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モードの風向きを変える「ラフ・シモンズ」のロンドン・ショー ビッグシルエットからミニマルへ

ラフ・シモンズ 2023年春夏コレクション

ラフ・シモンズ 2023年春夏コレクション

IMAGE by: RAF SIMONS

ラフ・シモンズ 2023年春夏コレクション

ラフ・シモンズ 2023年春夏コレクション

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モードの風向きを変える「ラフ・シモンズ」のロンドン・ショー ビッグシルエットからミニマルへ

ラフ・シモンズ 2023年春夏コレクション

ラフ・シモンズ 2023年春夏コレクション

IMAGE by: RAF SIMONS

 長らくパリ・ファッションウィークを主戦場としてきた「ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)」が、ロンドンで2023年春夏コレクションを発表する。今年7月に発表されたそのアナウンスは、誰しもに驚きを与えながらも、どこか腑に落ちる思いをもたらした。デヴィット・ボウイ、ジョイ・ディヴィジョン、ニューオーダー、ピーター・サヴィル、そしてセカンド・サマー・オブ・ラブ……過去のコレクションを辿れば、ラフのアイデンティティにUKカルチャーが刻み込まれているのは一目瞭然だ。ロンドンでのコレクション発表は、きっと少年ラフの夢だったに違いない。来年初頭に55歳を迎えるラフは、童心をそのままに、その夢を叶えにやっとロンドンへとやってきた。しかし、なぜ今のタイミングなのだろうか?

女王の崩御を受けて

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 最近のイギリスといえば、エリザベス女王の崩御、頼りない新政権、記録的なポンド安、インフレーション、エネルギー危機と、まさに阿鼻叫喚の地獄絵図だ。国として、近年で最低のコンディションだといっていい。抱える問題の字面だけを見ると、決していい風の吹く街ではない。しかし、ラフ本人のインタビューを含んだイブニングスタンダード誌の記事によると、ラフが昨年のアートフェアで久しぶりにロンドンを訪れた際に、街から溢れるエナジーに触れたことがロンドン・ショーの開催を即決するに繋がったそうだ。国や政治が落ち込めば落ち込むほど、大衆は活力を取り戻す。歴史を振り返れば確かに、イギリスのカルチャーはそうやって形作られてきた。

 そもそもは2023年春夏シーズンのロンドン・ファッションウィーク中に開催予定だったショーだが、女王陛下の崩御を受けて日程を約1ヶ月延期。奇しくもイギリス最大の現代アートフェア「フリーズ・ロンドン(London Frieze)」の開催時期と重なったことで、ラフを語るに欠かせないアートのコンテクストがより強固されたように思う。ショーへの招待状として送られてきたのは、ラフと同郷のアーティスト、フィリップ・ヴァンデンベルグ(Philippe Vandenberg)による作品が刷られたポスター。2009年に逝去したアーティストの晩年(2005-2008年)に描かれた無題の作品で、真紅のパステルで"STATION"と連打されている。

ショーの招待状として送られてきた、フィリップ・ヴァンデンベルグの作品が刷られたポスター

ショーの招待状として送られてきた、フィリップ・ヴァンデンベルグの作品が刷られたポスター

Imaged by Ko Ueoka

大型クラブのドリンクカウンターがランウェイに

 ランウェイの会場となったのは、6000人のキャパシティを誇るロンドンで一番大きなクラブ「プリントワークス(Printworks)」。サウスロンドンのロザーハイズにある元印刷工場を改装し2017年にオープンしたばかりだが、地域開発を理由に今冬でクローズしてしまう大型ヴェニューだ。過去には「マルベリー(Mulberry)」や「ア コールド ウォール(A-COLD-WALL*)」がランウェイを行ってきた場所で、すでに2023年春夏のショーがほぼ終了した今、今回のラフ・シモンズのショーが「Print works」での最後のファッションイベントとなることだろう。

プリントワークスの入り口。エントリーには行列ができた。

プリントワークスの入り口。エントリーには行列ができた。

Imaged by Ko Ueoka

 報道関係者や業界人のみならず、学生やアーティストが多く招待され、黒を基調としたファッションで武装する若者がエントリーに列をなす様は、本当にクラブイベントに並んでいるかのようだ。荷物検査後、インダストリアルな通路を抜けてメインフロアへ足を踏み入れると、細長く伸びたバーカウンターではすでにドリンクの提供が始まっており、その最奥ではDJのクララ3000(Clara3000)が爆音でテクノトラックをかけ、観客を否応なく踊らせている。クララ3000は2022年秋冬のコレクション映像でもサウンドトラックを手がけた、ラフのお気に入りDJだ。

DJのClara3000。その背後のスクリーンには、ラフが衣装を手がけたニューヨーク・シティ・バレエの演目「SOLO」の映像が流れていた。

DJのClara3000。その背後のスクリーンには、ラフが衣装を手がけたニューヨーク・シティ・バレエの演目「SOLO」の映像が流れていた。

Imaged by Ko Ueoka

 クララ3000の背後に佇む縦長のスクリーンの中では、ラフの手がけた衣装に身を包んだバレエダンサーが華麗に舞っている。ラフは今秋のニューヨーク・シティ・バレエ(New York City Ballet)の演目「SOLO」の衣装を手がけており、これもまたラフの愛する"ダンス"だ。ちなみに、9月3日にプリントワークスで行われた、フィリップグラス(Philip Glass)とジョージ・フレデリック・ハンデル(George Frideric Handel)によるオペラショー「グラス・ハンデル(Glass Handel)」でも、ラフはコスチューム制作を担当している。

Video by Ko Ueoka

 案の定ショーのスタートは遅れ、予定時刻から45分が過ぎたころ、なにやらバーテンダーたちが手元を片付け始めた。そして一斉にテーブルクロスを引き抜くと、ドリンクカウンターは漆黒のランウェイへと一変。ラフ・シモンズらしい、民主主義的なオールスタンディングのショーの始まりだ。音のトラックが一転すると、蒼白にメイクアップされたスキニーなモデルたちが続々と繰り出し、狭いランウェイ上で肩を擦らせながら闊歩する。

賑わうバーカウンターはランウェイへと変貌を遂げる。

賑わうバーカウンターはランウェイへと変貌を遂げる。

Imaged by Ko Ueoka

セクシーなラフが戻ってきた

 ファーストルックは、近年強化しているウィメンズルックからスタート。パステルグリーンのシャツモチーフのロンパースに、身体の線をなぞるアームスリーブとタイツを合わせている。その後もウィメンズルックを連打し、メンズモデルが登場したのは6体目。近年のラフ・シモンズにおいて、最もミニマルなコレクションといってよいだろう。グラフィックは控えめで、フーディーはおろか、パワーショルダーやオーバーサイズといった、得意のビッグシルエットも出てこない。

ファーストルックと、6体目のメンズルック

 細部を見れば、骨の手バングル(21年秋冬)や切りっぱなしの裾(20年春夏)、メッシュのトップス(22年春夏)、短く刈り込んだフェイクファー(22年秋冬)、ギラついた光沢を放つパテントフェイクレザー(22年秋冬)など、近年のコレクションからのモチーフの継続性が見られる。ナローベルトでのさりげないウエストマークは、今季からの新しい提案か。ブランド定番のスリーブレスのジャケットやロングジレ、タートルネックのニットウェア、ニーレングスブーツも健在で、縦長のシルエットを強調している。

 ビックシルエットからの脱却を図るラフは、まるでDJのように自身の過去作を編集し、随所に要素を散りばめながらも、ボディコンシャスなアウトラインに着目した新しいシルエットを作り出していく。キャリア初期のミニマリズムを彷彿とさせる、セクシーなラフが戻ってきたのだ。1995年のデビュー以降、30年近くにわたってモードを先導してきたラフの照準は90年代ミニマルのムードに当たっている。

フィリップ・ヴァンデンベルグの作品をプリントに

 ショーの後半では、インビテーションでも半分予告されていた、フィリップ・ヴァンデンベルグのテキスト作品をフィーチャーしたコラボレーションウェアが連発。Tシャツからトップス、パンツ、バッグにまで、「LETS DRINK SEA AND DANCE」や「STATION」といった手書き文字が躍る。2009年に自死を遂げたフィリップだが、一筋の希望を携えた挑発的な言葉とその筆致は、ラフがコレクションに宿した意志を鮮明に象っているようだ。コラボレーションのブランドタグは、かつてスターリング・ルビー(Sterling Ruby)やロバート・メイプルソープ(Robert Mapplethorpe)とコラボレーションした際と同様の特別なデザインとなるらしい。

Video by Ko Ueoka

 ルックは総勢64体。フィナーレが終わると、再度クララ3000はターンテーブルを回し始め、バーテンダーは持ち場へと戻りジントニックをサーブし始める。ランウェイは終われど、身体を揺らすテクノと共にパーティーは続いていく。これこそ、ラフがロンドンへと送った賛辞だった。

RAF SIMONS 2023年春夏

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RAF SIMONS 2023年春夏コレクション

2023 SPRING SUMMER

エディター / ライター / プロデューサー

上岡 巧

KO UEOKA

1993年生まれ、東京出身。早稲田大学社会科学部卒業。メンズファッション誌『Them magazine』編集部を経て、2022年に独立。ロンドン生活の後、現在はパリに拠点を移し、フリーランスとして活動する。

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