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ナイキの厚底論争に終止符?話題の新作シューズ「アルファフライ」は何がすごいのか<NY発表会レポート>

厚さ40mm以下「五輪では使用可」

 フットウェア イノベーション バイスプレジデントのトニー・ビグネル氏は、アルファフライを「2013年に始動したプロジェクトの集大成」と位置付けます。

 「いかにアスリートのエネルギーを体に戻すかということが開発のキーです。普通のフォームだとエネルギーが30〜40%ほど吸収されてしまいますが、ズーム Xではエネルギーの吸収を極力抑え、カーボンファイバープレートと組み合わせることで、まるでロッキングチェアのように自然と体を前に進めることができます。さらにズームエアと合わせることで90%に近いエネルギーリターンを実現し、アスリートの次の一歩を効率よく踏み出せるように設計しているのです」

トニー・ビグネル, ナイキインク フットウェア イノベーション ヴァイスプレジデント

 自身もエリートランナーで選手に近い立場から開発に当たっているキャリー・ディモフ氏は、ナイキのランニングシューズ開発になくてはならないキプチョゲ選手から今回も多くの助言を得たといいます。

 「彼は全てのプロトタイプをテストしており、アッパー素材やかかとのトラクション、デザインといった、全ての工程に関わっています。2時間を切った時のレースの感想を聞くと『後半の方が新鮮に感じた。最後の30分もそこまで疲れなかった』、また『レースの翌日も足が楽だった』と話していました。クッション性と足を保護するという点に効果を発揮しているシューズだと思います」と、機能性に自信を覗かせました。

キャリー・ディモフ, ナイキインク シニア フットウェア イノベーター

 アルファフライに関しては、世界陸連が設ける新規制でレースでの着用が可能かが議論の争点となり、日本を含め各国の報道が加熱。陸連が1月末に発表した内容では、「靴の厚さが40mm以内」「複数枚のカーボンファイバープレートの使用禁止」(いずれも1月31日以降適応)4ヶ月以上市販されているモデルのみ着用可」(4月30日以降適応)という新たな規定が加わりました。その5日後に行われたのが、ナイキの発表会です。

 「多少の混乱はありましたが、アルファフライを東京大会で目にすることができるということです。世界陸連が定める基準サイズ26.5cmで測定した時にソールの厚みは40mm以下で、新しい規格内にはまるものとなっています。アスリートのためにより良い走りをサポートしたいという思いで、もちろん世界陸連のルールを常に守ることを前提に開発を進めていますから、ルールの中で完璧を目指していくだけです」(ビグネル氏)

 一部報道では、陸連がさらに規制を強化するといった憶測もありましたが、今回の発表会を通してナイキ側は「五輪での使用は可能」という見解を示しています。

「プレート3枚」報道はなぜ?

 また、以前の報道によって「アルファフライにカーボンファイバープレートが3枚搭載されている」という情報が出回っていたことに質問が及ぶと、「特許を申請する際にたくさんのプロトタイプを作っています。今回発表したモデルには1枚しか使っていませんが、サンプルの中には実際に3枚以上使ったものや、違うパターンのバージョンも含まれていました。それが混乱を生んだのだと思います」と説明。

 日本では陸上界に留まらず、一般層をも巻き込み注目を浴びることになった厚底シューズですが、ディモフ氏はこの状況を開発段階では予想していなかったと話します。

 「アスリートにより良いシューズを提供しようという一心で開発に当たってきました。どんな報道があろうと開発者として取り組むことは同じで、リサーチを進めて仕事をするだけです」と、至って冷静に捉えていたようです。 

レジェンドが語る厚底騒動

 オリンピックで計9個のメダルを獲得し、陸上短距離界のレジェンドでもあるカール・ルイス氏はショー後にメディアに向けた取材で「人類にとって最良の靴を提供するナイキのような企業の努力を推奨するべきです。(一連の報道を受けて)私はマラソンランナーではなくカジュアルランナーですが、とても良いシューズだと思います。規制は選手の安全を守るためにあるべきです。未だに膝など体を痛める製品がある。こうした製品の安全性をもっと議論するべきであって、世界陸連はナイキのような企業のイノベーションを妨げるべきではない」と、今回の騒動について持論を展開しました。

 開発者や選手の口から多く語られたのは、シューズは「選手の実力以上のものを引き出すものものではない」ということ。選手の持っているエネルギーをできるだけシューズが吸収することなく100%に近い形で発揮できるよう、開発チームでは日々研究やデータ分析を行なっていますが、履く人の筋力や力量によって当然ながらパフォーマンスに違いが出てくるといいます。

 オリンピック開催まであと150日ほど。3月1日に開催されるマラソン男子日本代表選考レースの最終戦「MGCファイナルチャレンジ」では、ナイキに所属する大迫傑選手をはじめ、設楽悠太選手などの有力選手が新作のアルファフライを履いてレースに参加することが予想されています。その後も世界各都市での選考レースを経て、東京オリンピック大会終盤の8月8日朝(男子は翌日の9日)、札幌のスタート地点には何色のシューズが並び、どの選手がもっとも早くフィッシュテープを切ることになるのでしょうか。レース本戦まで目が離せません。

■ナイキの厚底シューズを巡る一連の流れ
2020年箱根駅伝往路、区間賞受賞者全員が"ナイキ史上最速シューズ"着用(2020年1月2日掲載)
"ナイキ史上最速"厚底シューズの着用を世界陸連が禁止?海外メディアが報道(2020年1月16日掲載)
ナイキの厚底シューズ論争に決着?世界陸連が禁止を見送りか(2020年1月29日掲載)
ナイキ史上最速ランニングシューズの新作「エア ズーム アルファフライ ネクスト%」が発表、五輪でも着用可(2020年2月6日掲載)

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