差別化を目的としたIPや企業の別注品を展開する「ロフトトレンド」。そして3つ目が、今回のようにロフトのロゴを使った「スーベニール(お土産)」をブランドやクリエイターさんとのコラボを通して展開していくことです。

おしゃれを狙うのはカッコ悪い

── いわゆる"ロゴドン"で、着る人を選ぶ挑戦的なデザインにも感じます。今回のデザインの狙いを教えてください。

三原:「コラボレーション」の価値は、全く違う価値観を持った会社同士が一緒に何かをすることによって化学反応が起こり、新しいマーケットが生まれたりすることにあると思います。コラボによって化学反応を起こすためには、相手の本質的な価値を掘り下げる必要があります。そうして考えていく中で、やはり僕が考えるロフトの価値ってロゴの持つパワーにあると思ったんです。

 もう一つイメージしたのは、海外のカフェやスーパーマーケットが販売しているTシャツやキャップといったスーベニアグッズ。例えばニューヨークの老舗のサンドイッチ屋さんにもイカしたTシャツを作っている店があるんですよね。僕も好きでよく買うんですが、その感覚に近いのかなと思います。

 逆に言えば、今では誰もが知っている「ロフト」をあえて打ち出す方が、僕たちの学生時代から続いている「ロフト」に対する感覚に近い表現ができるのではないかと考えました。“高級”なものよりも、ちょっと面白かったり可愛かったり気が利いているデザインに惹かれる時代だと思うので、会話が生まれるきっかけになるようなものが作れたらいいなと思います。

── ロフトの強みであるロゴデザインの美しさを今改めてストレートに打ち出す。

三原:歴史のある企業やブランドって、過去のものをリニューアルするイメージで結構ロゴを変えたりするじゃないですか。そんな中でも頑なに同じロゴを使い続けていることに魅力を感じるというか。丸と四角形だけでできているミニマムでグラフィカルな、田中一光さんのデザイン哲学が色濃く反映されているロゴなので、何も変えない方が良いと思っています。今回実現したアイテム数の数倍は商品化のアイデアを出しましたが、とにかく色々なものにただロフトのロゴを当てはめていくだけでも楽しくてモチベーションがあがりました。本当は全部作りたかったな。

ロフトのロゴで創業当時から唯一変化したのは、「白」を取り入れること。従来は黄色背景に黒文字だけだったが、白を取り入れることで柔らかい印象を持たせることが可能になった。

── ターゲット層は?

三原:ターゲットを絞らない方が今回のコンセプトに合っているなと思っています。僕ら世代からしたら懐かしくてメランコリックな気持ちになるし、アイコン的な意味合いの強いロゴなので、昔のロフトを知らない若い子にとっては新鮮にうつるかもしれない。幅広い体型の方が着やすいようにシルエットも少しゆったりめにしています。

 最近なんでもそうだけど、まるでセールストークのように「何を、誰に、どのように」という骨組みに当てはめてものを作っている。それがちょっと嫌なんです。もううんざりしてて。確かにわかりやすいから売れるものを作りやすいけれど、本当は共感を得る人だけが買えばいい。そのくらい、「わかりやすい」けど、「わかりづらいところ」を残したいなと思うんです。説明しすぎると面白くなくなっちゃうんだよね。

三原:パジャマにしても部屋着にしても、外着にしても良い。いろんな着方をする人がいて、それぞれが正しいんです。もう30年ファッション業界にいるけど、おしゃれってものがどんどんわからなくなっています。「これがおしゃれ」だと思う価値観は人それぞれ確かに違うので、「こういうのがおしゃれだ」っていう“下心”が見えちゃうと、商品としてはカッコ悪くなる。

 今回で言うと、例えばサンダルじゃなくてスニーカーにしたら下心が出ちゃうと思ったんですよね。下心が出そうで出ない、というのをフィロソフィーとして作っています。あ、でもキャップはちょっと下心出ちゃってますけど(笑)。

「ロゴを刺繍じゃなくてプリントにした方が下心は出なかったかも知れないけど、そこはアイテムとしての可愛さの方を優先しました」(三原)

── ロフトは中国を中心に海外展開も強化していますが、インバウンドへの認知拡大も狙いにあるのでしょうか?

安藤:今回のコラボについてスタッフにも意見を聞いてみたんですが、毎日ロフトのユニフォームを着て働いているような従業員は正直ちょっと驚いていました(笑)。でも、中国出身のスタッフは真っ先に「可愛い!」と言って飛びついてくれて、アパレルやファッションの専門学校出身者たちの反応もすごく良かったです。間違いなくインバウンドのお客さまにもウケると思っているので、インバウンド比率が40%を超えている銀座店と渋谷店での反響も期待しています。

── 現在は11月21日に開店した新宿三丁目店、銀座店、渋谷店限定で展開しています。

安藤:最初から大々的に広げるよりも、少しずつ情報を拡散していきたいなと思っています今後は天神や京都、ルクア大阪や新梅田などインバウンドに強いエリアにも展開していきたいです。関西はお客さまもノリが良いので、面白がっていただけるんじゃないかと思っています。

── 限定的にすることでロフト自体のブランド力を高めていきたいという考えなのでしょうか。

三原:結果的にはそうなるけど、そこまで戦略的に決めているわけではありません。ストラテジーが先行すると、どうしても到達点ばかりを見すぎてしまう。こういうものって商品でありながら、カルチャーだと思っているんですよね。そして、カルチャー=文化ってやっぱり遊びから生まれる。「ホモ・ルーデンス」という本の中にもありますが、楽しくないと文化になっていきません。そして、僕はロフトを文化的な場所だと思っているんですよ。もちろん商業的な世界にある存在ですが、僕らにとっては文化的なことに触れられる場所でもあったので、楽しみながらどのような反応をもらえるのかをみていきたい。

── 第1弾のアイテム以外にも色々な展開の構想があったそうですが、第2弾以降作りたいものは?

三原:ティッシュペーパーやトイレットペーパーを作りたいんですよ。ロゴを冒涜しているとかではなく、学生時代に一人暮らしをしていた頃、そういうものにこだわっていた時間が結構楽しかった。当時ロフトで売っていた変わったデザインのシャワーカーテンを買って使っていたんですが、一人暮らしを始めた頃ってそういうのが結構楽しくて、たとえティッシュペーパーだとしてもカバーにこだわろうとする感覚っていいじゃないですか。大学生の一人暮らしの部屋にあるものを全部作れたら楽しいなと思ったんですよ。布団カバーまで全て部屋中が黄色と黒と白だったら、狂気じみてるかもしれないけど、それはそれで面白いし、フェティシズムを感じる。色に選択肢が無い3色の縛りを徹底した方が強いものができるだろうなと思ったので、他の色のカラーバリエーションは作りませんでした。トイレットペーパーまで作り切りたいので、ロングセラーになって欲しいです。

安藤:確かに、ずっと長く残るものより、生活に根付いた気軽なものを作っていきたいですね。

最終更新日:

◾️ロフト:公式サイト

FASHIONSNAP 編集記者

橋本知佳子

Chikako Hashimoto

東京都出身。映画「下妻物語」、雑誌「装苑」「Zipper」の影響でファッションやものづくりに関心を持ち、美術大学でテキスタイルを専攻。大手印刷会社の企画職を経て、2023年に株式会社レコオーランドに入社。ファッション雑貨、アクセサリー、繊維企業を中心に取材。

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