「参加していなかったら今の自分の活動はない」若手の登竜門「NFDT」の魅力とは
ファッションコンクール「NFDT」出身者の現在

常川遼太(左)、立澤拓都(中央)、森永邦彦(右)
Image by: FASHIONSNAP

常川遼太(左)、立澤拓都(中央)、森永邦彦(右)
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常川遼太(左)、立澤拓都(中央)、森永邦彦(右)
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2023年から始動した学生向けファッションコンテスト「Next Fashion Designer of Tokyo 2026(以下、NFDT)」。東京都が主催となり、東京から未来を担う若手デザイナーを生み出すこと、そして世界で活躍できる人材を育成することを目的に設立された。同コンテストの特徴は、各審査ごとに現役のファッションデザイナーからのレクチャーや、ワークショップなど参加した全員の個性を活かすような実践プログラムを組んでいること。そうした支援内容をベースにしながら、受賞したらすぐにブランドを立ち上げるというわけではなく、コンテスト後も彼らを見守りながらサポートを続ける様子も印象的だ。第2回大賞受賞者の立澤拓都、第2回ファイナリストの常川遼太に加え、同年度から審査員を続けている「アンリアレイジ(ANREALAGE)」デザイナーの森永邦彦を迎えて、同コンクールの魅力や参加後も続く交流について話を聞いた。
目次
50枚のデザイン画で掴み取ったチャンス
── 応募したきっかけを教えてください。
立澤拓都(以下、立澤):実は第1回のNFDTにも応募していたのですが、一次審査で落ちてしまって。その経験がすごく悔しかったので、翌年もリベンジの意を込めて再チャレンジしました。
常川遼太(以下、常川):僕も同じく、第1回開催時には落選しました。でもやっぱり諦められなかったのは、審査員として活躍しているデザイナーの方々からさまざまなことを学べるチャンスを掴みたかったから。次の年に応募する際は、前年度の会場の雰囲気や受賞者の作品を入念にリサーチして臨みました。
── もう一度応募するにあたって、工夫したポイントなどはありますか?
立澤:初めて応募したときは、用紙の指定サイズがなかったので、とにかく目立とうと思って、A1やA2サイズに描いたデザイン画を10枚ほど提出しました。次の年からA4サイズの規定が出来たこともありましたが、自分なりに反省を活かして、数で勝負しようと思いました。応募者数やファイナリストに残る人数を予想して、確率を割り出した結果、50枚ほどのデザイン画を提出しました。でもただ闇雲に数を出せばいいということではないとも思っていたので、1つのコレクションを制作する気持ちで「ほころび」というテーマのもと50ルック分イメージして描いていきました。

「Next Fashion Designer of Tokyo 2024」応募時に立澤拓都さんが提出したデザイン画
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「Next Fashion Designer of Tokyo 2024」大賞を受賞した立澤さんによる作品「ほころび」
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── 森永さんは、デザイン画を見た時の印象を覚えていますか?
森永邦彦(以下、森永):立澤くんは、やはり圧倒的な量が印象的でしたね。でもひとつひとつ見ていくと、バリエーションや緩急があったり、抽象的なものから具体的になっていく流れもあったり、どれを見てもテーマがしっかりと表現されていて。本当にこれらが作れるんだったら見てみたいなと思うデザイン画でした。
── 常川さんはいかがでしたか?
常川:僕の場合は、今のお話とは逆で2枚だけを集中して提出しました。デザイン画のインパクト性、抽象性にもこだわりながら、デザイン画をちゃんと説明するようなストーリーをテキストでも書きました。枚数は少なくても、その分、1枚ずつに想いを込めました。
森永:常川くんのデザイン画を見た時に、確固たるコンセプトが伝わってきました。みんなが普段は目を向けないようなところに、自分の制作をおいて取り込もうとしている姿勢が印象的でしたね。光が当たらないところであったり、みんなが破棄していくようなものや価値をファッションに変えていこうとしているというか。実際に作っている作品を見ると、手が込んでいることがわかりますが、デザイン画からもコンセプトの部分がどのように立体的に仕上がるのか期待させる内容でした。ふたりともに共通して言えるのは、表現したい自分の世界観をベースに今の時代感もあって、最後まで形にできる能力もデザイン画からイメージできたところでした。

「Next Fashion Designer of Tokyo 2024」応募時に常川遼太さんが提出したデザイン画
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「Next Fashion Designer of Tokyo 2024」最終審査で披露された常川さんによる作品「Tokyo toile」
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── 審査が進むにあたって、ワークショップやレクチャーなどを経て印象的だった体験やフィードバックはありましたか?
立澤:一次を通過したあとに、森永さんの講義を受ける機会がありました。その時に、森永さん独自のデザインへの考え方として、日常と非日常をコントラストにしながら制作していく姿勢を知れて。その上で、僕から実際にテキスタイルデザインを提案した時も、「だた壊すことは誰にでもできるから、個性が宿る壊し方を意識するように」とフィードバックいただけたことが、すごく印象に残っています。その後、テーマに沿った自分らしい壊し方に焦点を当てて、完成まで取り組めたので、フィードバックがあってこその大賞受賞だったと思います。
常川:僕も同じく、森永さんの講義を聞く中で、ブランドとして生地や形からさまざまな角度で挑戦した結果、やっぱり作りとしての完成度が高まっていることに感銘を受けました。僕の作品は、ベースの服の上に、ボロボロだった生地を再構築して形にし、トワルの過程を大事にするものでした。一歩間違えると、ただ単にぐちゃぐちゃしてしまう可能性もあるので、最初は違う作り方も考えたこともありましたが、森永さんの講義を受けてやっぱり今の方法で完成度を高めていこうと決心できました。1着に5ルックの再構築した服を取り入れ、廃棄生地を再構築したり、それらにプリントしたりするような複雑な工程でもパターンを心がけることで、街にも着ていけるような仕上がりを目指すことができました。

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── 最終審査に向けておふたりが形を仕上げていく中で、森永さんが感じたことはありますか?
森永:みんな表現している世界はあれど、最初はすごく抽象的になりがちなんですよね。でも実際に服に向き合うと、もっと近い距離感で見えてくるものがあります。実はデザイン画から想像するような技法と自分らしく作る表現力の間には、ギャップがあった方がいいんです。なぜなら、その溝によって服としての新しさが生まれるから。そうした点で、ふたりとも作り方がデザイン画通りに単に作るのではなく、相当な細部までこだわっていたと思います。立澤くんなら、一見白に見えるところを細かいパーツで組み合わせていて、常川くんならトワルをしっかり作り、立体的な切り替えをパターンで構築していて。そうしたディテールへのこだわりは、最終的にはプロダクトとしてお客さんが手に取った時にも重要なポイントになると思います。発想やデザインの芯の強さを大切にし、そのうえで形にするときは、あえて遠回りでも人とは違う方法や独自のテクニック、アイデアにこだわってものづくりをしてもらいたいなと考えています。
── 審査する上で、大切にしているポイントはありますか?
森永:このコンテストのコンセプトである、「世界に通用するファッションブランドを育成する」という目的をまずはベースにしています。その上でクリエイションだけではなく、人が着用した時にしっかりと新しさを感じられるかということも基準にしています。それらが満たせる服は、マーケット性があり、時代性もあるものだと思うので。だから、いわゆるファッションから遠ざかってしまうものはこのコンテストでは除外しています。ファッションの範囲をすごくギリギリの境界線で、超えるか超えないかくらいのバランスで作れそうな方を選んでいます。

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── ファッションを超える・超えない境界線は具体的にいうと?
森永:人が着て歩いて、そこで良さを感じられるかどうかですね。たとえば、一見、展示として巨大でインパクトがあるものでも、着てみるとオブジェになりすぎてしまうという作品は評価しないですかね。
── そうした意味でも、NFDTの最終審査にファッションショーが盛り込まれていることにも意味が出てきますね。
森永:ファッションショーは着る人の身体と、どのような距離感で自分のブランドを作りたいか見える瞬間だと思うので。そこは意識的に見るようにしています。
パリコレの舞台へ コンテストが生み出すコミュニティと化学反応
── コンテストのあとも、3人の交流は続いていると伺いました。実際にアンリアレイジのデザインチームでサポートする場面もあるそうですね。
常川:コンテストの後に行われる懇親会で、森永さんが展示会においでよと誘ってくださったことがきっかけでした。アンリアレイジ オムのファーストコレクションの展示会だったこともあり、僕の造形やものづくりにも共鳴することが多くて、気づいたら展示会に1時間ほど滞在していました。僕のものづくりの考え方に対して、森永さんに「そういったところにやっぱり価値があるし、目を向けることの大切さもあるから信じて大丈夫」と仰っていただけたことがすごく励みになって。森永さん以外のチームの方々ともお話しするなかで、改めてアンリアレイジで経験を積みたいと思い、自分から連絡しました。
立澤:僕も懇親会で森永さんから名刺をいただいたことをきっかけに連絡をして、アンリアレイジでアシスタントとして働かせていただくことになりました。なので、先にアンリアレイジで働き始めていた常川くんを見た時は、「あれ?知ってる人がいる......?」とびっくりして。
常川:ほかにもNFDTの最終候補者がアンリアレイジの現場にいて、最終的にみんなが集まって面白かったよね。

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── コンテストも実践の場を目指すプログラムが豊富ですが、実際にブランドで働いてみていかがですか?
常川:学ぶことばかりですね。自分ひとりではできなかった経験を本当にたくさん吸収させていただいています。毎日勉強で、刺激的ですね。
立澤:今まで見てきてたものとはレベルが全然違うので、驚きの連続です。
森永:2025年秋冬のパリファッションウィークも一緒に同行したよね。挑戦的なコレクションで、僕も何が起きるかわからないような状態のなか、作ってもらっていて。ずっと服作りをしていると、ある程度完成度の担保はできるのですが、今回は全く使ったことのない技術を使うというところからスタートしました。さらにそれをショーで人に着せて見せなければならなかったので、本当に挑戦しかないコレクションだったんですよね。
常川:初めてのパリ、パリファッションウィークだったので新鮮な体験ばかりでした。

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── ショーではどのようなサポートを行いましたか?
常川:光る服や、ボックスシルエットなどを担当しました。
立澤:僕はアクセサリーや小物の制作、デザイン面でサポートしました。
森永:ふたりに勉強させるというより、本当に一緒にコレクションを作るという感覚でした。なので、指示を出してやってもらうというよりも一緒に考えながら、このコレクションで出すべき答えを導き出すようなプロセスでしたね。ものづくりすることにおいては、弊社の社員ともあくまでフラット。新しいことをやる時って上下の関係は必要ないと思っているので、みんなで一緒にコレクションを作るというチームワークを体験してもらえたと思います。

アンリアレイジが今年3月、パリで発表した2025年秋冬コレクションのバックステージの様子

Image by: 東京都
常川:組織の中でクリエイションをする難しさや、規模感の大きさを初めて感じられた経験になりました。たくさんの学びに出会えたこの1年だったと思います。
立澤:1つのゴールに向かってチーム全体が懸命に動くなかで取り仕切る森永さんの姿を見て、より尊敬の念が深まりました。
森永:ものづくりのテクニックも大事だけれど、ブランドを続けるというのは、色々な人たちと1つのチームになることが必要。そうした環境のなかで世界観を100%出す過程は、インディペンデントのブランドとして活動するときに、いつか活かされる経験になると思います。

Image by: FASHIONSNAP
受賞することがゴールではない
── NFDTは受賞がゴールではなく、あくまで若手デザイナーの輩出にこだわっているように感じました。
森永:もし候補者が今後ブランドを始めることになったら、それぞれの立場からサポートできることはするという意識と体制をNFDTの審査員全員が持っていると感じます。もちろん、大賞を取ったことは本当に素晴らしくて1つのゴールだと思うのですが、賞が取れなかったとしても、また別の違う未来が広がる可能性があるコンテストとして、NFDTは貴重だなと思います。
── コンテストに出すだけで燃え尽きてしまう人もいますが、そもそもデザイナーのキャリアは長いもの。作品をつくるだけでなく、ファッション業界へ踏み出す入り口も自分で探さなければなりませんよね。
森永:その点、LVMHプライズがわかりやすい例です。僕はグランプリは逃しましたが、応募をきっかけにLVMHの方々と交流が続き、「フェンディ(FENDI)」とのコラボレーションにも発展しました。挑戦したこと自体に大きな意義があり、ファッション人生を変える転機になったと感じています。NFDTも、同じような意識と目的で長く続けていけたらと思っています。

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── 最後に、今後コンテストに応募しようと思っている方へのアドバイスをお願いします。
常川:NFDTがなかったら、自分は今頃何をしていたんだろうと思います。森永さんと出会うきっかけにもなりましたし、学校外での人との出会いやつながりも大切にできる場だと思います。
立澤:実際に活躍されているプロの方々からフィードバックがもらえる機会は本当に貴重なことなので、チャンスしかないコンテストだと思います。
森永:コンテスト終了後も、こうして参加した候補者同士が同世代間で繋がることで、よりデザイナーを目指す志が強固なものになっていると感じます。応募した方々の書類は、時間をかけてすべて丁寧に毎回見ています。そのため候補者たちのことはよく覚えていますし、その人たちがどうなっていくのかという未来も考えます。だから、まずは応募してみてください。挑戦することで、新しい扉が必ず開くと思うので。
最終更新日:
【応募概要】締め切りは7月18日(金)
Next Fashion Designer of Tokyo 2026
■応募資格
都内在住又は在学中の学生・生徒(グループ申請も可)
■応募締切
2025年7月18日(金)※当日消印有効
■選考フロー
- WEBまたは郵送にて応募
- 一次審査 - デザイン画による審査
- 制作補助・ワークショップ - 一次審査通過者に対し以下の支援を実施
・材料費の負担軽減(上限5万円)
・制作アドバイザーによるアドバイス
・特別アドバイザーによるワークショップ
・世界で活躍するデザイナーとの交流 - 二次審査 - 制作補助・ワークショップを活用して制作したルックに関するプレゼン・質疑応答等を実施。デザイン画を公式SNSで公開し「いいね!」による人気投票を実施。
- ビジネス体験 - 二次審査通過者に対し以下の支援を実施
・材料費の負担軽減(上限10万円)
・MD(マーチャンダイザー)等との協働による商品化体験・プロモーション体験 - 最終審査(ショー形式)
■受賞特典
①賞金
・東京都知事賞 大賞 ※各部門1名(またはグループ):賞金100万円
・東京都知事賞 優秀賞 ※各部門2名(またはグループ):賞金50万円
・特別選抜賞 ※各部門1名(またはグループ):賞金50万円
②都内商業施設等で巡回展示
③ブランド立ち上げをサポート
④パリファッションウィークでの発表をサポート
Sustainable Fashion Design Award 2026
■応募資格
都内在住又は通勤・通学しているアマチュアデザイナー(グループ申請も可)
■応募締切
2025年7月18日(金)※当日消印有効
■選考フロー
- WEBまたは郵送にて応募
- 一次審査 - デザイン画による審査
- 制作補助・ワークショップ - 一次審査通過者に対し以下の支援を実施
・材料費の負担軽減(上限5万円)
・制作アドバイザーによるアドバイス
・特別アドバイザーによるワークショップ(素材の活用やブランド設立のポイント)
・世界で活躍するデザイナーとの交流 - 二次審査 - 制作補助・ワークショップを活用して制作したルックに関するプレゼン・質疑応答等を実施。デザイン画を公式SNSで公開し「いいね!」による人気投票を実施。
- ビジネス体験 - 二次審査通過者に対し以下の支援を実施
・材料費の負担軽減(上限10万円)
・MD(マーチャンダイザー)等との協働による商品化体験・プロモーション体験 - 最終審査(ショー形式)
■受賞特典
①賞金
・東京都知事賞 大賞 ※各部門1名(またはグループ):賞金100万円
・東京都知事賞 優秀賞 ※各部門2名(またはグループ):賞金50万円
・特別選抜賞 ※各部門1名(またはグループ):賞金50万円
②都内商業施設等で巡回展示
③ブランド立ち上げをサポート
④パリファッションウィークでの発表をサポート
photography: Masahiro Muramatsu , text: Yoshiko Kurata(LESEN) | edit & project management: Shiori Nagaoka (FASHIONSNAP)
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