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【連載:私が黒髪をやめた話】3人目-山田友佳里さん 33歳 編集者

Image by: Miyu Takaki

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私が黒髪をやめた話

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ある日、私は黒髪をやめ、金髪にした。
理由はたくさんあった。凡人だと思われることが嫌だった。気が弱い女のように見られることが嫌だった。少しでも若く見られたかった。
黒髪をやめたことで、自分を守る為の鎧を身につけたような気持ちになった。

高貴さの象徴ともされるブロンドヘアー。
不良・反抗などのイメージを持たれていたヘアブリーチ。
アニメキャラを彷彿ともさせるカラフルなヘアカラー。

さまざまな選択肢がある中で、私が出会ったあえて“黒髪をやめた人たち”の話。
3人目は、取材当時は編集者として働き33歳の時の山田友佳里さん。

山田友佳里さん/33歳/編集者

初めて彼女に会ったのは、ワークショップイベントだった。
私がそのイベントの記録カメラマンをしていて、彼女は参加者だった。恐らく5~6年前のこと。

彼女は明るい髪色で目立っていたし、お洒落な雰囲気を纏っていたので印象に残っていた。
その時は少ししか話をする時間がなかったけれど、仕事のこと、本が好きなこと、最近ハマっていることなどを話した気がする。その場で互いのSNSをフォローし合った。

しばらく彼女に会うことはなかったけれど、ずっとどこか気になる存在だった。
SNSを通じて彼女がブリーチ髪であることは知っていたし、話を聞いてみたいと思い、思い切って連絡をしてみた。
彼女は撮影とインタビューを快くOKしてくれて、久しぶりに会うことになった。

会う約束をしていた日は雨予報。
彼女は癖っ毛で、雨の日は湿気で髪の毛が思い通りにならないことを少し気にしていた。
当日の朝は土砂降りの雨。見事に天気予報が当たってしまったけれど、待ち合わせの駅に着くと雨はもう上がっていた。

駅から近くの公園まで歩いた。
さっきまで土砂降りだったせいで人は少ない代わりに、雨に濡れた土の匂いで公園中が満たされていた。 

大きなグラウンドの横で彼女の写真を撮った。
雨上がりの公園へ、散歩に来た人がどこからともなく現れてくる。
公園のベンチは雨に濡れており到底乾きそうにない。近くのカフェへ移動して話を聞かせてもらうことにした。

早速「どうして黒髪をやめたんですか?」と質問をした。最初にブリーチをしたのは高専時代。10年以上前のこと。
高専は高等専門学校の略称で、簡単に言うと5年制の高校のようなもの。
途中でのクラス替えはなく、5年間同じクラスメイトと過ごす。クラスの皆にはあまり馴染めていなかったという。
そんな彼女が文化祭の実行委員になったことで、クラス外の友達も増え交友の輪が広がっていく。
そして文化祭を機に髪を明るくした。19歳か20歳ごろの時。
同時にパーマもかけて、当時はまだケアブリーチなんて髪に優しいブリーチ剤なんてものはなかった為、髪の毛はすごく傷んでしまった。

その後、4年制大学へと編入。大学卒業が近くなっても行きたい就職先は定まらず、大学院へと進んだ。
更に大学院が終わりに近づいても、次に行きたいところは見つからなかった。
けれど周りの同級生たちはどんどん進んでいく。皆リクルートスーツを着て、髪を黒くした。
みんなが均一化された就活生になっていくことに強い違和感を感じ、彼女は再びブリーチ髪にした。
その当時、彼女はピアスも沢山開けており「ちょっとした反抗心があったのかも」と話した。

黒髪をやめて変わったことを聞くと、自分が明るくなったと思う、と話した。
併せて周りの反応を聞くと、「覚えていないです」と。
「記憶から消してしまっているのかも、きっと何かしら言われたのだと思うけど......」 。

実家がある石川県へはあまり帰っていない。
奨学金を借りていたから、美容院通いをして「余計なものにお金をかけるな」などと、とやかく小言を言われるのが嫌だった。
彼女にとっては美容院代が自分を明るく保つ為の必要経費でも、当時の両親にとっては“余計なもの”と思われていたのかもしれない。

彼女には2~3歳上の尊敬できる女友達が居る。
その子もずっと髪の毛がハイトーンカラーで、その子が暖色系にしたら彼女は寒色系にしたり、ツインズのように色を変えて楽しんでいる。
その子とは最近観た映画を教え合ったり、旅行に行ったり、とても大切な存在らしい。
学生時代は周りの同級生と相反する髪色にしていたことを考えると、きっと心地よくとても大切な存在なのだろうと思う。

「いつまで金髪にしている予定ですか?」と聞くと、「いつまでだろう?」と質問された。
彼女は少し考えた後、「小学生の頃から白髪が生えているから、地毛がいっそ全部真っ白になったらかな」と笑って話した。 

雲が去り、空はすっかり明るくなっていた。
ブリーチ髪は、社会への鬱屈とした気持ちに対するような、彼女の中にあるパンクロックな一面の表れでもあったのかもしれない。
黒髪だった期間、金髪だった期間、多感な時期にどちらも経験した彼女。
その経験を経て、きっとどんな髪でも自分自身は変わらない、と話してくれた。

会話の中で彼女はふと「本に携わっていると、精神衛生上とても良い」と言っていた。
本を読んでいたり、本屋さんにいるととても落ち着くのだそうだ。
いつか本屋さんを経営したいと話していた。彼女がお店をオープンしたら開店祝いを持って行こう。
その時も彼女はまだ金髪でいるのかな?

「今度一緒に映画でも観に行きましょうね」と話し、駅へと戻る彼女を見送った。 

髙木美佑
写真家。東京都在住。主にセルフポートレートと文章を用いて、日々の記録のように取り巻く生活と自己との関わりをテーマに制作しています。初めてブリーチをしたのは高校3年生の冬休み。

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