2020-21年秋冬コレクション
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【密着】小高真理「マラミュート」クリエイティブが交差したヴィジュアル制作の舞台裏

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 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、渋谷パルコ屋上で開催予定だったファッションショーを中止した小高真理が手掛ける「マラミュート(malamute)」。コンセプトからシーズンイメージ、デザインの特徴まで、「伝える」ための方法を模索してきた小高は、ブランド初の試みとしてデジタルプレゼンテーションという方法を選んだ。ランドスケープ動画やルックで、2020-21年秋冬コレクション「One's Garden」はいかように、表現されたのか?コレクションを掘り下げるため制作現場に潜入した。

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 今回撮影したのは、3月18日12時30分からインスタグラム上で24時間限定配信したムービー、3月26日公開予定のイメージムービー、そしてルックの計3種のクリエイティブ。デジタルプレゼンテーションとして、ランウェイショーのように座席からモデルのウォーキングを見ている視点からiPhoneで撮影した15秒1コマのインスタグラムストーリーズ動画、特設サイトで4シーンが映し出されるランドスケープ動画が配信される。

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、朝7時にスタートした撮影は参加人数を絞り厳戒態勢の中で行われた。場所は原宿にあるギャラリースペース。奇しくも前回のショー同様、大粒の雨が降る中での撮影となった。撮影には、映像プロデューサーの鈴木謙太郎、撮影監督の大矢大介、空間デザイナーの吉添裕人、スタイリストの神田百実らが参画。小高が描く「One's Garden」のイメージをチーム全体で描き出した。なお、ランドスケープ動画に使用された楽曲は「羊文学」 などのプロデュースを手掛ける吉田仁とシンガーソングライター阿部芙蓉美が制作した。

 マラミュートのコレクションはデザイナー自身が過ごす暮らしの節々で、肌で感じ取り、心を動かされたことがスタートラインにある。その根底にある「いま、都市で暮らすこと」と「自分自身で考え表現すること」に関する問い掛けは、今シーズンの発表に際してもブランドが直面した重要な問いとなり、制作のみならずランウェイショー中止を決定してからの模索にも影響を与えたという。「One's Garden」では、
豊島美術館や現代美術家ジェームズ・タレルのランドアート作品などから影響を受け、人工的なランドスケープが広がる都市の片隅に作られた小さなポケットガーデンのようなものをイメージ。ポケットガーデニングという、自身の日常生活の空間を、自由な発想で自分の手によってより良い姿に変えていく個人的な所作が、都市に住む女性のメンタリティの部分と重なったことでこのテーマとなった。前シーズンの「The Restless Waves」コレクションでは、自身の体験をもとに緊張感や不穏といった繊細な女性像が核となっていたが、今回は川上未映子の「夏物語」からの影響もありそれぞれが自由に好きな選択をする女性の生き方、像を描いたという。

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 撮影会場には、ガルバリウム鋼板で作られたプロップが置かれた。これは前回のショー会場に設置された黒いオブジェクトを制作した空間デザイナー吉添裕人が手掛けたもの。ファッションショーのために4メートルを超えるオブジェを制作予定だったが、中止となり急遽この撮影のために新たに作り上げたという。「女性の強い意志をコレクションで表現したい」という小高の想いを受け、「庭が作り出されていく過程での所作をテーマにして、マラミュートが描く女性像を表現した」と吉添。園芸で使う支柱を生けたりと、庭を想起させるものに仕上げており、3月20日から29日の期間行われる展示会の什器としても利用される。

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 スタイリングを担当した神田百実との協業は、今回で4シーズン目。ヘアメイクを担当するTONI&GUYと一緒に、朝から夜にかけての1日の流れをルックで表現した。神田は「ショーと同じ考え方でスタイリングをすると、見てくださる方に正しく伝わらないのではないかと考えた」と話しており、ショーに向けて組んでいたスタイリングをばらし、再度デジタルプレゼンテーション用にスタイリングし直したという。ホワイトデニムにニットと同じフラワー柄をプリントしたセットアップ、HP(ヒューレット・パッカード)初のテキスタイル向けプリンター「HP Stitch」を用いた再生ポリエステル素材のワンピース、ボンディング加工をほどこしたウールコート、東レのウルトラスエードを手編みしたドレスなど、意匠を凝らしたアイテムの存在感を引き立たせることに注力した。アクセサリーは継続している「ソムニウム(somnium)」とのコラボレーションで、大ぶりなネックレスやイヤリングがニットを中心としたスタイリングにハードな質感をプラスした。

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 マラミュートの進化は、ウールボンディング素材をはじめとした布帛地アイテムに凝縮された。得意のニットでも袋ジャカードでデフォルメした花のモチーフを立体的にしたり、リブからガーターに編み地を切り替えることでシェイプを作り出したりと意匠は見られたが、小高自身「これまで以上のアップデートができた」と語る背景には、ニットでは作れないフォルムへの挑戦があったからだ。ニットで作ることが難しいハリ感やフレアシルエットを、ウールやポリエステルなどの布帛でいかに表現するか。そのアプローチは、ブランド初のプリントアイテムやウールボンディング素材のコートに落とし込まれており、ニットとの親和性を高めるため、フレアを大きくせず適度なボリュームに抑えたという。

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 9時間以上にも及んだ撮影は、21のルックを撮り終えて終了となった。13シーズン、6年半ブランドを展開してきた小高は「今回のように様々なクリエイターの方たちと協業できるようになって、クリエイションの幅が広がった」とブランドの成長を感じており、やむなくデジタルプレゼンテーションという手法に切り替えたが、手応えを感じていると振り返る。ビジネスも順調で、事前に行ったセールス向けの展示会では新たにユナイテッドアローズや高島屋などと取引が決まった。「MDが課題。今後もしっかりウェアで勝負していきたい」と意気込んでおり、来季以降もシーズンテーマやコレクションにあった発表方法を模索していくという。

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