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レディ・トゥ・ウェアを軸に拡大する「マリメッコ」の世界戦略

左:マリメッコのCMOサンナ-カイサ・ニッコ氏、右:マリメッコのクリエイティブディレクターレベッカ・ベイ氏

Image by: FASHIONSNAP

左:マリメッコのCMOサンナ-カイサ・ニッコ氏、右:マリメッコのクリエイティブディレクターレベッカ・ベイ氏

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レディ・トゥ・ウェアを軸に拡大する「マリメッコ」の世界戦略

左:マリメッコのCMOサンナ-カイサ・ニッコ氏、右:マリメッコのクリエイティブディレクターレベッカ・ベイ氏

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 日本国内では現在約40店舗を展開し、確固たる存在感を放つ「マリメッコ(Marimekko)」。象徴的なプリントは日本のさまざまな家庭の食卓や寝室など、生活のワンシーンを彩っているが、インパクトのあるデザインや色彩ながら、なぜ幅広い客層に親しまれているのか。

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 東京・四ツ谷の老舗ジャズ喫茶「いーぐる」で開催された「Bar Unikko」のために来日したクリエイティブディレクターのレベッカ・ベイ(Rebekka Bay)氏とチーフマーケティングオフィサーのサンナ-カイサ・ニッコ(Sanna-Kaisa Niikko)氏に、普遍的なその魅力の正体と日本市場での成長の背景や今後の世界展開に関する展望を聞いた。

マリメッコのポスターや写真が飾られたいーぐるの入り口

どんな場所にも「ずっとそこにあったかのように馴染む」という価値

 アパレルをはじめインテリアファブリックから食器まで、ライフスタイルカテゴリーが世代や属性を問わず、幅広い層から根強い支持を集めているマリメッコ。同イベントでは、老舗ジャズ喫茶「いーぐる」店内の装飾品や小物が全てマリメッコの生地やアーカイヴ写真などに置き換えられたが、その装飾は不思議と“以前からずっとそこにあった気がする”と錯覚させるほど空間に馴染んでいた。

老舗ジャズ喫茶「いーぐる」に溶け込むマリメッコのシグネチャープリント「ウニッコ(Unikko)」

店内には、フィンランドから持ち込んだ「お土産」も飾られた。

 クリエイティブディレクターのベイ氏は、「何をするにしても、もともと存在していたものを変化させたり邪魔することなく、そこに彩りを添える。ディテールは変化していても何かを変えたという印象を全く感じさせないことが今回の空間づくりのポイントであり、マリメッコのフィロソフィーそのものでもあります」と語る。インパクトのあるデザインやカラーパレットでありながら、なぜマリメッコの柄はどんな空間にも馴染むのか、ベイ氏はその理由を「マリメッコのプリントは、そのデザインがいつの時代に生まれたものなのかを正確に特定するのが難しいほどのタイムレスなデザインを本質としています」と説明する。特に誕生から60年を迎えた「ウニッコ」はその象徴的な存在。「花」という世界共通の普遍的な魅力を持つモチーフを有機的なフォルムで大胆に抽象化したこの柄は、地域性や時代にとらわれず世界各国の風景に自然に溶け込む。

 ジャズ喫茶とマリメッコという意外にも思われる組み合わせは、創業者のアルミ・ラティア(Armi Ratia)の「マリメッコは、花屋でもアイスクリーム屋でも、モダンジャズでも、人々に喜びをもたらすものであれば何にでもなれた」という言葉から着想を得て企画された。「日常の人々の生活に喜びを与える」という理念はホームウェアからアパレルまで幅広いカテゴリー展開を支える基盤となっており、どの国の家や店などの空間にも、花を飾ったように自然と馴染み彩りを加える普遍的なデザインこそが、世界でシェアを広げる理由のひとつなのかもしれない。

ウニッコを生んだプリントデザイナー マイヤ・イソラ(Maija Isola )の写真

Bar Unikko のユニフォームのために製作した「いーぐる」のロゴがプリントされたマリメッコの Jokapoika シャツ

ドレスは「キャンバス」から「洋服」へ

 ライフスタイルカテゴリーの印象が根強いマリメッコだが、近年はレディ・トゥ・ウェアの成長がその売上を支える新たな柱として存在感を強めている。2020年にマリメッコのクリエイティブディレクターに就任し、ベイ氏が最重要課題として設定したのはブランドとしてグローバルな存在感を増していくこと。特に注力する領域として掲げたのがレディ・トゥ・ウェアで、狙い通りレベッカ氏就任以降の同カテゴリーは堅調に売り上げを伸ばし続けている。この傾向は日本に限った話ではなく、ブランドのヘリテージを維持しながらもモダンな要素も兼ね備えたデザインへのアップデートを重ねる中で、長年にわたり熱心なファンからの支持を集めると同時に、新しい顧客層の獲得にも成功していることが近年の成長に繋がっているという。

クリエイティブディレクター レベッカ・ベイ氏

 ベイ氏はマリメッコに参画する以前、「ユニクロ」のグローバルイノベーションセンターでクリエイティブディレクターを務めていた。過去には「ギャップ(Gap)」や「コス(COS)」でもクリエイティブディレクターを歴任。「私がこれまで携わってきたブランドは、いずれも素晴らしい品質と普遍的な価値を持つものでした。ブランドのテイストは違っていても、多くの人にとっての良い価値を作るという考え方は共通しています」と振り返る。

フィンランド語で“マリのドレス”を意味する「マリメッコ」。「ブランドの名前からして、レディ・トゥ・ウェアは重要な存在なんです」(CMO サンナ-カイサ・ニッコ氏)

 ベイ氏は、かつてのマリメッコのドレスが「プリントを表現するためのキャンバス」として捉えすぎていた側面があったのではないかと指摘する。「就任してまず私が始めたのは、マリメッコが持つ3500種類以上のプリントアーカイヴに敬意を払うと同時に、ドレスを単なるキャンバスとしてではなく着用するものとして捉え直し、より明確なシルエットやフィット感、コレクションとしての統一性を確立することでした」(ベイ氏)。また、コペンハーゲンやミラノ、東京のファッションウィークへ参加するなど、ファッションの訴求に注力してきた。

Image by: FASHIONSNAP(Koji Hirano)

マリメッコが東京で発表した2024年秋冬コレクション

 昨年発表されて以降、日本に限らず多くの国で人気を集めているというデニムコレクション「マリデニム(Maridenim)」も、同氏による“改革”を象徴する取り組みのひとつ。現代人のライフスタイルに合わせてレディ・トゥ・ウェアコレクションを拡大していくにあたり、デニムは非常に適したカテゴリーだった、とベイ氏。マリメッコは1960年代に「デニムと合わせるためにデザインされたTシャツ」を発表していたことがあったが、肝心のデニムをデザインするには至らなかったという。満を持して開発されたマリデニムは、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の原則に基づいてデザイン。ブリーチ部分や色落ち部分はレーザーで表現することで、生産工程における水の使用量を減らすなど、構想段階からサステナビリティは重要視されている。

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ミラノ、ヘルシンキに続く日本の立ち位置と海外戦略

 日本はマリメッコにとって最も重要な市場のひとつ。マリメッコで数々の要職を長年歴任し現在はマーケティング部門のヘッドを務めるニッコ氏は「フィンランド人と日本人は文化的なつながりを持っているように感じています」と語る。豊かな自然との共生の意識など、文化的共通点の多いフィンランドと日本。フィンランド人が日本に愛着を持つのと同様に、日本の長年のマリメッコファンたちの多くは、次第と北欧やフィンランド自体への愛着を深めている。昨年原宿で開催した「Marimekko Day」や「Bar Unikko」のような取り組みを通じて、空間全体でブランドの価値観を表現するローカルを重視する取り組みも、長年にわたる顧客との密接なコミュニティの形成・維持と新規層の獲得に寄与している。

ジャズ喫茶「いーぐる」に並ぶスペインのインテリア誌 Apartamento(アパルタメント)など

 今後の成長戦略については、現時点でも全体に対し多くの比重を占めるアジア太平洋地域を重要なエリアと位置付けつつ、10月末に新たな旗艦店をオープンしたパリやニューヨークといった世界の主要都市を起点にヨーロッパや北米でのプレゼンスも高めていきたい考え。現時点で日本国内には約40店舗を構えるのに対して、ニューヨークでは1店舗とECのみの展開と、まだ規模は小さいが、日本およびアジアの諸地域と同様に着実に顧客のエンゲージメントを高めコミュニティを築き上げていくという姿勢は変わらないとニッコ氏は説明する。

イベントのために作られたBar Unikko のコースター

 世界的な成長を目指すと同時に、ファッション・ライフスタイルブランドに求められるサステナビリティについては、「1960年代に作られたドレスが今日でも同じように魅力的であるように、10年後も色褪せない価値を提供すること。何世代にも受け継いで身につけてもらえるものを作ることが結果的にサステナビリティにも繋がると信じています」とニッコ氏。来年には現状よりもより厳格な基準を自社で設定し、使用するマテリアルや製造過程のサステナビリティも推進していくという。日々加速するトレンドの中でも、普遍性と愛着を重視したものづくりによって持続可能な成長を目指す。

最終更新日:

◾️マリメッコ:公式オンラインストア

FASHIONSNAP 編集記者

橋本知佳子

Chikako Hashimoto

東京都出身。映画「下妻物語」、雑誌「装苑」「Zipper」の影響でファッションやものづくりに関心を持ち、美術大学でテキスタイルを専攻。大手印刷会社の企画職を経て、2023年に株式会社レコオーランドに入社。ファッション雑貨、アクセサリー、繊維企業を中心に取材。

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左:マリメッコのCMOサンナ-カイサ・ニッコ氏、右:マリメッコのクリエイティブディレクターレベッカ・ベイ氏

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