ヌルベット 荒木浩二代表
Image by: FASHIONSNAP.COM

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【インタビュー】モデル事務所ならぬ"デザイナー事務所"、ファッションクリエイターのエージェンシー「ヌルベット」とは?

ヌルベット 荒木浩二代表
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 日本初のファッションクリエイターのエージェンシー ヌルベット(nullbet)が4月から本格的に始動する。モデル事務所ならぬデザイナー、クリエイターの事務所としてマネジメントを行う会社で、立ち上げたのは元古舘プロジェクト所属の荒木浩二氏。ファッション業界と関わりがなかった同氏はなぜヌルベットを立ち上げたのか?

ヌルベット:2018年11月に設立。主な業務はファッションに関わるクリエーターたちのマネジメントで、ブランドの経営面や会計、PRマーケティングなどをサポートする。立ち上げ時は「ケイスケヨシダ(KEISUKEYOSHIDA)」の吉田圭佑、「パーミニット(PERMINUTE)」の半澤慶樹、「リョウタムラカミ(RYOTAMURAKAMI)」の村上亮太が所属。「ミキオサカベ(MIKIO SAKABE)」の坂部三樹郎の一部の仕事の管理も手掛ける。4月から本格的に事業を展開していく。

ファッション業界に感じた違和感

ー荒木さんはアパレル出身ではないんですね。

 大手通信会社やタレントのプロダクションに勤め、IT企業のデジタルマーケティングやテレビの番組制作などに携わってきたので、ファッション業界とは関わりがなく、知識もありませんでした。ただ所属していた古舘プロジェクトで、ファッションとテックを結びつけたシェアスペースを始めることになり、2017年にファッションFAB施設「アンドメイド(andMade)」を北参道にオープンしたのがファッションと関わるきっかけになりました。そこで坂部さんや吉田君、村上君、半澤君と出会ったのですが、当初は彼らがどんな服を作っているのか知らなくて(笑)。周りから「良いメンバーが揃ってますね」と言われ興味を持つようになりました。

ーデザイナーたちとの出会いからファッション業界に興味を持つようになったんですね。

 「Amazon Fashion Week TOKYO」(以下、東コレ)でケイスケヨシダなどのランウェイショーを見て、本当に凄いものを作ってるんだなと衝撃を受けて。その後彼らの話を聞く機会が増え、そこで若手デザイナーの成長を妨げてしまっている現状のシステムの問題点に気づいたんです。

ー具体的に問題点とは?

 まずはアトリエの確保の難しさです。ミシンやアイロン台が揃っていて、不自由なく服を作れるスペースは都内だとあまりないですから。あとはデザイナー1人が抱えるクリエイション以外の仕事量の多さ。若手のデザイナーは基本的に個人事業主で、生産から発注、支払い、顧客対応まで全てこなさなければならない。もちろん全てを完璧にこなすデザイナーもいるとは思いますが、クリエイションに集中し辛い状況に変わりはないんじゃないかと。

ー課題解決のために起業を?

 東コレで発表していて、ある程度業界内での認知度がある彼らたちでも、先に話した課題に直面している。そもそも世間一般における東コレの認知度もまだまだ低い。これは彼らがクリエイションを続ける上で良い環境とは言えないんと思うんです。そういった問題点をこれまで培ってきたマネジメントのノウハウを活かして解決できるのではと考え、ヌルベットを立ち上げました。

「ショーは広告」ヌルベットが東コレ資金を負担するワケ

ーデザイナーのマネジメントとは具体的に?

 デザイナーがブランドを運営する際のマネーフローをはじめPR戦略、中長期の計画立案、デザイナー個人単位での仕事の管理です。クリエイション以外でブランド運営に関する部分をマネジメントします。例えばデザイナーに衣装の制作依頼があった時に、デザイナーの代わりに価格交渉をしたりします。

ーデザインに関しては口を出さないんですか?

 基本的にデザインに関して管理や指示はしません。ですが資金面をサポートしている以上、売れないものを作り続けることは見過ごすわけにいかないですね。そういった場合はデザイン自体ではなく、売る場所や発表時期、見せ方について再考することでしっかりターゲットに届けられるように戦略を練り直します。

ーサイトには「ファッションに関わるクリエイターをマネジメント」と書かれていますが、デザイナー以外も所属できるんですか?

 デザイナーの他にはパタンナーやニッターを想定しています。優れた技術を持ったフリーランスの方は結構いて、そういう方たちと企業やブランドを繋げる役割も担えたらと。他がやっていないビジネスモデルを作りたいと思ってるので、既にあるモデルやスタイリストのマネジメントは考えていないんです。

ー会社の収入源は?

 所属デザイナーたちのマネジメント料です。こういうとどうしても「搾取しているんじゃないか」と思われるかもしれませんが、例えば報酬の30%を会社がもらうと言うと、「取り分が少ないな」とデザイナーは感じるでしょう。でもこれが1億円だったら7,000万円手元に残るわけで、この規模感まで達すればそこまで厳しい話ではないと思います。1案件でここまでの報酬を得るのはなかなか難しいかもしれないですが、デザイナーとブランドの価値を高めることで実現できると考えています。

ー実現するためにどんな取り組みをしているんですか?

 まずはアーティストの衣装や企業の制服、イベントのユニフォームなど、服のデザインを必要としている企業や団体を中心に、デザイナーの資質とブランドを売り込むことですね。各デザイナー宛の依頼を会社で一括管理するので、依頼された当人が難しくても、所属デザイナーの中から誰か相性がいい人を参画させることができます。ブランドの成長に必要な仕事を経験してもらい、クリエイションに活かしてもらえたらと考えています。

ー仕事を受ける受けないはデザイナーが判断できるんですか?

 依頼についてどうしても意見が合わなければ無理に受けることはありません。所属デザイナーたちとは対等な契約関係でいたいと考えているので、将来的に会社のシステムやサポートが必要ないと思えばデザイナー側からいつでも契約解除を申し出ることができる体制をとっています。

ー具体的に進めている案件はありますか?

 全国展開しているホテルがイメージを刷新する目的で制服をオリジナルで作りたいという話があったので、吉田君を紹介して進行しています。他には県のイベント関連のデザインを半澤君と進めたり。あとは3月18日から開催される東コレに向けてショーの準備をしている最中です。ケイスケヨシダ、パーミニット、リョウタムラカミの今回のショーの費用はヌルベットが負担します。

ーショー費用を負担してくれるとなると、東コレに出たいデザイナーが集まってきそうですね。

 もちろんボランティアではないので、誰でも受け入れるということはありません。僕としてはショーは広告だと考えていて、ショー費用も何らかの形で必ず回収する。彼らの顧客リストも管理するので、見てもらうべき人にちゃんと見てもらえるように招待客の調整も行っています。

ー所属デザイナーはどのように決めるんですか?

 実力があって、本当に応援したいと思える人と一緒にやりたいですね。まだ何の実績もないデザイナーでも、将来のビジョンをしっかり持っているのであれば前向きに検討します。

ー初年度の目標は?

 まずは所属デザイナーたちとブランド、会社自体の認知拡大。同時に彼らをサポートする体制を整えることが目標です。実際に様々なプロジェクトでデザイナーを探している企業にアプローチし、発信していく必要があると考えています。

ー他業界とデザイナーのタッチポイントになる。

 そうですね。単純にファッションに関わるクリエイターをサポートするだけではなく、ファッションビジネスの可能性を発信できたらと思っています。デザイナーたちは本当に面白いアイデアを沢山持っているので、それを如何にビジネスの形にできるかを考えるのが僕たちの仕事。簡単なことではないですが、ファッション業界をもっと面白くしていきたいと思っています。

(聞き手:平原麻菜実)

■ヌルベット:公式サイト

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