いま最も旬な美容師の現在地を写真からひも解く連載・第22回。今回からヘアスタイリストのよりプライベートな面へとフォーカスした内容にパワーアップします。主人公はLOAVEのトップディレクター・KOBUKIさん。インスタントカメラを片手に、KOBUKIさんが日常を自由に切り取り。大好きなファッションから趣味の散歩、人気美容師の“今”に迫ります。
#22 KOBUKI こぶき
インスタグラム
埼玉県秩父市出身。資生堂美容技術専門学校卒業後、新卒でLOAVE AOYAMAに入社。現在はトップディレクターとして、サロンワークを中心に活躍中。日常にとけ込むナチュラルでエッジの効いたヘアデザインを得意とし、多くの女性客から支持されている。
【店舗プロフィール】
LOAVE AOYAMA ローブ アオヤマ
トレンドスタイルを発信し続ける実力派美容室。高い技術力とセンスを持つヘアスタイリストが多く在籍し、メディア露出も多数。ヘアサロンであるLOAVE AOYAMAを起点に、NAIL・EYELASHサロンも展開し、トータルビューティを体現している。
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⎯⎯ いろいろなシーンを撮影してきていただきましたが、インスタントカメラでカメラを撮られていて面白いなと思いました。これを撮影した理由は?
これは自前のデジカメとフィルムカメラです。フィルム写真が好きで、よく写真は撮っていたのですが、ヘアスタイルの写真を撮るときにふと、iPhoneは多くの人が「いい!」と思える色味やバランスで写真が撮れるなと気付いたことがあって。しっかり撮影をしたいと思っていたから、iPhoneで撮るだけでは美容師として作品撮りのスキルが上がらないかもと思い、RICOHのGRを購入しました。作品撮りやInstagramの写真もこのカメラで撮影しているんですよ。
⎯⎯ カメラによって全然見え方が違ってきますよね。それをどう使いこなすかも今の時代の美容師さんには重要だと思います。作品撮りや撮影はアシスタント時代から取り組んでいたのですか?
そうですね。でもはじめは全然できなかったので、撮影をたくさんこなしている先輩に教えてもらったり、撮影に同行したりして学んでいきました。
⎯⎯ アシスタント時代に特にがんばったことはありますか?
当時は、モデルハントでモデルさんを捕まえないと撮影に同行できませんでした。ある日、同行する撮影の準備をしていた前日に「邪魔だから明日の撮影は来なくていい」と唐突に先輩に言われたことがありました。「どうしようかな…」と悩んだのですが、この時「自分が学びたいことを学べないのは嫌だな」と思い、来るなと言われたけれど、次の日荷物を持ってスタジオの前で待っていたんです。がんばって食らいついたというか、それが自分の中である意味大きな変化の瞬間でした。
⎯⎯ この「シャネル(CHANEL)」のバッグは、そういった“がんばり”を象徴するアイテムだとか。
下のブラウンのバッグは20歳のときに「美容師、がんばるぞ!」とお金をかき集め、思い切って買ったシャネルです。とても思い入れがあります。ホワイトのバッグは1年前に購入したシャネルの財布です。
スーツは自分っぽくない。スーツ姿が想像できなかったから美容師に
⎯⎯ そもそも、KOBUKIさんが美容師になろうと思ったきっかけを教えてください。
元々新体操をしていて、髪を結ったりメイクをするのが好きでした。大会の時のヘアアレンジなどをするうちに髪の毛をさわる仕事っていいなと思って。後はスーツを着る仕事は嫌だなと漠然と思っていて、高校生の時に初めて行った都内の美容師さんのかっこよさに憧れて、美容師になろうと決めました。
⎯⎯ たしかに、KOBUKIさんがスーツを着ているイメージは湧かないですね(笑)。今回、たくさんのコーディネートを撮ってきてくださいました。ファッションがお好きとのことですが、毎日のスタイルはどのように決めていますか?
その日の気分にもよりますが、スタイルがよく見える服を選んでいます。自分の肌に合う色をチョイスしたり、デニムが好きなのでデニムメインでコーディネートを考えたりすることが多いですね。あと、黒い服はあまり着ないかもしれないです。
⎯⎯ デニムは何本くらいお持ちなのでしょうか? 一番好きなデニムブランドは?
捨てちゃったりもしてるんですけど、今あるのは20本くらい。好きなのは好きでたくさん履いているし、履いていないものはあんまり履いてなかったりします。この写真の日は、デニムにギンガムチェックのトップスを合わせました。スタッフ写真を撮るついでだったので、ちょっとふざけていますね(笑)。ブランドだとやっぱり「リーバイス(Levi’s®)」が特に好きです。あとスタイルをよく見せてくれるのは、「シシクイ(THE SHISHIKUI)」かな。履くとみんなが褒めてくれるし、脚をきれいな形に見せてくれます。
⎯⎯ 黒はあまり着ないとおっしゃってましたが、このお写真は黒のトップスです。
これは友達のポップアップイベントに行った帰り道です。シースルー素材のブラックのトップスにデニムを合わせました。黒は強く見えすぎちゃう気がしてあまり選ばない色ではあるのですが、自分にとって「かっこよく決めたいときの色」でもある。この日は、かっこいい装いをあえて選びました。
⎯⎯ 毎日のトータルコーディネート、まずどこから決めますか?
やっぱり最初はその日着る服からですね。それに合わせて、リップの色を決めます。「このリップを使いたいから今日はそんなに目元にポイントを置かなくていいかな」と、リップを軸にしてそのほかをどうするか考えます。メイクを20分くらいで済ませたら、最後に髪型ですね。
自宅で支度中のKOBUKIさん。この日は、大きめのシュシュでおだんごに
⎯⎯ メイクって気分が上がりますよね。TPOに合わせて洋服を変えるように、メイクも変わりますか?
そうなんですよね。人と会うとき、特に女の子と遊ぶときや女子会のときはばっちりメイクします。朝の営業前にもスイッチを入れるためにしっかりメイクしていますね。最近は「リーカ(rihka)」のメイクアイテムが好きでよく使っています。デイリー使いしやすいので、お気に入りはリーカのものが多いかも。
⎯⎯ ヘアアレンジのノウハウは美容師として重要だと思います。今回、シュシュなどのお写真もありました。
営業中にお客さまの髪をアレンジしたり、もちろん自分の髪でやるのも好きです。最近は、ボリュームのあるシュシュで遊んでいる人がまた増えてきた感じですね。ダウンヘアでも、ふわふわに巻くスタイルよりもオイルでさらっとまとめるようなスタイルがトレンドだと思います。あとはターバンやヘアバンドも人気です。
11年LOAVEに在籍する理由は、「生き様の師匠」のような存在
⎯⎯ 美容師になろう!というところに話を戻しますが、LOAVEに入社したきっかけは?
専門学生の時にお客として来店したのをきっかけに、新卒からずっとLOAVEに在籍しています。今年でもう11年目になりますね。
⎯⎯ 別のサロンに移籍する人や独立する人も多い中、最初に入ったサロンに長く居続ける理由は何でしょうか?
一番大きい理由は、私がアシスタントの時に先輩ヘアスタイリストだった齋藤愛さんと濱香織さんの存在です。濱さんは今神奈川県でご自身の美容室を経営されていて、齋藤さんは今もLOAVEのアートディレクターとして在籍していらっしゃるのですが、このお2人が見せてくれた「女性としての美容師像」の影響がかなり大きくて。
お2人に育てられた経験を恩返しをしなければならないという思いでずっと働いています。また、好きなことを率先してさせてくれるお店なのでずっと続けられているというのもあると思います。
⎯⎯ KOBUKIさんが影響された「女性としての美容師像」について教えてください。
技術力があるのは大前提として、それに加えて女性美容師としての立ち居振る舞いや考え方など、20代前半でいろいろと迷っていた私が“知りたかった部分”を教えていただきました。お2人がロールモデルとなり、道筋を示してくれたと感じています。
「こういうときは気合いを入れておかないといけない」「反対にこういうところは抜いていいんだよ」と、そういった適格な指示に大きな影響を受けました。私にとって「生き様の師匠」のような存在ですね。
⎯⎯ このお写真も2人の女性が写っています。この方々は同僚ですか?
これは「カラオケ行きましょう!」と言われて朝の4時までカラオケしたときの写真です。写っているのは後輩のヘアスタイリストのmayuと板井成弥で、この日は朝までモー娘。や浜崎あゆみを歌っていました(笑)。
⎯⎯ こちらのお2人はKOBUKIさんにとってどんな存在?
何がかわいいとか、どんなものが流行っているかとか、どんな美容師になりたいなどと話し合う仲です。それに、苦しい時期を一緒に過ごしてきた仲間でもあります。2人は2~3個離れた後輩なのですが、私がアシスタントリーダーだった時にアシスタントだった間柄。一緒にお店のことで悩んだり、話し合ったり、お店の根幹を一緒に作ってきた戦友のような存在です。
⎯⎯ 苦楽を共にしたんですね。
私がアシスタント時代のお店はとにかおく客さまがいっぱいいたので、アシスタントの数が足りない状況で。現在は1階と3階と4階の3フロアですが、当時は1フロアしかなく、朝から晩まで予約がたくさん入っていました。そういった忙しい中でどういう回し方をしたほうがいいかと悩んだり、下の子たちの技術力をどうアップさせて育てていくかなどを一緒に模索していました。困難や問題があったら、その都度彼女たちとたくさん話し合いをして乗り越えてきました。
メモを取ることが「自分の教科書」に
⎯⎯ こちらのシザーケース、こだわりはありますか?
特にこだわりはないのですが、すぐにメモができるようにボールペンを1本必ず入れています。昔からメモを取る癖があるんです。お客さまとのカウンセリングの際もメモをとって、一語一句忘れないようにしています。
⎯⎯ メモを取るというのは今の時代、珍しいのでは?その習慣はいつから?
アシスタントだった時、携帯は持てないのでメモをとるしかないと思って。でもメモを取り続けていくと、それが「自分の教科書」になるんですよね。わからなかったときの教科書になるのは、とてもいいなと思います。
⎯⎯ サロンワークで一番大事にしていることは何でしょうか?
実はあまりお客さまと会話をしないタイプなんです。かなり集中して切っているので口数は少ないのですが、髪のことはしっかり伝えたいのでヘアの知識やトレンドについては常に学ぶようにしています。
⎯⎯ 情報収集はどのようにしていますか?
YouTubeや美容師さん主催のオンラインサロンなどを見て、最新の情報を得るようにしています。あとアイテムでいえば、ヘアメイクさんが紹介しているものや情報をチェックしています。
⎯⎯ カウンセリングについても教えてください。
お客さまのやりたい髪型を聞いた上で、今の髪型や顔の輪郭、お客さま自身のネガティブな部分をヒアリングし、それをカバーできるように提案していきます。大胆に変えるのが怖いというお客さまには、少しずつ変えていくようにしていますね。いきなり挑戦するとびっくりしちゃうこともあると思うので。
⎯⎯ 1日にどれくらいのお客さまを担当していますか?
土日の忙しい時は、10人程度のお客さまを担当しています。メニューにもよりますが、アシスタント2人と一緒に対応しています。平日は9時半にお店に来て、ゆっくりメイクをして11時にオープン。夜は20時半まで営業し、その後反省会をして22時には店を出ます。
「お店の前で撮った写真。店先でオリーブとラベンダーを育てています」(KOBUKI)
休日のルーティンは散歩とコーヒー
⎯⎯ サロンワーク以外のお写真もまだまだありますね。また少しプライベートについてお聞きしたいのですが、ファッションが好きなKOBUKIさんは、普段お買い物はどこでされることが多いですか?
最近はヴィンテージショップや古着屋さんが多いですね。セレクトショップだと、虎ノ門ヒルズの「SELECT by BAYCREW’S」は見やすいので好きです。ここからだと少し遠いのですが、エストネーション ロッポンギ ヒルズ(ESTNATION ROPPONGI HILLS)もお気に入りです。
「この日のコーデは、レース素材の片耳ピアスをポイントに。結構大きめですが、気に入っています」(KOBUKI)
⎯⎯ 最近購入したものを教えてください。
「ミュウミュウ(MIU MIU)」のキーケースです。ずっとキーケースが欲しくて、ふらっとミュウミュウに入った時にいいなと思って購入しました。手首にもつけられるので、趣味の散歩の時に便利だと思って買ったのですが、実はまだ使っていないんです(笑)タイミングを見ておろしたいと思っています。
⎯⎯ KOBUKIさんの趣味は散歩だとお伺いしました。
散歩、好きですね! 歩くとすっきりするんです。休みの日の朝は、散歩してコーヒーを飲んで帰ってくるというのがルーティンです。
いつもの散歩コースの公園。木漏れ日が気持ちいい
⎯⎯ 休日はどのように過ごしていますか?
朝に散歩してコーヒーを飲んで、その後は家事をして、夕方にお買い物に行ったりします。お昼に約束があれば友達や後輩とランチに行きますが、絶対変わらないのはやっぱり朝の散歩。散歩に行ってコーヒーを飲んで帰ってくるのが1時間くらいなのですが、欠かせない習慣です。
散歩後のモーニングをカフェのCyōdoで。「運動した後に食べるご飯は格別です」(KOBUKI)
⎯⎯ こちらの写真は?
これは毎日使っている「サンタ・マリア・ノヴェッラ(Santa Maria Novella)」(左)のフレグランスです。右奥のものはもう日本では販売していないのですが、気に入っているポプリです。香水は深みのあるウッド系が好みです。元々バニラの香りなど甘い香りは苦手だったのですが、サンタマリアのバニラは甘すぎず、とてもいい香りです。
⎯⎯ 写真の奥に花瓶とお花が見えます。花もお好きなのですか?
好きですね。自宅にはいつも花があるようにしたくて、2週間に1度くらいの頻度で買い足しています。花瓶はいろいろ持っているのですが、ベーシックに使うのは上の写真に写っている透明なタイプのもの。白や黄色、ピンクの花を入れることが多いです。
⎯⎯ 花や散歩など、自然のものがお好きなんですね。
元々外で何かを見つけるのが好きで、かわいいお花には自然と目がいってしまうかもしれません。外を歩いていて「これなんか変だな」などと変わったものを見つけるのも好きでした。
⎯⎯ こちらの写真はスヌーピーでしょうか?
はい、スヌーピーが好きで家にいっぱいあるんですけど、その一部を撮ってきました。ワンちゃんが好きなのと、見ているととにかく癒やされるんです。キャラクターだけではなく、スヌーピーの本も好きです。言葉は少し難しいのですが、優しくて、心に響くことがたくさん載っていていつも癒されています。
10年後も「挑戦し続けている」
⎯⎯ 最後に、美容師のキャリアをスタートさせた場所であり、11年続けているLOAVEについて。KOBUKIさんにとってどういう存在?
家族みたいな、当たり前の存在です。仲間も増えて、いまは新しい子たちと一緒に仕事をするのが楽しいです。毎年新卒を迎えるので新しい発見がありますし、ディレクターになったのでより下の子たちの成長を見るのが楽しみになりました。
⎯⎯ 10年後のご自身について、どうなっていると思いますか?
いつも新しいことには挑戦していきたいと思っているので、10年後の私自身も挑戦を続けていると思います。いまはディレクターとなりみんなをまとめる立場にもなったので、スタッフ全員がいい気持ちで働ける”働きやすい環境”をつくっていきたいと考えています。LOAVEは女の子が多い美容室でもあるので、だからこそ「女性が働きやすい環境」を率先してつくっていきたい。先輩方から受け取った「生き様」を継承しながら、仲間や後輩とともに、よりよいお店づくりができたらなと思います。
(写真:KOBUKI、編集:福崎明子、藤原野乃華)
編集者、ライター
出版社2社を経て独立。書籍の企画・編集、ブックライティング、記事等のインタビューなど活動中。ペンギンが好き。「now&then」の聞き手、文を担当する。
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