1985年に竹下通りに第1号店がオープンして以来、圧倒的な品揃えと編集力で幅広い世代から人気を集めるユーズドセレクトショップ「ラグタグ(RAGTAG)」。ラグタグが設立された当初は、状態があまり良くないものが多く、古着=ニッチなイメージがありました。そこから洗濯機の機能性が上がったことなどを受けて、出回る古着の質が改善。取引される商品の品質が向上したことで二次流通市場の物量は増えていき、現在ラグタグでの1日の商品買取は約2000点、取り扱い商品は常時30〜40万点にものぼります。その膨大な数の商品は東京都国立市にある「国立倉庫」で一括管理されています。
今年で38周年を迎えるラグタグが築き上げてきた信頼と実績の裏ではどのような業務が行われているのでしょうか?ラグタグの中枢を知るべく、国立倉庫に潜入!
目次
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ラグタグの"要"国立倉庫の内部を大公開
全国20店舗で買取された商品、そして郵送の買取希望の商品は一度すべて国立倉庫へ届きます。商品管理だけではなく、各店舗への商品出荷やオンラインストアの「ささげ業務※」を行っており、国立倉庫がラグタグの"中枢を担っている"といっても過言ではありません。そんな国立倉庫の業務内容をさっそく見ていきましょう。
※「撮影」「採寸」「原稿」のそれぞれの頭文字が由来。ネット通販において消費者の購買意思決定に直結する商品情報制作業務。
■業務内容
・真贋チェック : 専門スタッフによる商品の最終チェック
・採寸&情報入力 : オンラインストア掲載に向けて商品情報入力
・撮影 : 1点ごとに物撮り撮影を行い、オンラインストアへ掲載
・倉庫管理 : シーズンやトレンド、アイテムごとに分けて商品を管理
・発送 : 購入商品の発送作業
真贋チェック
国立倉庫には1日約1500〜2000点、キャンペーンなどを行うと3000点もの商品が届きます。その中に偽物が混ざっていないかチェックを行うことが国立倉庫の重要な業務のひとつ。偽物といえばバックや財布のイメージがあると思いますが、今はTシャツなどでも作られており、特にコラボものは出回るのが本当に早いんだとか。そして偽物のレベルは年々上がってきており、見分けがつかないこともあるそうです。そういった偽物を店舗に回さないようにするため、ラグタグでは店頭でのチェックに加えて、経験を詰んだ専門スタッフが国立倉庫で最終チェックを行います。
ラグタグでは"服として生まれたものは最後まで服として扱う"ことを心情としているため、買取時に値段が付けられずに引き取った洋服も、寄付をしたり学生にリメイクしてもらうなど、処分を一切することなく様々な場面に役立てています。ただ、偽物だけは二次流通での売買を防ぐため、処分を行います。過去には「憎むべきニセモノ展」を店頭で開催するなど、消費者にも偽物に対しての知識を身につけてもらえるよう取り組んでいます。
採寸&情報入力
ラグタグで取り扱っている商品は、ほぼすべてオンラインに掲載されます。オンラインでは試着ができないため、1点1点スタッフの手により採寸を行い、色や素材なども細かく入力していきます。膨大な作業量を簡略化するために、撮影した商品写真から自動採寸してくれるシステムを協力会社と絶賛開発中なんだとか。本格的に導入されれば作業効率が飛躍的に上がるので、現場スタッフたちの期待も高まっています。
物撮り
ライティングやハンガー位置もすべてセッティングされている撮影ブースで、カテゴリごとに分けて撮影を行っていきます。撮影したデータはすぐにパソコンで確認し、映りなどを調整しオンラインストアにアップ。古着なので汚れやほつれもきちんと撮影し、商品情報を丁寧に伝えるよう心がけています。
倉庫管理
最近の物流倉庫では、棚の空いている場所に商品を保管することで倉庫全体の保管効率を向上させる「フリロケーション」が主流ですが、国立倉庫は実店舗への発送業務も担っているので、季節ものをきちんと分ける必要があります。その為、シーズンごとのアイテム管理がとても大切。各店舗の特徴や客層、そしてトレンドを踏まえながら投入商品を仕分けていくのも国立倉庫での重要な業務となっています。
発送
各店舗への発送だけではなく、オンラインショップで注文が入ったものも国立倉庫から発送しています。近年は海外の利用者も増えてきているそうで、特にアジア圏の顧客には日本のデザイナーズブランドが好きな人が多く、コロナで旅行が難しい今、ラグタグで探して購入してる人も多いようです。「コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)」、「ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)」のように縫製がしっかりしている商品は、10年前のアイテムでも問題なく着ることができるため二次流通市場でも不動の人気で、値崩れもしないんだとか。
国立倉庫にある40万点から目利きが選んだ逸品は?
「ラグタグ」を展開するティンパンアレイの親会社であるワールドが、2019年から開催しているポップアップ型イベント「246st.MARKET」。物販やトークイベントを通して、長く寄り添うプロダクトや環境に配慮された商品をものづくりのプロセスと共に伝えています。
2022年11月上旬に開催される「246st.MARKET」では、デザイナーやスタイリストたちが国立倉庫でピックアップした"時代を超えた良いもの"を販売。参加するクリエイター5人のセレクト現場に密着し、40万点の中から見つけたオススメの逸品を紹介してもらいました!
Image by: FASHIONSNAP
横澤琴葉:「ディーゼル」のデニムジャケット&「マークジェイコブス」のワンピース
Image by: FASHIONSNAP
デザイナーが「Y/プロジェクト(Y/PROJECT)」のグレン・マーティンス(Glenn Martens)に変わった流れもあり、普段から「ディーゼル(DIESEL)」の古着をよくチェックしているので、自分も好きという視点から選んだ1着です。ディーゼルはデニムパンツのイメージが強いけれど、カットソーやアウターもシルエットやグラフィックが可愛くてすごく注目しています。今回選んだデニムジャケットも、レザーコードを使った表現が凝っていてすごく惹かれました。
2000年初頭の「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」のアイテムって「ヘブン バイ マーク ジェイコブス(Heaven by Marc Jacobs)」にも繋がる要素も多くすごく好きなんですが、そのイメージとは真逆のこのミニマルさが気になってしまって(笑)。ここまでシンプルなのにファスナーの仕様だけでブランドらしさと可愛さがちゃんとある。それって出来るようで本当に出来ないし、こういうアイテムって中々ないんですよね。私も欲しい1着です。
横澤琴葉 / kotohayokozawaデザイナー
ファッション専攻の高校を卒業後エスモード東京校に通う。その後アパレル企業にてデザイナーとして勤務しつつ、ここのがっこうに通う。退職後、再びエスモードAMIに通い2015年よりkotohayokozawaをスタート。メインコレクションの他にtodo,somebody,sinkなど様々なラインを展開している。
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大野陽平:「ステファンシュナイダー」のコート
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自分が着たいという目線で選んだ1着。「ステファン・シュナイダー(Stephan Schneider)」は学生時代にタイムリーに通ってきたブランドですごく懐かしさを感じます。当時は中々買えなかったので憧れのブランドでもありました。メンズですがウィメンズらしさも感じる色味や素材感があり、両性備わっているアイテムは今改めて良いなと思い選びました。
大野陽平(YOHEI OHNOデザイナー)
文化服装学院で洋服作りの基礎を学び コンテストの賞で英ノッティンガム芸術大学に留学。帰国後、2015 年に「ヨウヘイ オオノ(YOHEI OHNO)」を立ち上げる。 2015秋冬にファーストコレクションを発表。
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長畑宏明:「ケイスリーヘイフォード」のコート
Image by: FASHIONSNAP
二次流通市場の中でも、ラグタグにはコアな服好きが集まっている印象があります。その象徴となるような1着を選びたくて「ケイスリーヘイフォード(Casely-Hayford)」のコートをピックアップしました。ここまでデザイン性の強いアイテムって、今セレクトショップでも中々選べないくらいハードル高いと思うんですよね。特にケイスリーって、シンプルでモダンなデザインのものが主流。その中で、このアイテムを実際に買った人がいて、ラグタグに流れてきているというストーリーを想像すると、どんどんこのアイテムに惹かれていきますよね。クラブに行く時とかにこういう服着て欲しいなと思います。
長畑宏明(STUDY Magazine 編集長)
1987年、大阪府生まれ。編集者。2014年にインディペンデントファッションマガジン『STUDY』創刊。これまでに本誌8号、別冊4号をリリース。2年ぶりとなる最新号「STUDY9'LOST & FOUND'」が現在発売中。
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東佳苗:「コム デ ギャルソン」のワンピース
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「コムデギャルソンコムデギャルソン(Comme des Garçons Comme des Garçons)」の2018年春夏コレクションを見た時から、この転写シリーズがとても気になっていました。私自身が柄物を好んで着ていること、またギャルソンのアイテムをあまり持っていないので、もし「246st.MARKET」で売れなかったら私が買います、という気持ちで選びました(笑)。 私服に似ているアイテムを直感的にセレクトしていったのですが、「シュリンプス(Shrimps)」や「ジュンヤワタナベ(JUNYA WATANABE)」、「モスキーノ(MOSCHINO)」など、気が付いたら柄物やピンクが多くなってました(笑) 。自分自身、服を買うときは色と柄と素材で一目惚れした服をブランド問わずに買うことが多いので、国立倉庫で掘り出し物を見つけることができてとても楽しかったです! セレクトしたアイテムを並べてみることで、"ルルムウらしさ"を再認識できた気がします。
東佳苗(rurumu:デザイナー)
文化服装学院ニットデザイン科卒業。 rurumu:/縷縷夢兎(るるむう)デザイナー。 様々なアーティストやアイドルの衣装デザイン、アートディレクション、空間演出、スタイリスト、キャスティング、MV監督など多岐に渡り活動を行う。
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吉田圭佑:「ハイダー アッカーマン」のアウター
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ハイダー アッカーマン(HAIDER ACKERMANN)は元々好きなブランドの1つ。2018年秋冬コレクションのファーストルックにもなっているこのジャケットは、ルック画像を見たときからとても気になっていました。今回袖の裏側や生地感を実際に見れたことで、よりブランドのディテールへの拘りを感じることができました。普段ブランド古着をリサーチとしても購入しているので、国立倉庫の物量と質の良さに触れることができて最高に楽しかったです!
吉田圭佑 / KEISUKEYOSHIDAデザイナー
1991年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。ここのがっこうとESMOD JAPONの「AMI」でファッションデザインを学び、2015年秋冬シーズンに「ケイスケヨシダ(KEISUKEYOSHIDA)」を立ち上げ。同シーズンで「東京ニューエイジ」の合同ショーに参加し、ランウェイ形式でコレクションを発表した。日向坂46や櫻坂46といったアイドルの衣装デザインなども担当している。
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*紹介したアイテムは11月上旬に開催される「246st.MARKET」で販売予定。詳細は後日発表。
(編集 : 城光寺美那)
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