
「乾杯、おっぱい、チェリー☆パイ!」そんなフレーズで約17年前にバラエティ番組を中心に活躍した水着姿の女性お笑いコンビ「チェリー☆パイ」。同コンビの元メンバー 大湯みほは、祖母から引き継いだぬか床をきっかけに、「ぬか漬けマイスター」として新たな道を歩んでいる。そんな彼女が語るのは、肌調子を変えたという“ぬか美容”、遠く離れた人とつながるぬかを介したコミュニケーション、さらにはよく一緒に河原に出かけたというぬかとの“同棲”エピソードまで。芸人としての軽快さとぬか漬けへの深い愛情が交錯する、思わず覗いてみたくなる意外で奥深いぬか漬けの世界。
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◾️大湯みほ(おおゆ・みほ) 1981年宮城県仙台生まれ。高校卒業後上京し、アイドルとしてCMなどに出演。その後、ホリプロに入りお笑いコンビ「チェリー☆パイ」、「アップルパイン」などで活動。祖母のぬか床を引き継いだことをきっかけに、ぬか漬けタレントとして始動。講演やワークショップをする傍ら、2014年には著書「カラダいきいき! におわないぬか漬けレシピ」(SPACE SHOWER BOOKs)を出版。日本ぬか漬け協会認定のぬか漬けマイスター資格を持ち、ぬか漬けに試した食材の数は300を超える。
目次
アイドルから芸人に。芸人から“ぬか漬けマイスターに
⎯⎯簡単に今までのキャリアを教えてください
元々は20代で上京して、当時はアイドル活動をしていたのですが、泣かず飛ばずで。その後はお笑い芸人として活動しながら、ライフワークとしてぬか漬けをしていました。たまたま機会があってぬか漬けの本を出させていただくことになって、その縁から今はぬか漬けマイスターとして講演やワークショップをしています。
⎯⎯ぬか漬けを始めたきっかけは?
上京して寂しいなって思った時に、何か足りないと思ったのがぬか漬けだったんです。実家が宮城なのですが、幼少期から祖母のぬか漬けを毎日食べていて、当時は嫌になる程でした。一人暮らしをする中でぬか漬けが恋しくなったのは、田舎を思い出す懐かしさがあったから。私の原点というか、そういう大切なものなんだと思います。
一人暮らしを始めて数年後に祖母が亡くなり、残してくれていたぬか床を引き継ぐことになって…。ぬか床は少量であっても、ぬかを足し手をかけることで菌が増え、母数を増やすことができるんです。祖母の形見のように感じ「絶やすわけにはいかない」と責任感が湧きそれが続ける原動力となっています。
ぬかと私の同棲生活 あたたかい日には河原で“ひなたぼっこ

⎯⎯そこからぬか漬けに没頭していきます。
そこからはぬかとずっと同棲。40代頃までぬかとの2人暮らしでしたね。かき混ぜたりするだけではなく、話しかけたり、歌ったりしました。晴れたあたたかい日には一緒にひなたぼっこしに河原に出かけることもしばしばありました。近所の人は私のことを不思議な人だと思っていたみたいです(笑)。
⎯⎯一緒にひなたぼっこ? ぬか床に良い効果があるんですか?
日光浴させるとぬかのふかふか具合がだいぶ違いますね。ぬかは食べ物である前に生き物なので呼吸が必要なんです。ぬかをかき混ぜて酸素を入れてあげることを、“呼吸”と私は言うんですが、人間と同じように良い環境で呼吸をさせてあげるのが大切なんです。
とはいえ、直射日光を当てすぎるのは良くないので、温度は20°Cから23°Cぐらい、湿度は高すぎない風通しの良いところでタッパーの蓋を開けて呼吸させてあげてました。

ワークショップでは割烹着を着用するという大湯さん
⎯⎯温度や空気だけじゃなくて、手を入れる人の状態も、ぬか床に影響するんですか?
はい。自分自身の調子がいい時はぬか床のコンディションも良くなるというか。鼻歌しながらかき混ぜたりする時ってぬか自体もすごく反応してくれる気がしますし、美味しくなるんですよ。
⎯⎯自分の調子というのは体調とか?
体調と精神状態両方ですね。やっぱり手の常在菌がぬか床に入るので。加えて、精神状態がぬかへの向き合い方に現れるというのも大きいと思います。例えば、余裕がない時はかき混ぜる回数が減ったり、管理が杜撰になってしまうとか。
⎯⎯他にぬかの味に関わる要素はありますか?
漬ける野菜でも大きく変わりますね。ちょっとぬかを舐めればその人がどんな野菜を漬けているのか何となく分かります。例えば、ぬかが苦ければきゅうりを頻繁につけているんじゃないかと。そういったところから次はこういう食材を漬けるといいんじゃないかというのも分かりますね。

あとは、尖った味の時にはアミノ酸がたくさん含まれているきゃべつの芯などを入れると甘みがぬかに広がっていくんです。何を漬けるか次第でぬか床が様変わりするのが楽しいところですね。
そして漬け方ですね。縦につけるのか、横につけるのか。それでも変わります。ぬか床の大きさによりますが、大根などは縦につけたほうが美味しくなる。やっぱり自然界には逆らわない方がいいんだと思います。
遠く離れている人に「ぬか」をプレゼント つながりを感じられる“ぬかコミュニケーション”
⎯⎯ここまで聞いていると、ぬか床はかなり繊細な存在ですね。
発酵と腐敗は紙一重なのでちょっとした加減だったり、空気だったり、居場所だったりでどちらに行くかが変わるんです。そういう部分が面白いし、人間と似てるなと思うんです。
そう考えると、ぬか床に語りかけてしまうのも自然なことなのかもしれません。仕事でうまくいかなかった日に、ぬかに語りかけると「そのままでいいんだよ」って包み込んでくれているような気がするんです。そして呼吸をぬかと合わせていると、「今のままの自分でいいんだ。許されているな」と感じられるんです。
朝、ぬかをかき混ぜると、「いってらっしゃい」と言われているような気持ち。「おはよう」と声をかけられたような気持ち。家を出たあとも、仕込んだ野菜が夜にはどうなっているだろうと、ふと思い出しては楽しみになる気持ちが残ります。ぬかには沢山助けられてきました。

特製のぬか漬け 発酵した香りが食欲をそそる
⎯⎯お婆さまから引き継いだということも大きいのでしょうか?
そうですね。やっぱり祖母の形見という背景から彼女の存在を感じられますし、それが受け止めてくれるような感覚につながっているのだと思います。
普段は遠く離れていたり、会えない人にぬか床を贈ったり、もらったりすることでその人の存在を感じることができる。そういうつながりを象徴する力がぬかにはあります。実際に結婚のお祝いでぬか床を分ける「床分け」という風習もあります。私も友人にお祝いでプレゼントしました。
ほかにも、母はぬか漬けをしていなかったのですが、祖母のぬか床を私から“受け継ぐ”するような形で贈るようになりました。
⎯⎯ぬかを介したコミュニケーションがあるんですね。
そういった“ぬかコミュニケーション”もありますし、“ぬかフレ”(※ぬか漬け友達の意)というのもあるんですよ。芸能界でもぬか漬け好きな人が密かにいたりして。楽屋で私がぬか床を持っていくと、「何漬けているの?」「実は私もやっているんだよね」って会話が生まれたり。
実はロバートの馬場さんとはぬかを交換したことがある“ぬかフレ”です。オアシズの大久保さんはぬか漬けに興味があるようで、色々な話をしましたね。アンタッチャブルのザキヤマ(山崎 弘也)さんには、「ぬか漬け始めるのはどうですか?」と聞くと「俺は絶対にやらない」と言われましたけど(笑)。
「No Smell!なんだこれは、しまってくれ」海外の反応
⎯⎯今までどんな食材を漬けてきましたか?
基本的な野菜はもちろんのこと、書籍を出すにあたってポッキーやグミ、ビスケットなども漬けてきました。毎日ぬか床で実験をしている時期があり、その時はスーパーに入って目に入ったものは片っ端からチャレンジしてました。アップルパイやチェリーパイは漬けていないですが(笑)。

⎯⎯国内外の方にもぬか漬けを広めているとお聞きしました。
そうですね。意外と外国の人もトライしてくれました。各国によって反応が違って面白いですよ。ヨーロッパ出身の方だと同じ発酵でもチーズの臭みとはまたちょっと違うみたいで…。まず出した時点で「No Smell!」と。「臭い。何だこれは、しまってくれよ」という感じの反応をされたことがあります(笑)。逆にアジア系の方だと「これはきっとお酒(日本酒)と合うね」と好意的な反応を示す方もいましたね。
別の話にはなりますが、ぬかとスイーツを組み合わせるのもいいですよ。例えばチョコレートとぬかとか。甘いものにしょっぱいのが調和するんです。
⎯⎯塩キャラメル理論ですね。
そうですね(笑)。最初はみんな臭いから「うっ」って言うのですが、食べると「えっ、美味しい」みたいな。普通にチョコを溶かしてその上に大根とか人参とか入れれば完成です。バレンタインも近いので是非“ぬかチョコ”を贈ってみてください。

ぬか漬けマイスターのスキンケア ぬかパックのすすめ
⎯⎯ぬかは肌にも良いとも聞きますね。
そうですね。ぬかをかき混ぜた後に手を洗うとワントーン明るくなっているような気がして。それに気がついてから肌にぬかを塗り始めました。今はぬかとハチミツと無糖ヨーグルトを3:2:1の割合で作った自家製のぬかパックを週に1度つけています。肌に塗るとピリッとしたちょっと刺激的な感覚がありますが、肌調子が良くなっている気がするんです※。
昔ぬかパックを朝につけて洗顔し、電車に乗ったら隣の女子高生が「え、この電車すごく臭い…」と呟いていて。そこからは朝につけるのを止めました(笑)。家族からもにおいが不評なので、夜みんなが寝静まった頃にこっそりとつけています。
※あくまでも個人の感想です。乳幼児やアレルギーをお持ちの方、敏感肌の方はお控え下さい。

⎯⎯近年は発酵コスメも人気です。使ったことはありますか?
「無印良品」の「発酵導入美容液」(50mL 1990円)は、使ったりしますね。あとは、ぬか風呂に入ったことあります。
⎯⎯ぬか風呂?
酵素風呂の一種で、いりぬかがもみのような感じで敷き詰められています。大体40度くらいで、そこに浸かります。体験してみると、なんだか自分も発酵されてぬかになった感じ。いつかぬかになりたいと考えていたので夢が叶いました(笑)。
⎯⎯おめでとうございます(笑)。普段はどんなスキンケアをしていますか?
化粧水は「カピートロ(Capitolo)」を、クレンジングと乳液は無印良品のものを使っています。天然由来成分で必要なケアを叶えていく、引き算の姿勢ですね。

「私は私の食べたもので出来ている。だからぬか漬けを食べる」
⎯⎯ぬか漬けを食べることと美容はつながあると思いますか?
美容において、悪いものをちゃんと外に出してデトックスするということが大切ですが、そのためには、体に何を入れるかが重要だと考えています。何故なら、それが未来の自分の身体を作りますから。だから私はぬか漬けを食べるんです。ぬか漬けは栄養価も高く、腸内を整えサイクルをサポートしてくれている効果が期待できるように思います。
⎯⎯ぬか漬けは腸内環境には良さそうですが、塩分が多そうに見えます。
食事をしている中でサラダで栄養を取ろうとすると、ドレッシングやソースなどつい塩分が多くなりがちですよね。ぬか漬けは実は塩分が多くはないので、そこを抑えることができます。口に入れた時にしょっぱさを感じるかもしれませんが、実は発酵による酸味によるキツさが混ざっているんです。酵素や乳酸菌、ビタミン、ミネラルを塩分少なく身体に取り入れられるというのはすごいことだと思うんです。
⎯⎯実際に個人の体験として変化を感じることはありましたか?
元々乾燥肌であることに加え、20代の頃はテレビの仕事で厚塗りのメイクが多く肌への負担も大きかったです。また、多忙な時期は睡眠時間が少なくなったり、食生活もお弁当で油の多い物ばかりを食べるなど不規則な生活が続いたこともあって肌の状態もあまり良くありませんでした。メイクさんにも「隠すのが結構大変ですね」と言われたり。
テレビのお仕事から離れて、1日3食ぬか漬けを食べる生活をして1年程たった頃、気がつくと肌が綺麗になっていたんです。他にも、上京してから悩まされていた花粉症の症状も自然と落ち着いていったんです。これにはびっくりしました。科学的根拠を出せるわけでもないですし、規則正しい生活をするようになったことなど、さまざまな要因も考えられますが。また、ぬかアレルギーの方もいるので一概に良いとは言えませんが、少なくとも私の体質には合っていたと思っています。

⎯⎯ぬか漬け界隈の人たちは肌調子が良さそうに見えますか?
ぬか漬けに限らずですが、食べ物を意識している人は肌ツヤが違うように見えます。内側から来ている美というのは何となく分かるんです。ナチュラルさがある雰囲気の綺麗な人いう感じです。
例えば農家さんってすごくお肌が綺麗なんです。毎日外に出て日やけもあるのに。「何をしているんですか?」って聞くと「何もしていない」って。でもぬか漬けは朝から仕込んでいる人が多かったりするので、やっぱり身体に取り入れるものが大切なんだと思います。
「いつかは陶芸のような文化体験に」 若い世代にもぬか漬けを
⎯⎯下北沢「ボーナス トラック(BONUS TRACK)」内に発酵食品のお店が出店するなど、近年はぬか漬けが若い人たちにも身近になっている印象です。
むしろ最近の若い人たちこそぬか漬けにハマるんじゃないかなって思うんですよ。ほら、白湯を毎朝飲んだりとか、プラントベースの食事を食べたりとか。何というか身体に取り入れるものへの意識が高い気がするんです。
だからこそ、「肌調子やメイクのりも良くなるよ」って言いたいです。そういう風に若い人たちの間でも“ぬか美容”やぬか漬けを流行らせたいという野望があります。

⎯⎯ワークショップでは若い人たちも多い?
現状はまだ多くありません。ですが、時間をかけて育てていく感覚は、陶芸のような文化体験に近い部分もあります。いつかぬか漬けが、陶芸のようにそうした「つくる楽しさ」まで含めた体験として広がっていけばいいなと思っています。世界で1つのオリジナルのぬか床を作れるという意味ではすごく面白い体験ですし。
⎯⎯ぬか漬けは「毎日かき混ぜる必要がある」ことから、始める、そして続けるハードルが高い印象です。
毎日かき混ぜるのが理想なのは事実ですが、もし、手入れが甘くてぬかの状態が一時的に落ちたとしても、立て直す方法はありますし、旅行などで家を空ける場合も、1ヶ月程度であれば休ませることができます。ほかにも、1週間に1回の手入れで済む市販のぬか床や、ラップに包んで翌日には食べられるチューブタイプなど、始め方の選択肢が増えています。最初から理想形を目指す必要はなく、無理のない形で関わり始めればいい。続けるうちに、自然と手をかけたくなったら、そのときに深めていけば十分だと思います。
何より、自分で作ったものって愛着湧くし、いつもより美味しいんですよね。だから一度挑戦してみてほしいです。
⎯⎯あえてぬか漬けの魅力を一言でいうなら?
「食べて美味しい。体の中から美しくなれる」ですかね。普通こんな食べ物ないですよ!興味が出てきた方、ぜひ小さな一歩から踏み出してみてください。

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