ADVERTISING

“遊び心あるものづくり”に回帰、最新プロダクト群で見えたナイキの新章

ナイキの最新テクノロジーを反映した4つのイノベーション

今回、オレゴン州の米国本社で発表された4つのイノベーション

Image by: NIKE

ナイキの最新テクノロジーを反映した4つのイノベーション

今回、オレゴン州の米国本社で発表された4つのイノベーション

Image by: NIKE

“遊び心あるものづくり”に回帰、最新プロダクト群で見えたナイキの新章

ナイキの最新テクノロジーを反映した4つのイノベーション

今回、オレゴン州の米国本社で発表された4つのイノベーション

Image by: NIKE

 「ナイキ(NIKE)」が10月23日、最新テクノロジーを駆使したプロダクト群を発表した。ブランドの象徴である「空気(Air)」を応用したアパレル「サーマフィット エア ミラノ ジャケット」のほか、未来を感じさせる電動フットウェアシステム「プロジェクト・アンプリファイ」、画期的なサステナブルテクノロジー「エアロフィット」、そして脳神経科学を融合したシューズ「ナイキ マインド」の4プロダクトである。これら4つの基軸には、ナイキのブランド哲学と、アスリートへの揺るぎないコミットメントが込められている。

ADVERTISING

 昨年のトップ交代を経て、プロダクト重視の体制を強化し「アスリートファースト」への回帰を図る同社が、新たなイノベーションを通じて見据えるものとは? オレゴン州に位置する米国本社での取材をもとに、今、ナイキが描く“新章”の全容を紐解く。

空気(Air)を取り入れた「サーマフィット エア ミラノ ジャケット」。ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックで、アメリカ代表選手団がメダルセレモニージャケットとして着用予定。

Image by: NIKE

D2C戦略の苦境から「原点回帰」へ

 スポーツ業界を牽引してきたナイキは、厳しい業績不振に直面している。ランニングシューズ市場では「オン(On)」や「ホカ(HOKA)」といった新興ブランドが急速に存在感を高める一方、同社はD2C戦略への大規模な転換以降、販売に苦戦。過去数年にわたり、直営店販売とEC事業を強化するため、アマゾンやフットロッカーといった主要量販店への卸売りを制限した結果、販売チャネルの縮小を招き、主力である直営店売上も減少する事態となっていた。直近の2025年5月期の業績は、売上高が前期比で約1割減、営業利益も大幅に減少するなど、深刻な減収減益に見舞われ、2024年12月~2025年5月期決算は5四半期連続で減収を記録。立て直しが求められていた。

 こうした苦境に対し、ナイキは大きな舵を切った。2024年10月、過去32年間にわたってナイキの要職を務めたエリオット・ヒル氏を新たなCEOに迎え、「原点回帰」を掲げて事業の転換を図っている。同氏の就任以降、最優先課題として取り組んできた卸売事業は回復基調にあり、直近の決算では前年比7%増、特に北米市場では11%増と復調を見せた。売上高全体もわずかながら増加に転じたものの、純利益は依然として大幅な減少を記録しており、収益性の改善は喫緊の課題となっている。こうした状況を踏まえ、看板商品である既存ランニングシューズのカテゴリー再編を進めるなど、ブランドの核となる領域での立て直しに注力している。

企業文化の変革が支えるイノベーション

 トップ交代に伴い、社内体制も変化を遂げている。長年、フットウェア部門のバイスプレジデントを務めてきたフィル・マッカートニー氏が、ナイキの全てのプロダクトを司る新たな役職「最高イノベーション・デザイン・プロダクト責任者」に就任。プロダクト、デザイン、イノベーションを一つの組織に統合することで、社内全体でアスリートに向き合ったものづくりへの意識が強まっているという。

ナイキの新作シューズのプロトタイプと設計図

今回、発表された「ナイキ マインド」のプロトタイプと設計図

Image by: NIKE

 こうした社内変革の背景にある企業文化について、ナイキのチーフイノベーションオフィサーを務めるトニー・ビグネル氏は「エリオットがCEOに就任したことで、遊び心のある攻めた商品開発ができるムードが戻ってきたように感じます」と話す。「何かを作る時、チームスポーツと同じで、自信と遊び心がないと最高のパフォーマンスは発揮できません。最近は『うまくいかなくても失敗から学べばいい』という大胆さを孕んだ意識が高まっているように感じます。創業者のビル・バウワーマンもフィル・ナイトも、常に“正攻法ではない勝ち筋”を見つけようとする反骨精神を持っている人でした。そしてものづくりの根底にあるのは、アスリートを、スポーツを、より良く、楽しいものにしていく。『スポーツは楽しいものであるべきだ』という精神です」。この新たな企業文化こそが、ナイキが苦境から脱却し、再びイノベーションを生み出す源泉となっている。

次世代のプロダクト群が示す未来

 こうした企業文化と「アスリートファースト」への回帰が結実したのが、冒頭で触れた革新的なプロダクト群だ。その一つが「プロジェクト・アンプリファイ」。ランニングとウォーキング用の世界初のパワード(電動)フットウェアシステムとして開発され、2021年冬に初代プロトタイプが完成。その後、改良を重ね、昨年夏に最新版となる4代目のプロトタイプが完成した。現状、今回発表された中では最も商品化から遠いが、電動モーターを取り付けたスニーカーのヴィジュアルは、否応なしにワクワクさせられる視覚的な楽しさを覚える。

ナイキの電動ランニングシューズを履いたモデル

プロジェクト・アンプリファイ

Image by: NIKE

 開発責任者のマイケル・ドナヒュー氏は「アンプリファイはまだ発展途上で、商品化まではこの先何ヶ月、何年かかるのかはわかりません。自信の持てるプロダクトに至ったときが、正式なローンチ時期となります」とコメント。製品化に向けて、10キロ走り続けられるバッテリーの稼働時間を担保することを目標に掲げ、目下開発に取り組んでいるという。近年、ランニングシューズは軽量化やソールの改良など、どのメーカーも一辺倒なアップデートが続いている印象があるが、アンプリファイはアスリートにとってのストレスを軽減する「無駄を省く」開発ではなく、あえて「パワーを与える」プロダクトとして、電動自転車のように歩きや走りといった足の動きをサポートする。そこには、ナイキを他社と大きく差別化する、「アスリートファースト」による別視点のエッセンスが色濃く感じられる。

エア ミラノ ジャケットのキャンペーンムービー Video by NIKE

 「サーマフィット エア ミラノ ジャケット」は、ナイキならではの空気(Air)を初めてアパレルに取り入れたことで、同社が歩んできたイノベーションの軌跡を体現。近年、同社が注力するアウトドアライン「ACG」の強みであるデザイン性と機能性を両立しながら、ダウンや化学繊維などの断熱素材に頼らないアウターウェアの可能性を探求した。「1978年からフットウェアに使われてきた『ナイキ エア』が今回、初めてアパレルに応用されたように、我々が持つ力をフットウェアからアパレル、あらゆるアクセサリーへと応用していくことで、さらにアスリートのポテンシャルを高めていきたいと考えています」(フィル・マッカートニー氏)。エア ミラノとアンプリファイの例からは、同社が原点に立ち返りながら新しい形へと変容を遂げていることが伺える。

モットーは“本物であること”

 「アスリートのために」をモットーに製品開発を続けてきたナイキは、スポーツのみならず、ファッションシーンでも存在感を示してきた歴史がある。マッカートニー氏はファッション文脈での評価について「ナイキ及びジョーダン ブランドが世界的にクールなブランドになったのは、それらが『本物』だから」だと分析する。ナイキが考える「本物」とは、「常に新たなイノベーションを追求しながら、スポーツとアスリートにフォーカスし、本物のスポーツブランドであり続ける」こと。「トレンドを追いかけるのではなく、常に最先端を進んでいく。我々が重視するのはあくまで機能性ですが、どんなに革新的な機能を持っていても、見た目がかっこよくなければ、誰も着たいと思いません。機能性と美しさが両立して初めて、人々の心に響くプロダクトになります。そうしたナイキにとっての理念を追求した結果、ストリートでも魅力を高めてきたのだと考えます」。「本物であること」へのこだわりこそが、イノベーションや「原点回帰」の核となるブランド哲学だ。

「ナイキ マインド」を着用したアーリング・ハーランド選手のヴィジュアル

「ナイキ マインド」を着用したサッカーのアーリング・ハーランド選手のヴィジュアル

Image by: NIKE

 今回発表されたプロダクト群は、2026年に開催を控えるミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックやFIFAワールドカップ26を機に、世界に披露される。ビグネル氏は、直近の世界大会はもちろん、創業地での開催となるロサンゼルス2028夏季オリンピックへの期待を煽る。「2028年は自国開催となるので、さらに画期的なイノベーションや、より消費者に身近に感じてもらえるプロダクトも発表できる予定です。ぜひ楽しみにしていてください」。

 「身体さえあれば誰もがアスリートである(If you have a body, you are an athlete.)」。創業者 ビル・バウワーマンの言葉を胸に、トップアスリートだけではなく、体を動かす全ての人のために、ナイキの挑戦はこれからも続いていく。

ナイキ本社に設置された「アスリート*に仕える(SERVE ATHLETE*)」のモニュメント

ナイキ本社内のモニュメントには「アスリート*に仕える(SERVE ATHLETES*)」の文字が。米印は、ここでの「アスリート」が「身体さえあれば誰もがアスリートである」の言葉に基づいていることを意味する。

Image by: FASHIONSNAP

最終更新日:

張替美希

Miki Harigae

茨城県出身。得意の英語を生かし外大に進学するも、幼少期から抱いていたファッション雑誌への憧れから、ライターを志す。大学卒業後、2022年に株式会社レコオーランドに入社。主にスポーツとファッションの領域で記事執筆を担当する。趣味はアイドル鑑賞で、エビ中ファミリー(私立恵比寿中学のファンの総称)歴は10年。週末はライブに握手会に大忙し。

ADVERTISING

今回、オレゴン州の米国本社で発表された4つのイノベーション

Image by: NIKE

現在の人気記事

NEWS LETTERニュースレター

人気のお買いモノ記事

公式SNSアカウント