
5月16日にtbccが開催したカーフェスに集まった車と若者たち
Image by: FASHIONSNAP

5月16日にtbccが開催したカーフェスに集まった車と若者たち
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車とそれを取り巻くカルチャーに、地殻変動が起きている。日本では2000年代初頭から「若者の車離れ」が叫ばれ、都心に住む若い世代にとっては、車を所有することは長らく優先度の低い選択肢だった。だがここにきて、“ヤングタイマー”や“ネオクラシックカー”と呼ばれる中古車に20~30代も注目するようになっている。雑誌「ポパイ(POPEYE)」が2026年5月号で、2年ぶりに車特集を組んだことも象徴的だ。加えて、国内外でF1人気が再燃、訪日客が“JDM”と呼ばれる日本仕様の改造車目当てに大黒パーキングに集まる現象など、車をめぐる話題が久々にカルチャーの前線に浮上している。令和のカーカルチャーを連載形式で取材した。
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“自己表現としての車”に若者が注目
国土交通白書によれば、30歳未満の単身世帯の車保有率は1999年の55.3%から2009年には46.5%へと低下。統計手法の変更によりその後の推移は単純比較できないが、日本自動車工業会の調査でも、「若年層はお金をかけてまで車を所有する意識が低い」「若年層の車への関心は低下している」といった文言がこの10年ほど続いている。
一方で、そのように誰もが持つものではなくなったからこそ、持つ人にとっては車は自己表現の意味合いがより強まっている。「走り自体を楽しむ車好きは昔から一定数いるが、ファッションやライフスタイルの延長として車を求める若い世代の存在をここ数年で感じるようになった」と話すのは、中古車買い取りの「旧車王」を運営する、カレント自動車の清水篤朗 買取ユニット サブユニットリーダー。「中古車の売り手は50〜60代が中心だが、20代からの買い取り依頼も徐々に増えている」。
次なるヒットは「00年代初頭の日本車」






tbccが公開しているスバル「フォレスター」と購入者の男性のヴィジュアル
Image by: tbcc
そうした若い世代を引き付けているのが、中古車の個人売買のマッチングを手掛けているtokyo basic car club(以下、tbcc)だ。1994年生まれの南部翔也CEOがマーケティング企業や広告代理店を経て2021年に創業し、売り上げはこの2年で5倍と急成長している。「2年前は東京在住のクリエイターや美容師などが購入者の中心だったが、今はその熱量が全国に広がった。納車のために、スタッフは全国を飛び回っている」と南部CEO。購入者は20代前半から40歳までが主だという。
tbccが扱うのは、“ヤングタイマー”と呼ばれる1980〜2000年代初頭の中古車。“ネオクラシックカー”と呼ぶ人もいる。“ヤングタイマー”はヴィンテージカーを指す“オールドタイマー”に比べれば故障リスクが低く、安全性能や環境基準のために画一化が進む新車と比較すると、デザイン上の遊びがある。中古車価格も値上がりが進んでいるが、新車よりは気軽に購入できる。
tbcc立ち上げ当初は、フォルクスワーゲンの「ゴルフ2」やボルボの「240」「940」、日産の「グロリア」「セドリック」など、1990年代前半を中心とした角張ったシルエットの車が注目を集めた。ただ、人気が出たことで「100万〜200万円に値上がりしており、より手の届きやすい1990年代後半から2000年代初頭の日本車にも関心が広がっている」。例えば、スバルの「フォレスター」や「レガシィ」、トヨタの「カルディナ」など。「それらは100万円以下でも良い個体があるし、フォレスターは『エル・エル・ビーン(L.L.Bean)』とのコラボモデルがあったりして、内装にも今の車にはない遊び心がある」。
tbccのYouTubeチャンネルの「フォレスター」動画
「ミニマリストはもう気分じゃない」

南部翔也/tokyo basic car club CEO
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話を聞いていると、まるで古着をディグるような感覚で、まだあまり魅力に気づかれていない中古車を掘り出している。「僕らのまわりのカルチャーにとって、車は一番大きなアウター」。南部CEOがよく口にするこの言葉が端的にそれを言い表している。「おしゃれをしているのに、車がレンタカーだったらダサい。コロナ禍を1つのきっかけに、若い人の価値観や人生観が変わってきたと思う。モノを持たないミニマリストが流行った時代もあったが、人生の豊かさは経済合理性だけでは計れない。体験価値として車にも光が当たっているのだと思う」。
多くの中古車販売サイトが味気ない車体写真を掲載しているのに対し、tbccはおしゃれに作り込んだヴィジュアルをSNSやYouTubeで発信している点が強みだ。そうしたマーケティング面と同時に、「中古車販売の透明化」にも注力している。大手損保会社出身者や自動車整備のプロを社員や業務委託で迎え入れ、扱う車は全て点検して故障リスクなども伝えたうえで販売している。「中古車業界は、数年前には大手企業の保険金不正請求も問題になったし、情報格差で買い手や売り手に損をさせるような業者も存在する。若い人が安心して車を買える環境を整えたい」。
tbccは、2027年初頭に大阪にも拠点を開設予定。その後も福岡などにも拠点を拡大し、全国に“ヤングタイマー”の熱をさらに広げていくことを目指す。同時に車好きたちのコミュニティ形成にも注力中だ。5月16日には、神奈川・大磯で“ヤングタイマー”250台超を集めたオーナー同士の交流の場「ROMANTIC CARS」を開催。感度の高い若者が集まるコミュニティは、他業界の企業からも注目を集めている。「tbccが車の価値を再解釈して若い人に伝えることで、スクラップになっていたかもしれない車が新しいオーナーと新しい生活を送るようになっているのはとても嬉しいこと。日本の若い世代の多くが、当たり前のように車を楽しめる世の中にしていきたい」と南部CEO。
【SNAP企画】自慢の車、見せてください!

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5月16日にtbccが大磯で開催したカーフェス「ROMANTIC CARS」で、“ヤングタイマー”を中心とした車とオーナーのスナップを実施。お気に入りポイントや購入経緯を聞いた。
車と古着シャツの色をコーディネート



22歳、江東区在住の社会人3年目。人生初の愛車は昨年9月に購入したボルボの「940」。「映画の『ドライブ・マイ・カー』を見て、北欧の車に興味を持った」。車体と登録費用など諸々込みで初期費用は約230万円。駐車場料金月3万円など維持費も安くないが、「車を買ってよりアクティブになった。これでスノボにも何度も行ったし、スケボーやテントも常に積んでいる。この車に興味を持ったおじさんをヒッチハイクで乗せて話がはずむなど、車がなければできなかった経験をたくさんしている(笑)」
「現行車にはないロマンがある」




鹿児島で育ち、就職を機に神奈川にやって来た22歳。日産「グロリア」のバンは、約230万円で2024年秋に購入。「上京して、都会は車がなくても生きていけると聞いていたけど、購入したらやっぱり行動範囲が広がった」。自動車関係の仕事をしており、新車も購入しやすい環境にあるというが、「見た目でこの車に決めた。燃費とかを気にするなら現行車がいいんだろうけど、この車にはロマンがある」
人気の「フォレスター」×「エル・エル・ビーン」




名古屋在住の24歳が1年前に約150万円で購入したのは、スバル「フォレスター」の人気の「エル・エル・ビーン」エディション。18歳で初めて購入した車もスバル「インプレッサ」のスポーツワゴンタイプと、「あの時代のスバルがもともと好き。フォレスターのエル・エル・ビーンエディションを探していて、相場よりちょっと高いなと思ったんだけど、走行距離が2万5000キロだったし、いいなと思って」購入。当日着ていたTシャツももちろん「エル・エル・ビーン」。
ステッカーで自分だけの車にカスタム




長野出身、東京在住の27歳。フィアット「パンダ」は8年前、19歳のときに約100万円で購入。「小さいころに読んでいた車雑誌の影響で、パンダが欲しかった。パンダの中でも色が気に入ってこれに決めた」。これまで行った場所の思い出のステッカーなどを、運転席や助手席、トランクなどに貼ってカスタム。気づけば「ステューシー」のシャツもなんとなく車の色と合っている。
“ヤングタイマー”好き、ただし「燃費は悪い」



石川出身、横浜在住の38歳、職業はIT関係のデザイン職。3年前に購入したランドローバーの「ディスカバリー」は、なんとメルカリで100万円で購入。「不安もあったけど、実際に前のオーナーさんに会って、信頼できるなと思った」のが購入の決め手。自分で買った初めての車もボルボ「V70」と、“ヤングタイマー”好き。「昔見た当時最新の車が、今見てもかっこいいと感じる。ただし、燃費は悪い」。この日は午前中は湘南のマルシェに行って、お気に入りの作家のスカーフを購入してから人生初のカーフェスに参加。
自転車を積んでどこへでも




東京・杉並区在住の32歳。フォルクスワーゲン「ゴルフ2」は24歳の誕生日に約130万円で購入し、8年間乗っている。自転車ショップ「ブルーラグ」に勤めており、「スーリー(Thule)」のキャリーに自転車を積んでどこへでも移動。「この車を買ってすぐ、長野・白馬で開催されたOMMというランと自転車のレースに遠出したのが一番の思い出」。駐車場料金は月4万円。「安くはないけど、この子のためなら!」
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